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交錯するコントラスト(2)

 俺の腕の中で、複雑な心を露呈させるエクル。


 他のメンバーを失った悲しみよりも、スマルトへの安堵が勝った事が、彼女の中で消化しきれないのは分かる。


 それはやはりスマルトを特別視しているからだろうし、決して忌むべき感情ではない。


 悪いのはバーゲストか、はたまたそれを動かした何者か。


 そして俺もまた、優先事項を判断する技量を磨かなくては。


 いたたまれない心情は、俺の口を(うそぶ)くように動かした。

 


「いっそ助けを呼びに行かず、みんな平等にあの場で朽ちた方が、エクルはラクだったか?」


「そ……そんなこと思うわけない!! スマルトを助けられて良かったに決まってる!」


「それがお前の答えだろ。本心とは自然に芽生えるものであって、頭で操作出来るものじゃない。一人でも救えて良かったんだよ」


「ショーマちん……見かけによらず、とっても優しいんだね。見かけによらず……」


「なぜ二回言った? 俺の見た目ってどんな印象だよ」


「暗くて不器用で無表情で、ザ・ネガティブって感じ? とりあえず独りで抱え込めば上手くいくって思ってそう……みたいな?」


「お前はバカそうなのに妙に鋭いから、俺が一番苦手なタイプだな」


「えー、エクルは君のこと結構好きなのになぁ」


 

 くだらない会話をしながらも、気を使わなくて済むこいつはそれなりに接し易い。

 不本意だけど。



 肉眼でキサラディが見えてきた頃に千里眼(クレアボヤンス)を使うと、街からギリギリの所にシャルが立っているではないか。


 ついでにシアン一行も勢揃い。


 もしかして加勢に来ようとしていたのか?

 


「エクル、ここで降りてくれ」


「えー、まだ遠いじゃーん。歩くのやだー」


「落ちて痛い目見るのはエクルだぞ?」


「ちょっ、なんか顔怖いし! わかったよもぉー」


 

 渋々歩き始めたエクルと並び、キサラディの門へと向かう。


 あちらも気付いて手を振ったりしてるけど、シャルは地面の方に視線を向けている。


 まぁ揉めた後だったから仕方ない。



 俺は何事も無かったように大きめの声を出した。


 

「バーゲスト共はもう片付いたぞ!」


「ショーマくん、君に任せて本当に良かった! エクルも無事で何よりだよ!」


「ガッハッハッ! ショーマにとっちゃ羽虫を潰すようなもんだろ! その実力が妬ましいわい!」


「役目を奪って悪かったなシアン。――アンバーは少し黙れ。羽虫は人を喰らわん」


「……間に合わなかった人もいるのかい?」



 シアンからの問い掛けに口篭りつつも、辛そうなうさ耳少女に答えさせるわけにはいかない。



「むしろスマルトしか救えなかった。俺が到着した時には、すでに六人が敵に呑まれた後だったよ……」


「いや逆だぞショーマよ。バーゲスト三体相手に生き残ったスマルトを褒めるべきだ! お前さんは規格外だから驚かんけどな!」


「たまには良いこと言うじゃないかアンバー。結果的にスマルトのおかげで街も守られた」


 

 シアンとアンバーとのやり取りで、エクルも多少は気が楽になっただろうか。


 様子を見ても悲観ばかりではなさそうで、こちらもとりあえずひと安心する。



 目の前まで来てもひと言も発しなかったシャルは、突然顔を上げて俺をじっと見つめた。


 なんと声を掛けていいのか分からないが、その眼差しがあまりに切なげで、彼女を突き放そうとした自分をぶん殴りたくなってくる。

 


「た、ただいま……シャル」


「……お帰りなさいませ、ショーマ様。その、午前中のことはなんと申しますか……」


「それについては全面的に俺が悪かった。ここ最近の魔獣騒動も含めて考え直すから、シャルにも手伝ってほしい。頼めるか?」


「……っ!! もちろんです! 私はどこまでもショーマ様にお仕え致します!」


 

 ただ謝りたかった。

 あわよくばこの先も側にいてほしかった。


 本当にそれだけなのだが、今は和解出来た事が何よりも嬉しい。


 今日は他人の感情によく揺れ動く日だな。



 眩しいくらいの笑顔を見せたシャルに対し、横にいるエクルは何故か放心状態になっている。



 しかしすぐ後で唐突に投げられた質問に、俺は顔を熱くしながらテンパってしまうのだった。

 


「すっごい綺麗な人〜。ねぇショーマちん、このエルフさん、ショーマちんの恋人さん?」


「こっ、恋人っ!? ぜ、全然そんなんじゃないし、そういう風に見たことなんて――……」


「そ、そうですよ! 私ではとてもじゃないですが、ショーマ様に相応しくありません」


「いやシャル、そうやって自分を卑下するな。容姿も性格も――才能だって、シャルを超える奴なんてそうそう見つかるもんじゃない!」


「しょ、ショーマ様……さすがに褒め過ぎです……」


 

 真っ赤に赤面するシャルだが、恐らく俺も負けず劣らずなのだろう。


 今すぐこの場から逃げ出したい。



 アンバーがデカい声で笑う中、急にエクルが俺の右頬を指先でつっついてくる。


 ニヤけた面がムカつくし、なんなんだこいつ……


 

「ショーマちんお年頃だねぇ〜。可愛い顔すんじゃん! いいねぇ〜、青春だねぇー」


「お前にだけは言われたくねぇ。それにさっきまでの傷心はどこいった?」


「二人を見てたら、少し元気が出てきたよ♪ 幸せな気分って伝染するんだねー!」

 

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