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発芽
ある夏の日
梅雨も明けて間もない頃
田舎の総合病院でひとりの男の子が生まれた。
父も母も、
医師も看護師も、
見守る人々にとって
喜ばしいはずの一場面だが
この時は違った。
生まれたその直後に開かれたその目は、
その幼子の黒目は『漆黒』で塗りつぶされていた。
どよんと
濁り
微動だにしない
目は 光さえも吸い込んでしまうような
魔力を持っていた。
と後に言っていた
だが
誰かが
ゴクッ
と唾を飲み込んだ
音が聞こえた
その瞬間
私を一つの意識を得た。