表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/79

新パーティ初遠征(3)

「すまないシャル。やっぱり俺とキスするなんて、ずっと我慢させてたんだよな」


「えっ!? いえ、我慢して下さってたのはショーマ様です。ショーマ様にとっては取るに足らないことかもしれませんが、作業的なのに私だけというのが腑に落ちなくて……」


「待ってくれ、それは誤解だ。全然作業的なんかじゃない。むしろ毎回緊張してるんだが」


「それはやはり嫌な気持ちを押し殺して――」


「だから違うって! シャルのことは本当に大切に想ってるから、どうしても意識してしまうんだよ。でも意識しないからって誰にでもキスするような、そんな軽い男でもないからな!?」

 


 涙をボロボロ零していたシャルが、急に顔を真っ赤にして目を逸らした。


 しかしその反応は、怒りや気味が悪いといったものではなさそう。


 というか口元が緩んでいる気がする。

 


「えっと……今度はどうした?」


「……申し訳ありません! 私が勝手に勘違いして、酷い態度をとってしまいました!」


「酷い態度? 身に覚えがないぞ?」


「とにかく、ショーマ様が私を大切に想って下さり、口付けという手段が取れるのも私だけだと分かったので、もう大丈夫です!」


「そ、そうか。じゃあ戻ろうか」


 

 なんか誤解されてる気がするけど、シャルを特別だと感じているのは違いないから、まぁいい。



 その後もう一度エクルとスマルトとはMP(マジックポイント)回復の件で話し合い、注射器で採血するのと同じ感覚だと強引に言いくるめた。



 それから三日間、途中で見つけた川に沿ってひたすら南へと進んでいる。


 出現する魔獣はどんどん強くなり、見慣れない大サソリや猿に似た怪物もいたが、メンバー達と難なく撃破した。


 それ以上に厄介なのはこの気候。

 暑さで疲弊した肉体をヒール(回復魔法)でなんとか誤魔化しつつ、エクルの魔術で水を冷やして幾らか凌いでいる状態。


 終わりの見えない砂の地平線は、俺達全員に絶望感に近い感情を抱かせた。

 


「ミィ、熱中症になってないよな?」


「んー、平気。あつーい。でも、頑張る」


「もう少ししたら休憩しような。――それにしてもエクルの獣化は、いつ見ても弱そうだよなぁ。手脚がもふもふしただけじゃないか」


「し、失礼な! 獣化前とは比べ物にならない強さで、パンチやキックが打てるんだよ! ショーマちんに喰らわ――って、スマルト危ない!」

アクアスフィア(中級水属性魔法)

 


 会話中に血相を変えて走り出したエクルは、スマルトを庇うように突き飛ばし、魔法を発動させる。


 その魔法は球状の水を作り出すもので、人ひとりがすっぽり埋まりそうなサイズにも関わらず、みるみる蒸発していく。


 原因はその奥から放たれる炎のブレスだった。



 ギリギリで難を逃れたスマルトが、エクルの背後で慌ただしく声を上げる。


 

「な、なんだあのトカゲは!?」


「あれはサラマンダー(火炎精霊)! いいからスマルトは早く離れて! もう()たない!」


 

 水の塊はあっという間に消滅し、燃え盛る炎がエクルに襲いかかる。


 間一髪躱したかに見えたものの、掠めた右腕に大火傷を負っていた。


 俺はすかさずグローヒール(上級回復魔法)で治したが、一歩間違えれば灰になり治癒も効かなかっただろう。


 他の魔獣に比べて、一メートルくらいしかない小さな体のくせに、あのサラマンダーというトカゲは相当な魔力を持っているな。

 


 俺は全員を押し退けて最前線に立ち、大きめの声で指示を飛ばした。



「シャル、みんなと離れた場所に避難しててくれ。こいつは俺が相手をする」


「わかりました! どうかお気を付け下さい!」


「ショーマちん! そいつは怒ると全身が超高温になって、金属も溶かしちゃうの! 絶対に直接殴ったりしたらダメだよ!?」


「そりゃ厄介だ。尚更斬りたくなってきた」

 


 硬そうな鱗だけど、ワイバーン(飛龍)より硬くはないはず。

 おそらくエミッションを放てば、一瞬にして終わってしまうのだ。


 それより今は接近戦を練習したい。

 先日からスマルトに色々と教わってるし、魔人を殺した時よりは剣術らしくなっている。


 俺は魔術剣(マジックソード)を取り出し、光の刃を顕現させた。

 


「この剣は熱じゃどうにもならないぞ?」

 


 危険を察知したサラマンダーが再度火を吹くと同時に、俺は高速移動(クイックムーブ)で避けながら敵の背後を取る。


 そのまま首を狙うと、あっさりと胴体から切り離された。


 あらためて魔術剣の斬れ味が恐ろしい。

 


「見事だショーマ。今の居合を模した剣撃、目にも止まらぬ速度で驚いたぞ」


「どうも最近筋力が増してる気がしてな。身体強化だけでかなり動けるんだ」


「そうなのか? 体格に優れない俺としては、ショーマの筋肉質な体が羨ましい限りだ。それでいてエクルと同じ魔法(クイックムーブ)も使えるのだから、もう十二分に近接戦闘向きだろう」


 

 この世界に来る以前まで大した運動もしていなかった俺が、今や冒険者にさえ羨まれる恵体か。


 身長はシャルと大差ないとは言え、スマルトの四肢も結構逞しく思えるけど。


 結局のところ、悪魔に変質されたこの身体はどこまで常識を外れ、何を可能とするのだろうか。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ