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第12話 甘えとの決別

悠が去っていったリビングで、ただ一人、静かに楓は暗闇の中で考えていた。


(自分がたまたま合格した立ち位置で、頑張りたかった人がいる……)

 

蛇口を捻り、冷え切った体を温めるようにぬるめのシャワーを浴びなおす。

悠の言葉は楓の心に響き渡る、何度も何度も反芻(はんすう)し、どうしたらいいかをひたすらに考えた。


 本当に、そうだ。


(蒼汰が協力してくれる、淳史さんが優しく教えてくれる、と甘えていたのかも)

 

 後先顧みず飛び出してきて、たまたま受けたオーディションで合格し、その日のうちに住む所もあてがわれたのは――それは単純に運が良かったからに過ぎない。家を出る、ということはそれなりに覚悟をして出てきたはずなのに、現状は全て甘え切ったままだ。何も、前に進んだわけではない。

 

 (私の位置に、いたかった人がいる――……流れに身を任せて、なんとかなる、って思ってたけど、そうじゃなくて)


 涙をぬぐい、シャワーの蛇口を締め、鏡に映った自分の顔を見つめる。泣きはらした顔はずいぶんと酷い顔になっている。

 

 (そう、確かに――……まだ、甘えてた。そうだわ、きちんとしなきゃ。じゃなきゃ、何のために私は出てきたの? 自由ってそういうことじゃない。あの家にいても、いなくても――ただ私のいる場所が違うだけ。結局は受け身で、何にも本質が変わってないじゃない)

 

ぐっと拳を握る。


 求めた自由、とはなにか。

 強く握りすぎたせいで、痛みがじんわりと手のひらで広がった。


 (諦めないで、逃げないで、自分でやりたいことを、きちんと自分で考えてやらなきゃ。それに見合うように、相応に、認められるように、きちんと頑張らなきゃいけないのに。そのためには――)

 

 そして、気合をいれるため両手を頬で叩く。

 

 (変わろう、そうでなきゃ、きっと――……私は、お父様たちを説得なんて絶対にできない)


 ジンジンと赤くなり痛む頬は、高揚しているようにもみえ今の楓を鼓舞する。


 鮮やかで美しい朝日が大地を照らし、部屋に届く。

 楓は静かに窓を開け、澄み切った空気をひとつ、吸い込んだ。

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