第一話
俺の名は、黒崎遥斗。
高校生活を心機一転、今時は珍しいのかもしれない一人暮らしを悠々自適に過ごさせてもらっている。そんな悠々自適な高校生活を送っているが、しかし、最近、同じクラスの星羽めぐるという女性が、俺のなんの変わり映えのしない日々に変化をもたらした。
学校が終わり、自分の部屋でのんびりした後、晩御飯の準備に取り掛かろうとした瞬間、聞きなれない声が聞こえ、訪問者に気づかれないようにドアスコープを除くと、おかずが入っているタッパーを持った星羽がそこに立っていた。
(星羽めぐる。彼女とはなんの接点もないはずなんだが、なんでタッパー持ってウチに来たんだ? 見るからになんかのお裾分けぽいけど、本当になんでだ?)
そんなことを考えながらドアを開けると、一言「……お裾分け」と言って、タッパーを渡され、俺の返事を聞く前に部屋に戻ってった。
第一印象としては、いつも一人でいるなってくらいの同じクラスにいる一人の同級生程度なのにウチにお裾分けか。俺以外にお隣さんは居ないし、持ってくるならウチの可能性はなくはないだろうけど、なんで持ってきてくれたんだ?
(と、まあそんな謎しかない星羽について自問自答するよりかは顔が広い日向に聞けばわかるだろ)
そう思い、唯一スマホの電話帳に載ってる異性の日向に電話をかけると、ワンコールも終わらないうちに電話に出て、いつもの陽気な声が聞こえてくる。
「こんな時間にあんたから電話なんて珍しいね。なんかあった?」
「あるっていうか、まあ。ちょっと聞きたいことがあってな」
「遥斗が電話でわざわざそれを聞くってことはmよっぽどのことがあったってわけだ。聞くから話してみなよ」
俺は一息ついて、星羽が突然お裾分けを持ってきたことを日向に話した。話しているうちに、俺自身も改めてその奇妙さに気づかされた。
「……なるほど。あんたの言いたいことはわかった。でも、晩御飯のお裾分けにきました、で終わると思ってないんでしょ? それに、めぐるもなんか理由があってそういうことするタイプにだからね」
「そうなのか? 作りすぎたからただの善意で持ってきたってわけじゃない?」
日向は意味深な笑みを浮かべた。
「うーん、どうかな。でもさ、あの子って普段は一人で居て、近寄りがたいイメージもあるけど、あの子は遥斗が思ってるような子じゃないと思うから。それにめぐる以上に面倒見の良い子はいないからね」
「そうなのか?」
「うん。あ、そういえば、噂程度の話だからそれが事実かどうかはわかんないけど、彼女、中学の頃、誰かにお裾分けしてるところをみたって、もしかしたら、そういうことが好きなのかもね」
「それって、単に料理が好きなだけとか?」
「かもね。でもさ、わざわざお裾分けするってことは、何かしら理由があるんじゃない?あんたに興味があるとか」
「俺に? いや、そんなわけないだろ。接点もないのに」
「それが分からないんだよね。でも、そんなにめぐるのことが気になるなら本人に直接聞いてみたら?」
日向の言葉に俺は少し考え込んだ。確かに、彼女の行動には何か意図があるかもしれない。だからこそ、もう一度彼女と話をしてみようと決めた。
「わかった。とにかく、ありがとう日向。もう少し考えてみるよ」
「どういたしまして。頑張ってね、遥斗」
電話を切った後、俺は再び星羽の行動について考え始めた。彼女の意図が何であれ、次に会う時に直接聞いてみるしかない。