表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/79

ラフィルの墓場(3)

 林の深部でミモザに出会(でくわ)し、彼女の素性について訊いてみた。



 スマルトがまだ駆け出しだった頃、ミモザはすでに剣士としての頭角を現していて、エクルが合流する以前のパーティと共闘した事があるとか。


 それからカンナディアギルドで成果を出し続け、一年程前に一等級へと昇級する。


 一等級になる条件として、単独で(ドラゴン)を撃破した実績が必要になるが、彼女もまた剣の腕でそれを成し得たのだ。


 しかも俺の実績となったワーム(地底龍)より強そうな獲物を討伐して。

 


「私が倒したジルニトラ(魔導龍)は、魔法を得意とする龍でな。鱗の強度が低めで、貫通し易かったのが幸いしたよ」


「魔法を使うのか。俺が討伐したワームなんて、ただ単に図体がデカいだけだった」


「いや、ワームこそ大人数で挑むべき相手だろう。ショーマ殿の破壊力は桁違いなのだな」


「魔術に関してだけはな。――それよりミモザ、あんたはこの後仲間の下に帰るのか?」


「そのつもりだったが、ここで君達と出会ったのもなにかの縁。ジェード殿の無念を晴らす為にも、私を同行させて欲しい」


 

 シャルとスマルトはその頼みを快諾したけど、エクルだけは不服らしい。


 口をムッと噤んで、ジトーっとした目でミモザを睨んでいる。


 

「エクル、言いたいことがあるなら口に出せ」


「だってぇ……なんかエクルとキャラ被ってるじゃん。うさ耳で近接戦闘派で、外見が良いとこまで」


「お前の上位互換が加わるみたいで嫌なのか?」


「上位互換ってなにさ! エクルの方が耳も胸も大きいし、顔だって可愛いもんねー!」


「全て戦闘には関係無いな。第一ミモザはキリッとしたキレイめなタイプだし、お子ちゃまなエクルより男ウケするんじゃないか?」


「ショーマちん、キライ!!」


「ショーマ様……その言い方だと、さすがにエクルさんが可哀想ですよ」

 


 エクルはあからさまに拗ねてしまい、シャルが姉のように宥めていた。


 もちろん一人の嫉妬とわがままで、美味しい話を棒に振ったりはしない。


 そのまま未開拓地(ダンジョン)の奥へと潜り込み、ミモザを加えたありがたみが身に染みていた。


 彼女は紋章の身体強化だけで、俺でさえ捉えるのが難しい速度で移動し、魔獣を即座に撃破してくれる。


 深くなるほど敵の数が増えているものの、移動効率は格段に上がった。


 仲間も守り易くなるし、この戦力は本当に頼もしい。


 

「なるほど。ヒュドラ(九頭龍)の幻惑ブレスか」


「えぇ。ジェード殿はそれで恐怖を植え付けられ、ここに踏み入れなくなったと聞く。そうでなければ、あの方が臆するなんてとても考えられない」


「ジェードとはそれほどの男なのか?」


「当然だ。彼の槍は天空の雲さえ貫き、上級魔法をもひと振りで薙ぎ払う。人類種であの方に並ぶ強者など、私の知る限りでは一人もいないよ」

 


 ミモザから最強の冒険者と謳われるジェードの話を聞いていた時、急に千里眼(クレアボヤンス)で前方が認識出来なくなる。


 こちらに流れてくる濃い霧が視界を遮るという事は、あれは恐らく魔力攻撃だ。


 自然発生する霧であれば、その内部が見えないはずがない。



 すかさずエミッションで振り払おうとすると、霧が渦巻いて逆に範囲が広がってしまった。


 その途端ミモザが大声を出す。

 


「あの白い霧は――…まずい! これはヒュドラのブレスだ!! 毒か幻惑の可能性が高いぞ!」


「全ては打ち消せない。シャル、練習してたあの魔法はいけそうか!?」


「はい、短時間でしたらなんとかなります――」

風神の加護ウェンティプロテクション



 風の加護(エアロプロテクション)の上位版に当たるこの防御魔法は、周囲一帯を暴風で包み込み、あらゆる魔力や物理衝撃から内側を保護する。


 砂漠にいた頃から練習していたけど、ここに来て形になったみたいだ。



 外の霧は気流に呑まれて、四方八方へと拡散している。


 しばらく経てば千里眼も元通り機能するだろう。


 しかし付け焼き刃では上手くいかず、シャルがしんどそうに声を出す。

 


「ショーマ様、申し訳ありません! 魔力操作が難しく、もう限界です……!」


「くっ、これはやむを得ない。すまんシャル!」


 

 シャルのMP(マジックポイント)が尽きる直前、俺は彼女と唇を重ねた。


 回復したシャルは防御を維持し、俺はキスの状態を維持している。


 このままでも千里眼は使えるが、エクルの視線がものすごく突き刺さってくるんだが……



 モヤだらけだった視界がようやく晴れていき、北東一キロくらい先に大きな影が映る。


 俺はシャルから口を離し、特大のエミッションを放った。


 

「やったのかショーマ!?」


「いや、掠っただけだな。敵は左にズレてる」


「ねぇショーマちん、なんでシャルさんにキスしたの? 今のなに??」


「詳しい説明は後だエクル。俺は先にヒュドラを倒しに行く」


 

 逃げるように高速移動(クイックムーブ)を使い、影の方へと急いだ。


 まだ敵の周りはブレスが効いてるらしく、ハッキリとはその姿が映らないけど、もう後戻りは不可能。


 次のブレスが放たれる前に、なんとしても仕留めなければ。



 俺は細かくエミッションを連発して、敵の頭部が消し飛んでいる事を願った。


 

「なんだこりゃ……気持ち悪いな」


 

 数十メートル手前から見えた本体は、さながら特撮物に出てくる大怪獣のよう。


 破壊された七本の首がモゾモゾとうねりながら再生し、残りの二本で俺を睨みつけている。


 三階建ての一軒家よりデカそうな巨体だ。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ