一段落後も先は見えず
ちょっとした冒険を終えてべレンズに到着すると、人里のありがたみが身に染みて分かった。
地面からの照り返しが無いし、空気に含まれる湿気が喉や肌に優しい。
砂漠なんて人間の住む場所ではないな。
早速討伐の成果を見せつけに、キサラディのギルドへと向かった。
今回のは正式な依頼として受理したものではないが、調査という名目で魔族の素材を渡せば、冒険者の等級アップに繋がる。
未だ九等級のシャルはどこまで上がるのだろう。
「ミィ、悪いがまた透明化してくれるか?」
「うん! そのあと、アンリノット!」
「あぁ、またあの宿に帰ろうな。ノットの飯が恋しくて仕方がない」
「ショーマ様もすっかりあのお店を気に入られましたね♪」
「最初の宿が大当たりだったな」
三人で和気あいあいと話していると、急に膨れっ面をしたエクルが割り込んでくる。
「ずるーい。エクルもあの宿で泊まるー」
「お前とスマルトには借家あるだろうが。わざわざ二重に借りる利点がどこにある?」
「でもなんか寂しいじゃん……。パーティメンバーなんだから、いつも一緒がいい!」
「そんなもんか? ただの仕事仲間だろ?」
「うーわ、ショーマちん冷たーい! スマルト、こんなこと言われてるけどどう思う!?」
「今日は家に帰るとして、そろそろ俺達もあそこを離れるか。いつまでも未練が残るだけだからな」
会話の流れで結構な重大発言が出たけど、俺はなるべく聞かないふりをしていた。
そうしているうちに到着したキサラディは、なにやら物々しい雰囲気。
ギルドの前にはシアン達三人が揃ってるし、事件でもあったのか?
慎重に近付く俺達に気付き、シアンから声を掛けてきた。
「あっ、ショーマくん達戻ってきたんだね! スマルトとエクルも無事でなによりだよ」
「シアンさん、俺達もなんとか帰還しました。それよりギルドでなにかあったんですか?」
「実は今朝のことなんだけど、キッサ村の先の平原に、行方不明だった調査隊の装備が置かれてたんだ。僕達で拾い集めて、ギルドにも報告してある。当然大騒ぎだけどね」
「なるほど。クラレットが遺品だけでも返してくれたんだろう。調査隊は敵が大軍勢を揃える準備期間中に、魔獣達の腹の中か」
「そんなとこだと思う。これもセピアが張った罠だと考えると胸が痛むよ。しかし僕は、彼女と本当の意味で分かり合いたい」
「あぁ。憎しみ続けるのは両者にとって生産性が無い。ここらで終わりにしてやろう」
とは言っても、今回の俺らの探索は空振りだったわけだが。
ギルドに入り、戦利品を公開しながら報告をすると、職員の驚愕っぷりがえげつない。
まぶたも口も限界まで広げ、信じられない物を目の当たりにした顔だ。
「さ、砂漠地帯の南方に茨の森!? こ、この鱗はなんですか!? こっちの皮も……」
「あぁ、それはサラマンダーの鱗でそっちはワーム。あとはデカい猿とバーゲストの皮に、サソリのハサミなんかも一応剥ぎ取ってきた」
「サラマンダー!? ワーム!? それをたった四人で倒されたのでしょうか!?」
「ほっとんどショーマちんがやっちゃったけどね〜。危ないからまず俺がいくって」
「いやでも二体目のサラマンダーやバーゲストは、シャルが単独で倒してたじゃないか」
「ショーマ様、エクルさん、落ち着いて下さい。職員の方が凍りついております……」
その後ギルド内が歓喜の渦に包まれた。
行方不明者達の不幸によって不安が伝染してたし、その反動が大きいのだろう。
ギルドでは審査に時間が掛かると言われたが、別の職員に俺とシアンのパーティが呼び出される。
内容は聞かなくてもおおよそ察しがついていた。
「シアンさん、ショーマさん。お二人とパーティのみなさんに折り入ってお願いしたいことがあります。それは――」
「北の山脈の魔族討伐か?」
「えぇ、ショーマさんのおっしゃる通りです。前回の調査報告にあったワームの他にも、ギルドでは魔人の関与を疑っております。これ以上被害が出れば村や街も危険です」
ギルドにはワームは追い返しただけと報告してあるし、重傷で動けない設定にしたセピアの事も隠し通すのが難しい。
山脈周辺に冒険者を立ち入らせない為には、あの場所を危険だと思わせておいた方が都合が良いのだが。
「少し考えさせてくれ。俺達も魔人がワームを連れ出したと思われる出処を捜索して、手掛かりが見つからなかったばかりだ。動くには時間が要る」
「もちろんすぐにとは申しません。シアンさんの今朝の報告にも、静か過ぎて不気味だったと伺っておりますので……」
「それなら話が早い。しばらく初心者の狩場は、四等級以上に同行させて南方を中心にするといい。確かに強い魔獣もいたが、砂漠手前の草原でも戦えないのなら話にならん」
「分かりました。サウリマ地方のギルドとも相談して、今後の方針を決めていきます」
「サウリマ……べレンズの西にある地方か」




