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成長の証(1)

 肉体の疲労を無視し、回復魔法を乱用して動き続けていた俺は、その翌日を丸々休息に充てがう事にした。


 昨日はシャルが作ってくれたポトフに似た料理を食べ、シャワーで汗を流した後でのんびりしたが、何故か二人部屋を大人三人と子ども一人で使う羽目になってしまう。


 ミィはもちろん良いとして、仲間と暮らしていた借家に帰りたくないと言うエクルは、今もシャルの寝床に潜り込んでいる。


 どうしようもない甘ったれに思えるけど、恐らくスマルトとロゼにとっての、最期の時間を邪魔したくなかったのだろう。



 そんなわけでシャルとエクル、俺とミィでそれぞれシングルベッドを共有して迎えた朝。

 ぐっすり眠る三人を起こさないように下に降りた俺は、店の店主夫婦に挨拶をしにいった。


 

「あら、ずいぶん早いのねーショーマ君」


「おはようアンリ。昨夜までの宿代を支払っておきたくてな。二人分追加で銀貨四枚で足りるか?」


「いや貰えないよそんなの! そもそもミィちゃんはうちの従業員だって言ったでしょ? それに二人部屋は一泊で銀貨三枚だよ?」


「じゃあ三枚受け取ってくれ。昨日シャルにキッチンも貸してくれたみたいだし」

 


 ぽかんと呆けるアンリに対し、俺は反応に困っている。


 世話になってる代金込みでと考えて渡したが、そんなに驚く事なのだろうか。

 


「一週間分は前払いで貰ってるし、部屋数も増やしてないのにねぇ……。ショーマくん、まだ熱が下がってないんじゃないかい?」


「見ての通りすっかり元気だけどな」


「じゃあどういう心境の変化さ?」


「まぁ、俺にも誰かを大切にしたいって想いがあっただけだ。そいつらに良くしてくれるアンリ達には、これでも感謝してるんだよ」


「なるほどね。アタシらだって、あなたには感謝してるよ。ミィちゃんに会わせてくれたし、街の周辺を守ってくれたんだからね」


「持ちつ持たれつ……か。俺らしくないな」


「成長ってのはそういうもんさー!」


 

 その後全員で朝食を済ませ、要請が来たのでギルドへと向かった。


 恐らく殉職した冒険者達の件だろうし、エクルも露骨に浮かない顔をしている。

 出会ったその日の内に、こいつの正直過ぎる性格は身に染みてるけど。



 ギルドに入ると、待機所にいたシアン達がどういうわけか嬉しそうにしており、受付で俺の名前が高々と呼ばれて更に混乱している。


 葬儀の内容とかじゃないのか?

 


「ショーマさん、昨日の依頼達成、確かに確認致しました。依頼の難易度や功績を厳正に審査した結果、あなたは二等級(超一流)冒険者へと昇級になります。おめでとうございます」


「二等級? 九等級から一気に上がるものなのか? いくらなんでも飛び級し過ぎだと思うんだが……」


「ギルドでも異例中の異例です。ですがあなたには、それだけの実力があると判断されました。現在ルイース地方で唯一の二等級です」


「ショーマちん、すごっ! 一年で四等級になったエクルの最速記録なんか、もう目じゃないじゃん!」


「俺、冒険者になってまだ三日目なんだけど……。まぁいいや。スマルトのパーティメンバーについては、なにか決定していないのか?」


「今日の夜に葬儀が行われます。場所は彼らが主に担当していた、べレンズの街です」


 

 受付の職員の言葉で現実に引き戻されたのか、エクルは小さめの体を更に縮めてしまった。


 シャルが優しく慰めてるけど、こればかりは本人が乗り越えなくてはならない。


 一時しのぎで機嫌良く見せても、かえって辛そうに見えるだけだ。


 落ち込む姿は心苦しいし、間に合わなかった俺自身も罪悪感を拭えない。


 

「エクル、俺達と組まないか? 俺やシャルなら簡単には死なないし、お前が失うものも減る。だからスマルトと一緒にどうだ?」


「ショーマちん……なんでそんなに優しいの?」


「ショーマ様は元々お優しい方ですよ。優し過ぎて、お傍にいると時折心配になるくらいです」


「シャルがそれを言うか? 俺はシャルに対してそう思っているんだが?」


「ほら、やっぱり慈悲深い人です♪」


 

 他人との接触を避けてばかりいた俺は、自分がそんな風に思われる人間だなんて知らなかった。


 やはり俺とシャルの考え方はまるで違う。

 優しいと捉える定義も、その表現の仕方も。


 だけどそれで良いのかも知れない。

 同じじゃないから否定するのではなく、違う部分に魅力を感じるからこそ、一緒に居たいと思えるんだ。



 俺からの提案を受けたエクルは、スマルトと話し合ってから決めたいと答えた。


 二人になってしまっただけでパーティは解散してないし、リーダーと相談するのは当然である。


 俺はそれを承諾し、シャルとエクルを連れて早めにべレンズへと向かった。


 エクルには葬儀が始まる前に、心の準備が必要になるだろう。



 この国では土葬が主流らしく、到着した時には街外れの墓地で作業が進められていた。

 


「人数が多いからか、準備が大掛かりだな」


「棺がこんなに……。本当に六人もの尊い命が、戦いで犠牲になってしまったのですね……」


「手伝えることは無いか見てくる。シャルとエクルはスマルトを探してくれ」


「わかりました。こちらはお任せ下さい」

 

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