表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/79

一波乱を終えて

 べレンズの南で起きた今回の騒動は、俺とエクルでギルドに詳しく報告した。

 すぐにギルドから現地調査の人員が派遣され、冒険者の遺体も丁寧に回収されるだろう。



 ギルドは各地方に本部が設置され、ここルイース地方はキサラディギルドが担当している。


 べレンズは地方境界の最西端に位置し、そこを中心に活動するスマルト達は、ルイース内でもかなりの手練だったとか。


 何よりエクルが史上最速で四等級に上り詰めた、期待の超大型新人扱いだったのが驚きだ。


 冒険者全体の実力を疑いたくなる。



 そんな話を聞きながら、今いるこの場所はギルド内の待機所。


 駆けずり回っていたせいか、腰を預けられる背もたれが凄く心地好い。

 


「シャルトルーズさん、ショーマちんを貸してくれてありがと♪ おかけでべレンズの街と、エクル達の大切なリーダーが守られたよ」


「いえ、貸すなんてそんな……私がお仕えしている身ですし、向かわれたのもショーマ様のご意志ですから。同行できなかったことだけが、少々心残りです」


「シャル、いくら軽いとはいえ、俺もさすがに二人抱えて走るのは骨が折れるぞ」


「エクルさんを抱えて走られたのですか?」


「ショーマちんめっちゃ速かったよー!」

 


 自己紹介を終え、仲睦まじく会話している二人に対し、つい余計な口を挟んでしまった。

 シャルの目が泳ぐ様を見てると、変に誤解させたかもしれない。


 俺はそそくさとその場を離れ、奥で座るシアン達の下に避難した。


 

「あ、ショーマさん。シャルさんと揉めてたそうですが、もう仲直りできましたか?」


「折り悪く詮索するなオーカー。今まさに新たな火種を撒いた気がして、隙を見て逃げてきたんだ」


「それはご愁傷さまです。――それにしても今回の事件、自分は別勢力の関与を疑っていますが……」


「それについては同感だ。俺達を引き離す為とも考えたが、他への襲撃が無い。つまり陽動でもないらしい」


「僕もそう考えてシャルさんに警戒を促したんだ。しかし何も起きなかった。先日の魔人より、オーカーが危惧する線が濃厚そうだね」


 

 別の勢力と言っても、凄腕冒険者達で歯が立たなかった魔獣を従わせたなら、魔人の中でも強者が糸を引いているのだろう。


 なんとか尻尾を掴みたい所だが、いかんせんボルドー達の裏の存在すら手掛かりが無い。



 問題が山積みだし、なんだか体も少しだるくなってきたな。

 


「ショーマくん!? どうしたんだい!?」


「あれ? 急激に眠気が……。それに全身がやけに重い。ヒール(回復魔法)が足りなかったのか……?」


「ヒールは傷や体力をある程度回復するけど、疲労まで完全に消し去る効果は無い。体が動くから誤魔化されてるだけなんだよ!?」


「そうなのかシアン。悪い、少し寝る……」

 


 待機所の机に伏せていた俺は、次に目が覚めるとふかふかのベッドで仰向けだった。


 胸板の上では小さな少女が眠ってるし、隣のベッドにはシャルではなくうさ耳女の姿が。


 なんかこの二人、妙に安心感丸出しで寝息を立ててるな。



 ここはいつものアンリノットの宿屋。


 俺達が借りてる二人部屋で、天井の木目も見慣れ始めた。


 ギルドからリーヴァルのこの店まで何キロもあるけど、どうやって運ばれたんだろう?


 ぼーっとした頭で考えていると、全身を目一杯伸ばしたエクルがまぶたを開いた。

 


「あー、ショーマちんだいじょぶ? 疲れが溜まり過ぎて、ちょっと熱も出てたんだよー?」


「マジか。エクルが俺をここまで……?」


「ううん、シャルさんがおんぶしてきた。これは私の役目ですから! って言ってね〜」


「おんぶ……。せめて男なら受け入れ易いが、華奢な女子にされるとか、どんな羞恥プレイだよ」


 

 想像するとむず痒くて、思わず腕で目を覆っていると、なんだか眉の上辺りがひんやりする。


 その正体はエクルの額の感触だった。


 自分と俺の前髪をかき上げて密着させてるし。

 


「えっと……なにをしてるんだエクル?」


「んー、まだちょっと熱いねぇ。エクルのおでこ、冷たくって気持ち良かったでしょ?」


「熱計ってたのかよ。確かに冷たかったけどさ。それよりシャルはどこに行ったんだ?」


「シャルさんならお店のキッチン借りてご飯作ってるよ。疲労に効く料理だって〜」


 

 なんて献身的で気遣いの出来る人なんだ。

 宿まで運んでくれた上に、食事の支度までしてくれるなんて。


 シャルの思いやりに感動していると、静かに開いた部屋の扉から、小さな鍋を持つエプロン姿の本人が入ってきた。


 

「あっ、ショーマ様! 起きてらしたんですね。エクルさんもおはようございます」


「ついさっき起きたとこだ。色々と世話になったみたいですまんな。ありがとうシャル」


「私は当然のことをしたまでですので……」

 


 照れ臭そうに下を向いたから、一応感謝の気持ちは届いたのだろう。


 枕元の小さな机にシャルが鍋を置くと、途端にミィが口を開く。


 

「んー? いい匂い。ショーマ、おはよ!」


「音より匂いで起きるのかミィは。おはよう。今朝は突然置いていって悪かったな」


「平気ー! ミィ、お部屋、お掃除した!」


「そうか。ミィも役目を全うしたんだな」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ