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新パーティ初遠征(4)

「これは……茨の森? この内部に魔人の四天王が居を構えているのでしょうか?」


「いや、そうでもないらしいぞシャル。木々の間に建造物は見当たらないし、奥にも一キロくらいしか続いていない。その先の林を抜けると――どうやら海があるみたいだ」


「海だと!? ではそこが大陸の最南端か。北には海辺まで開拓した場所があるが、水中の魔獣達とは陸より戦い難く危険で、今では船を出そうとする者さえいない」


 

 遠征に出発して一週間が経過し、砂漠から草原地帯に移り変わって差程行かない内に森が現れた。


 刺々しい植物が左右に広がるものの、奥行は千里眼(クレアボヤンス)だけで見通せる距離で、微かに砂浜らしきものも映る。


 ここまで沿ってきた川は森の中へと続いているし、その合流先とあらば海なのだろう。



 一日掛けて森の周辺を東へ西へと散策してみたが、魔人の気配は拾えない。


 川より西側が拠点だとしたら、ルイース地方を越えて隣の管轄になってしまう。


 無駄足だったとは思わないけど、セピアや四天王に関する手掛かりはゼロだった。

 


「ショーマ様、ここは一度仕切り直した方が良いかも知れません」


「俺も同意見だ。いい加減静かに眠りたい」

 


 砂漠の深部に来てからは夜中にバーゲストが出現し、夕方と明け方に仮眠を取るだけで精一杯。


 道中も砂丘からワーム(地底龍)が飛び出したこともあって、この未開拓地(ダンジョン)がいかに人類種向きで無いかを痛感した。



 少し手前の岩山には珍しい素材もありそうだったが、拾いに行く精神的余力が残されていない。


 魔獣の素材は大量に収穫できたけど、今はとにかく早く帰りたい。


 そう思いつつも気になって仕方がない俺は、エクル達に質問を投げた。

 


「北西の街の近くには鉱山があるんだっけ?」


「あるよー。そこの鉱石をたまに冒険者が拾ってきて、べレンズの鍛冶師が武器にしてるからねー。それがどうかしたの?」


「いや、そうなるとさっき見た岩山には、どんな鉱石があるのかと思ってな」


「いくらショーマちんでも、あれを登ったら暑さで死んじゃうよ? それよりこの森、東側が切れてるんでしょ? そっちは見に行かないの?」


「いや、恐らくそちら側は……」


「エクルさん、東に進んだ先ではリーヴェ川にぶつかると思われます。渡れば聖者の森の南方に位置する、迷いの森があるんです」


「迷いの森? なにそれ?」


 

 シャルの村で簡単に聞かされていたが、どうやら地元のエルフ達でも滅多に立ち入らない場所が、東のネビュラ大森林と南の森らしい。


 南方の迷いの森には度々魔人が出るみたいだけど、それ以上に厄介なのが、方向感覚を狂わす悪霊系の魔物。


 気付けばそいつらの魔法に惑わされていて、森を出られなくなると言う。



 説明を受けたエクルは、口を大きく開けて驚きを表現していた。

 


「エルフ族って、そんな危険だらけの真ん中で暮らしてんの!? エクルだったら安全な街まで逃げてきちゃう! そんなとこ怖いもん!」


「その分豊かな自然と、静かな環境に恵まれているんですよ」


「ほぇー……。でもセピアさん達も、もしかしたらその迷いの森にいるんじゃない?」


「だとしてもだ。迷ってド派手なエミッションを使い、森ごと切り崩すのは気が引けるし、ネビュラから続いていてどんな敵がいるかも分からん。今の俺らで対処しきれると思うか?」


「んー、準備し直した方が良さげだねこれ」


「そういうことだ。べレンズの南方は空振りで、砂漠の南東か南西が怪しい。それが把握できただけでも、今回は収穫としよう」


「そだね。あとショーマちん、そろそろ体力がしんどくなってきたから、またあれお願いしていい?」


「そうだな。全員俺の近くに来い――」

サラウンド(範囲指定)



 俺は半径二メートルくらいの範囲を、唱えた魔法の円で囲んだ。


 この魔法はギルドの書庫の文献に記載されており、魔力を流す範囲を限定出来る。

 魔力を多く使えばそれだけ広い範囲を囲えるし、逆に狭く焦点を絞ることも可能。


 旅路で密かに練習していたが、遂に使いこなせるまでになった。


 使用例としては、複数の敵を囲んでそこに魔法や魔術を撃ち込み、まとめて殲滅したりする。


 それだけでも充分に便利だけど、俺が考えた使用方法はこうだ。



グローヒール(上級回復魔法)



「複数人を同時に回復させるなんて、いつ見ても素晴らしい魔法です。なぜ使い手が少ないのでしょう?」


「俺の憶測だが、MP(マジックポイント)や魔力操作技術が足りないんだと思う。サラウンドだけでも魔力を消費するのに、広範囲だと低級魔法でも上級並に魔力を吸われるからな。扱いが難しいんだ」



 シャルの質問に俺が答えると、更にスマルトが補足を付け足す。



「俺はドワーフの鍛冶師が使っているのを見たぞ。武具に高温の焼き目を入れる際、一点に集中させて炎魔法の火力を上げていた」


「なるほど。その使用法であれば逆に魔力を節約できそうですね。興味深いです」


 

 帰りは三日三晩掛けて、寄り道せずに真っ直ぐ街を目指した。


 持ち込んだ保存食はなるべく菜食のシャルに回し、他の面子は狩った魔獣の肉で済ますなど、中々のサバイバル生活。


 荷車でも持ってきていれば、俺が馬の代わりになって、全力疾走で仲間を引くことも可能だったかも。


 エクルならまだしも、さすがにシャルやスマルトが遠慮してしまうか。



「ショーマ、涼しい! ここ、暑くない!」


「あぁ、もうすぐべレンズが見えてくるぞ」

 

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