表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/79

新パーティ初遠征(2)

 砂漠の未開拓地(ダンジョン)に踏み入ったところ、日が傾き始めた頃から魔獣の動きが活発化していたので、約二時間ほどでその日の探索は終わりにした。


 テントを構え、交代で見張りをしながら休むというのは、これぞ冒険といった気分になる。

 


「エクル、テント張る時に魔術を使ってたよな? あれはどんな種類だったんだ?」


「あー、杭を刺した時? あれは簡単な重力魔術を使ったんだよー。ショーマちん知らない?」


「重力魔術? そんなのあるのか?」


「うん。さっきのは半径十センチの範囲だけ重力を高めて、杭を砂の中にめり込ませたの。戦いに使える威力じゃないけどね〜」


 

 金槌も使わず固定してると思ったら、そんな便利な方法に頼っていたのか。


 部分的に重力を強められるなら、魔力量と技術次第で効果範囲は広がりそうだな。

 今度教わろう。



 その晩は何事も無く過ぎ去り、強烈な日差しの照りつける朝を迎えた。


 夜は涼しかったのだが、砂漠の気候は日中が非常に厳しい。


 朝日で一気に気温が上がっていき、昼の炎天下にはあまり動けないだろう。


 午前中の内に出来るだけ探索を進めようと、立ちはだかる敵をバッサバッサと薙ぎ払いながら、移動ペースを上げた。

 


「スマルト、左のオーク共は任せた。エクルもガルム二頭くらいはいけるよな?」


「もち! 右側はエクルがもらうよ!」


「よし。シャル、正面から向かってくるケンタウロスの群れを一掃するぞ」


「わかりました――」

ハリケーン(中級風属性魔法)

 


 シャルは両手を正面に掲げると、水平方向に進む竜巻を発生させる。


 巻き込まれた魔獣達は次々に上空へと打ち上げられ、落下した時には気絶、もしくは絶命していた。


 これで中級風魔法の派生系だと言うのだから、魔導師としての格の違いを見せつけられる。


 息がある奴はエアカッター(中級風属性魔法)で片っ端から首を刈り取り、その様子はまさに仕事人と呼ぶに相応しい。


 スマルトも目を見張りながら称賛を送っている。

 


「シャルさんは凄まじいな。魔法に長けたエルフと言えど、ここまでの使い手は聞いたことがない。さすがショーマの相棒だな」


「スマルトの剣術も、俺から見れば充分凄まじいけどな。――しかし本当にすごい魔法だったよ。魔力消費も大きかったんじゃないか?」


「私は大丈夫です。それよりショーマ様、先程エクルさんもたくさんの魔力を使ってましたよ」


「それもそうだな。エクル、MP(マジックポイント)はどうだ?」


「んー、連戦だったからちょい心許ないかも」


「そうか。――ほれ、今度は指を使えよ?」


「ねぇショーマちん、毎回そうやって腕切るんだよね? 痛くないの?」


ヒール(回復魔法)を使うから問題ない。すぐに治る」


「治るとしても、痛いもんは痛いじゃん」


 

 渋い顔のまま同情してくるエクルは、申し訳ないけど少々面倒だ。


 シャルの時は別の手を伝えたが、こいつには絶対に言えない。



 お互いの為にも、姿勢を一切崩さずに嘘を吐いた。

 


「痛みはあるが他に方法が無い。仲間達と常に万全の状態で戦う為だし、そこは深く考えなくていい」


「今回は切っちゃったからしょーがないけど、次からはMPポーション飲むよ。ポーション無くなった時の最終手段ってことにしよ?」


「それはダメだ。万が一俺が死んだ時、お前達だけで帰るのにポーションは必要不可欠になる。最終手段はポーションの方だ」


 

 一時の痛みを避けて、生きるか死ぬかの戦場に妥協案を持ち込むわけにはいかない。


 俺の傷はすぐに治せるんだから、この方法は誰にとってもリスクが薄いはずだ。


 だがミィ以外の三人が表情を曇らせ、何か物言いたげに俺を見ている。


 声を出したのはエクルだった。


 

「ショーマちんがみんなの為を思ってるのは分かってる。だけどこのやり方はなんか、優しくないよ。こっちが迷惑掛けてる気持ちになるの」


「それは思い過ごしだ。俺はお前達を失いたくないし、お前達は一緒に戦ってくれる。それだけで多少の痛みを耐えるには充分な理由なんだよ」


「ですがショーマ様、それならいっそ――」


「シャルはちょっとこっちへ来い」

 


 昨日あれだけ説明したのに、まだあの方法をバラそうとしたかったらしい。


 そんなシャルの発言を遮りつつ、彼女の減ったMPを取り戻す為、離れた場所に連れて行った。

 


「ショーマ様、なぜこんな所まで……?」


「余計なことを吹き込ませない為と、シャルのMPを回復させる為だ。キスによる回復は、他の奴には使わないと言っただろ?」


「ですからなぜ私には出来るのですか? 私が便利な魔法を使える、勝手が効く道具だからですか?」


「なにとち狂ったことを言ってるんだ? 俺はシャルを道具だと思ったことなんて一度もない。危ない目に遭わせたくないから、可能な限りのサポートをしてるんだ」


「昨日ショーマ様は、私が血を拒むからキスにしただけとおっしゃいました。あれではまるで、ただ機械的に役目を果たしてるだけみたいじゃないですか! それなのに私だけって……ショーマ様の心理が分かりません!」



 今回シャルが泣いている理由はどこにある?


 俺のなにが彼女を悲しませ、俺自身もこんなモヤモヤした気持ちになっているのだろう。


 考えても答えは見つからず、その物憂げな瞳に言い様のない罪悪感が芽生えるのであった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ