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sideルイス2

僕の呪いは婚約破棄。

なんだそれ。笑える。


僕は一週間後の婚約式の時まで、ずっと呪いについて考えていた。


皆、青い顔して呪いだ呪いだと言うけれど。


僕の呪いの話は国民のほとんどが知っている話らしい。


何故なら、公にしておかないと婚約破棄された娘に傷がつくから。そして王子の人格にも問題があるように思われてしまうから。


何かしらの憶測で悪役令嬢のようにしたてられ婚約破棄にいたったのだとされたら、その令嬢の人生に泥をつけてしまうことになる。


呪いだと公言されていれば皆が婚約破棄は予定調和とみなしてくれる。王子のそんな行動も呪いのせいだと納得してくれる。


他にも負荷がかかるだろうから婚約破棄の示談金はたんまり用意するし、他の利益もつける。だから誰かうちの王子の婚約者になってくれませんか?というのが今回のお茶会だったらしい。


なんだそれ。もう一回笑っとこう。


つらすぎる。


僕がリリベルに婚約破棄をつきつけるなんて、考えもしないし考えられないけれども。


リリベルにとっては不利益な婚約だったんだ、と思うと辛かった。


婚約式まで一週間っていうのも、王家のなんとか婚約をっていうのが透けて見えてやるせない。



婚約式の前日、僕は父上と母上に連れられて国宝の間に初めて足を踏み入れた。


今日はリリベルに贈る婚約の品を王家の国宝の間から選ぶのだと言う。


なんだかキラキラしい物ばかりで厳かに飾られてる品々をキョロキョロと見ていく。


リリベルに似合う可愛くて素敵な物は無いかな。


「ルイス、ちゃんと聞いていて?」

国宝の間で母や父や宝物管理長がいろんな説明をしていたが、僕はただリリベルのことばかり考えていた。


「聞いています」

上の空で答えながら、ふと視線が横の棚で止まった。


僕の瞳の色の宝石がついたイヤリング。


あぁ、このイヤリングをリリベルがつけたらどんなに素敵だろうか。


「これ、これにします!」

「ルイス?!」

父上と母上は呆れたように僕を見る。


「ルイスよ、管理長の説明を聞いていたか?中央の宝物の方が」

「これがいいです!」

父上の言葉を途中で遮り断言する。


僕だって上の空だけど話は聞いていた。


お薦めは中央の魔道具たち。


呪われた王子にはこちらの品がお薦めです、と。


婚約者から破棄を告げられなくするダイヤのネックレス。


心変わりを悟られないルビーのブローチ。


逃亡心を無くすサファイアのブレスレット。


なんじゃ、それ。

そんな呪いの品みたいのがお薦めだなんて呆れしかない。


僕は呪われた王子としてじゃなく、リリベルの婚約者としてリリベルに贈りたいものを選ぶのだ。


「王子、そちらはあまりお薦めできませんが」


「どうして?」


「こちらは、心漏れのイヤリングです」


「どういう機能なんだ?」

父上が管理長に説明を求める。


「こちらの金のネックレスをつけた対象者の心の声がこのイヤリングから漏れ聞こえます」


「ほぉ」


「最も恐ろしいのは、このイヤリングが外されるとOFFの魔言を唱えるか再び装着されない限り半径1キロ内の周囲にも聴こえてしまうということです」


「それは、恐ろしいな」


父上と母上は揃って別のを選ぶように薦めてきたが、僕の心は動かなかった。


「ルイス、お前はそんなに婚約者の心が知りたいのか。人の心というのは見えない方が良いこともたくさんあるんだぞ。逆に知りすぎて嫌いになる方に、王冠をかけても良い」


「はは、父上何を軽々しく、王冠をかけるなどとおっしゃるのですか。何か勘違いをしているようですが、こちらのリリベルの黄金の瞳の色のネックレスを僕の胸に。こちらの僕の瞳の色のイヤリングをリリベルの耳元に。うわーっ、想像だけでも可愛すぎる!」


「正気なの?ルイス、あなた聖人ではないのよ。リリベルに心の声を聞かれても構わないと言うの?あなたの心は常に人に聞かれても良いことしか話してないのかしら?」


「母上。確かに僕は聖人ではありませんが。リリベルに対して後ろめたいことを考えるなど、想像できませんよ。あー、みれば見るほどリリベルに相応しいのはこの品だなー」


「おい、管理長よ。この心漏れのイヤリングは魅了でもかけてあるのか?ルイスが異常に気に入り過ぎてるんだが」

「そんな機能はついてない筈なんですが」

「もう僕はこれって決めましたから」

「ルイスー、後で大好きなプリンをあげるから他のにしましょうねー」

「もう、これっていったら、これっ。これしか欲しくないっ」

結局駄々を捏ねる形で、僕はイヤリングを勝ち取った。


「本当に知らんからな」

「アホな子過ぎて悲しいわ」

「せめて機能を最小に設定し直してみせます」

「頼んだぞ」

「あなたが頼りですよ」


上機嫌な僕と疲労を滲ませた大人三人が出来上ったのだったが、翌日の婚約式で僕は無事その品をリリベルに贈ることができた。


婚約式にやって来たリリベルは全身白のコーディネートで、精霊の様に清く美しかった。


一緒に家族も来ていたが、父親の侯爵も銀髪に薄青い瞳でリリベルと同じ色味は無かった。



















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