新パーティ初遠征(1)
「というわけで、パーティ結成直後で申し訳ないが、しばらくお前らとの活動は無しだ」
「待ってくれショーマ。それなら当然俺も同行する。長期の遠征なら荷も多いだろう」
「そうだよショーマちん! エクルは荷物持ちだけなんてヤダけど、ちゃんと一緒に戦えるってところ見せるからさ、連れてってよ!」
「えー――……。人数が増えればその分荷物も増えるだけだし、守るのも難しくなるんだが……」
セピアが囚われてると聞いた翌日、シアン達とどこから捜索に入るか相談した。
まず一番怪しいのが、べレンズの南側にある砂漠地帯。
バーゲストを誘導したのは恐らくボルドーではなく、他に強い魔人がいると考えられる。
だからその棲息地に疑いがかけられた。
しかし南方に数十キロ進んでようやく入り口があり、そこから先は広大な砂の未開拓地。
人類種がほとんど踏み入った事の無いその場所は、探索に何日掛かるのか予想出来ない。
だから俺達だけで向かい、シアン達は街を警護する方針で固めた。
更に次の日が今日。
べレンズでスマルトとエクルに合流してすぐ、二日前の出来事を説明した。
危険度が未知数なので、もちろん待機するよう警告を促すつもりで。
その結果駄々をこねられたのが今現在である。
「そもそもおかしいじゃん! シャルさんは道連れ確定で、ミィちゃんまで一緒に行くんでしょ? なのにエクルは留守番ってどゆこと!?」
「シャルは防御の要だし、ミィは魔人の攻撃に対処した前例がある。現状、お前達が行くより安全だと判断したまでだ。もっと言えば、シャルに冒険者としての実績も作らねばな」
「ならば獲物の素材はどうする? 俺達がいればより多くの素材を持ち帰られて、シャルさんの等級を上げるにも役立つぞ?」
「スマルト……お前結構手段を選ばないな。だがその貪欲さは気に入った。一緒に来い」
「ちょっとぉー! エクルだけ残るの!?」
「なにを言っている。お前はスマルトとセットに決まってるだろう。早く準備するぞ」
「なんか言い方が気になるけど、まぁいっか。ショーマちんやっぱり優しいね♪」
正直気は進まないけど、あの二人の必死さを見ていると、仲間を失った恐怖が消えないのかと思えた。
それが拭い去れるまで試練に挑んでみるのも、あいつらの今後の為になるだろう。
素材運びの人員は欲しいし。
丸一日掛けて準備を終えた俺のパーティは、冒険者四人とブラウニーの付き添いという、なかなかそれらしい布陣である。
街外れのサバンナ地帯をあっさり突破し、砂漠の前に辿り着いた。
「日中の時間を大幅に削られてしまった。サバンナだけでもかなり広かったんだな」
「魔物や魔獣を倒しながら、この五十キロ以上の長距離を八時間くらいで行けちゃうパーティが、むしろめっちゃ珍しいんですけど……」
「なんだよ、もうくたびれたのかエクル? まぁ結構魔力使ってたもんな」
「うん……。そろそろMPポーション飲んどく」
「あー、待て待て。それならいい物がある」
自分の手首をナイフでザックリいき、唖然とするエクルに血塗れの腕を伸ばした。
「ちょ、なにしちゃってんのショーマちん!? 自殺しに来たの!? こんなとこに!??」
「えっと、ショーマ様の血にはMP回復の効果があるんです。少し舐めて頂ければ分かりますよ。――でもショーマ様、あとでちょっとお話が……」
シャルの説明に首を傾げたエクルだが、舌を出したかと思うと、そのまま俺の腕を直接ペロり。
このうさ耳、指で掬わず直に舐めるとか恥じらいがないのか?
効果を実感して獣人二人が驚いている隙に、シャルに岩の影まで連れて行かれた。
「ショーマ様、なるべく傷を作らないで下さい。見ていてすごく胸が痛むんです」
「ショーマ、ちゅー! ちゅー、しない?」
「ミィ、それはシャルだから出来るんだ。ミィにも一回しかしてないだろ? 相手を選ばずに使える手段ではないんだよ」
「ショーマ様……それって――?」
「ん? 自分の為に傷を作るのをどうしても見たくないと言うから、それならキスで――ってなっただろ? こまめな魔力回復は最優先だ」
「は、はぁ……そうですね。ではエクルさんやスマルトさんとも口付けにしましょうか」
「それは出来ないだろ。エクルはスマルトに好意があるんだぞ? 誤解を招いて二人の関係が悪くなれば、パーティに支障が出る」
「じゃあなぜ私には出来るのですか!!」
初めて聞くシャルの怒った声に、不覚にも本気で怯んでしまった。
それに気付いたエクル達がこちらに駆けつけて、心配そうに覗き込んでいる。
「シャルさん? ショーマちんに虐められた?」
「エクル、人聞きの悪いことを言うな。でも一体どうしたんだシャル? らしくないぞ?」
「……申し訳ありません。もう大丈夫です」
「シャルー? ショーマ、シャル、怒った?」
「俺に失言があったのだろう。だが理由が分からないまま謝るのも失礼だから、落ち着いたら教えてくれ。ミィもあまり煽ってやるなよ?」
「ミィ、煽った? ミィ、ごめんなさいする?」
「違いますよミィ。私が悪いんです」




