成長の証(2)
葬儀の準備で俺に手伝えそうな事は無く、作業の邪魔になりそうだったからすぐに引き返した。
先程解散した場所にはもうシャル達が戻っていて、ついでにスマルトも合流している。
俺の提案について伝えられたのか、スマルトからその内容を詳しく訊かれた。
「ショーマ、君には実力差をまざまざと見せつけられたばかりだが、本当に俺達を仲間にしてくれるのか? エクルはともかく、俺には剣術とスピードしか取り柄がないのだが……」
「勘違いするな、お前らに戦力を期待しているわけじゃない。そうだな――強いて言うなら、シャルの友人候補として見込んでいるくらいだ」
「ショーマ様、こんな時くらい素直になられてもよろしいのですよ? もちろん私にとっても嬉しい提案ですけど」
「二人がそう言ってくれるのなら……本当に有難い申し出だ。これからよろしく頼む」
スマルトが合意した事で、隣にいるエクルの表情も自然と明るくなる。
この瞬間から俺達は、晴れて四人組の冒険者パーティとなった。
「では早速なのだが、この街で品揃えの良い武器屋を紹介して欲しい。場所だけ教えてくれれば、俺とシャルで行ってくるから」
「だったら是非とも俺に案内させてくれ。時間が余り、じっとしていると気が滅入ってしまう」
「それなら頼もう。エクルも行けそうか?」
「うん、一緒に行くよ! そう言えばショーマちんの剣、バッキバキだったもんねー」
「あぁ、シアンとの決闘中、見事に折られた」
『シアンさんと決闘!?』
「なんだよ全員でうるさいな。ちょっと揉めてやり合ったけど、俺の負けで終わったよ」
シャルがものすごく不可解そうな顔をしたから、全員に決闘の内容を説明しながら、べレンズの市場へと向かった。
どうやらサバンナ地帯の奥には珍しい鉱石の採掘場があるらしく、そこで採れるレア素材の装備が多数見られる。
中でも魔術武具店には宝具級の一品まであり、三人が別の店を眺めている間に大金をつぎ込んだ。
これなら接近戦が捗るぞ。
だが選んだ武器が凄すぎて、しばらく仲間にもお披露目できそうにない。
「ショーマちん、いい物あったー?」
「あぁ、このナイフにした。前の短剣より軽くて刃が丈夫そうだし、金額も二倍したからな」
「それ金貨一枚のナイフだよね? ショーマちん強いけど、お金はそんなに無いとか?」
このナイフは獲物の解体用だ。
本命には金貨四百枚以上使ってんだよ。
何かを察したシャルが、すかさずフォローを入れにくる。
「ショーマ様には強力な魔術があるので、武器にはこだわらないんですよ。手で素材を剥ぐわけにもいかないので、その為の物です」
「なるほどねー! それじゃ高い物買ってもしょうがないもんね。エクルはこの魔術グローブで戦うけど、ショーマちんも使えば?」
「それはすでに持ってる。俺もシャルも」
市場を巡ってる間に夕方になり、シアンを含めた多くの冒険者達と、スマルトの仲間を見送った。
しんみりとした空気感が自分の未熟さを痛感させるけど、スマルトとエクルは必ず守り通すから、それを償いとさせてほしい。
ロゼ達の棺が埋められる最中に泣き崩れたエクルも、その日はスマルトと共にべレンズに残り、思い出深い家へと帰っていった。
俺とシャルはそれを見届け、帰りの馬車に揺られている。
「エクルさん、複雑そうでしたね……」
「これを機に想い人との仲を進展させるなりすれば、お互い前向きになれそうなのにな」
「それが難しいと気付いているから、複雑なんだと思います。亡くなられたロゼさんは、一番色濃い状態でスマルトさんの心に残り続け、エクルさんの想いが霞んでしまいます」
シャルの語った話は分からなくもない。
嫌って離れたならともかく、良い印象ばかりを置き去りにされたら、それを覆すのも苦労するだろう。
スマルトが一生ロゼへの好意を引きずってしまえば、エクルの恋が実を結ぶ日は来ない。
切なくなった雰囲気を誤魔化すように、俺はさっき購入した魔術武具をカバンから取り出す。
「シャル、これを受け取ってくれ」
「綺麗な腕輪です……。どうしてこれを?」
「感覚強化の魔術具でな。魔力を込めれば五感が鋭くなり、より遠くの状況まで把握出来る。元々目や耳が優れてるシャルには、相性も良さそうだと思って。気に入らないか?」
「そんな、とても嬉しいです! 本来でしたらこんな高価な物は気が引けてしまいますが、今は心があったまって、すごく安心感を得られます」
「安心感? なぜこれが安心に繋がるんだ?」
「上手くは言えません。ただ、大切な人がちゃんと私のことを考えてくれている……そんな気持ちに包まれ、湧き出す感情だと思います」
「ま、まぁこれで広範囲を見通せる人員が増えるわけだから、俺としても負担が軽減されて、メリットだらけだというわけだ」
「うふふ、そうですね。お手伝い致します♪」
せっかくシャルが素直に喜んでくれたのに、なにこんな時まで強がってるんだか俺は。
しかし前回みたいに遠慮されなくてよかった。




