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亜人の国の首都(1)

 キサラディから北西に進むこと数十キロ。


 地方を(また)いでやってきた、リノス地方の中心地であるカンナディアは、クリミナ(亜人国)の首都であり最高戦力を保有する街。


 現在一等級(伝説級)が二人在籍する唯一のギルドでもあるが、キサラディにも一昔前にはいたらしい。


 南の砂漠に行ったきり帰ってこなかったそうだが。



 この地方の周囲の未開拓地(ダンジョン)は、ラフィル川の奥を除けば全て浄化されている。


 故にここで力を付けた冒険者達は、東のルイース地方、南のサウリマ地方、西のウェル地方と、各地へ派遣されるそうだ。


 ここでさえ攻略できなかったヒュドラ(九頭龍)がのさばる密林は、この国にとってネビュラ以上に恐ろしかったことだろう。



 そんな事を考えながら、リーヴァルより発展した街並みを進んでいくと、一段と大きな建物が見えた。

 


「ショーマ、あれがカンナディアギルドだ」


「やっぱギルドってのはどこも目を引くんだな。この国でいかに重要視されてるかがよく(わか)る」


「そりゃあクリミナでは冒険者なくして国は守れないからな。国民の誇りであり、憧れの存在であり続けねばならん」


「いつになく饒舌(じょうぜつ)じゃないかスマルト。お前にも憧れがいるからか?」


「あぁ。俺もいつかシアンさんみたいな、強くて立派な剣士になってみせるさ!」


 

 体格差はあれど、すでにシアンとスマルトの個人戦力は、ほとんど変わらなそうな気もするんだけど。


 本人が言うならそれでいいか。



 ギルドの内装は基本的には違いがなく、ただこちらの方が広々としている印象。


 そして立派な装備を身につける亜人達の視線は、踏み込んだばかりの俺達へと向けられていた。


 

『おい、あれが噂の新しい一等級だろ?』

『間違いない。人間だし隣にエルフもいる』

『とんでもねぇ魔術を使うらしいなぁ』

 


 冒険者になる以前の記憶が呼び起こされる。


 亜人の国にいる以上、(人間)が目立たずに行動するのは不可能というわけか。



 気まずそうにするシャルの肩を叩き、胸を張るよう促した。


 辺りの連中は珍しいもの見たさなだけで、害意や拒絶感は何も無い。


 こちらが歩めば気前よく道が譲られ、凱旋でもするかのように難無く受付までやってくる。

 


「キサラディからいらした、ショーマさん御一行ですね? 別室にてミモザさんがお待ちです」


「分かった。すぐに案内を頼む」

 


 受付の女性に連れられるまま、奥の階段を三階まで上った所で、正面には立派な造りの扉があった。



 内外でのやり取りを眺めた後、部屋の中に通されると、ミモザと壮年の男が何やら向かい合って会話をしている。

 


「ショーマ殿、久しいな。待っていたよ」


「あぁ、久しぶり。ミモザの仲間達は元気になったか?」


「もちろんだとも! 昨日も一つ依頼を達成してきたところだ」


「そりゃご健勝で何よりだな。それよりそっちは誰だ?」


「こちらはギルドマスターのカクタス殿だ。全ギルドを()べる元締(もとじ)めでもある御方だよ」

 


 身長は俺くらいだが、分厚い胸板を持ち、強面(こわもて)で近寄り難い風貌。


 年齢的に親の世代より上みたいだが、もっと気になるのはその特徴的な耳。


 俺はシャルの方に目線を移した。

 


「カクタスさんにはエルフ族の血が流れておりますね?」


「うむ、その通りだよエルフのお嬢さん。俺の祖母はエルフであり、こう見えてもこの身体は百年以上朽ちずに動いている」


「エルフのクォーターか。長命なとこも受け継いでいるんだな」


「君はショーマくんと言ったね。ミモザくんから聞いているよ」


 

 ギルド長は話してみると案外(ほが)らかで、鋭い眼光に見えたのも、単に形状的なもの(目付きが悪いだけ)だったらしい。



 俺達四人はソファーに腰を下ろし、ミモザと共に戦った時の事、そして今後の開拓について、互いの意見を交換し合った。


 

「俺は将来的に魔人との共存、もしくは棲み分けを図って戦争に終止符を打ちたい。本気でそう考えている」


「しかしショーマくん、互いの魔力を嫌煙(けんえん)する魔族と我等が、どう折り合いを付けると言うのだ?」


「人類種間に国と領土がある様に、魔人とも明確に分け合えば良い。嫌いだから殺し合うなど、知能の低い獣と同レベルだ。そうは思わないか?」


 

 しばし黙り込んだカクタスは、俺の顔を見たかと思うと、急に大口を開けて笑い始めた。

 


「なるほどな。君はそんな風に魔人をも手懐(てなず)けているわけか! 力のある君ならば歴史を変えるかも知れん。俺も喜んで協力しよう」


「ちょっと待て。どこで魔人との話を?」


「聞いてはおらんよ。だが自信に充ちた君の振る舞いに、なんの根拠も無いとは思えなかった。そこから推察したに過ぎないさ」

 


 ギルドマスターの合意を得られ、クリミナ北東の山脈からラフィル川付近は安全になるだろう。


 そう思ったのも束の間、ミモザの顔はまだ終わりではないと物語っていた。

 


「ショーマ殿、もう一人面会して欲しい人がいる。彼も味方にせねば進めないからね」

 


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