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うさぎ耳の少女(1)

 決闘を終えた俺は、情を捨てて絶対的な力になる難しさが、ひしひしと身に染みてきている。


 俺はシャルが悲しむ顔を見たくはないが、美しいエルフの故郷が危険に晒されたあの出来事を、もう二度と繰り返したくない。


 その為の手段を遮る懸念材料は、全部力で捻じ伏せようと考えた。

 だから彼女を突き放した。


 確かにシアンの言う通り、目的と手段が一致していない。

 慕ってくれる彼女を傷付けながら村の安寧を願っても、何一つ伝わるはずがない。



 傷口の血をシアンに舐めさせ、ついでに回復魔法で負わせた怪我を治したところで、ようやくギルドの中に入った。


 掲示板を見たところ魔人の動向を匂わせる依頼は見当たらず、昨日の戦闘を思い返しながら、二階の書庫で書物を読み漁った。


 魔王や四天王に繋がる手掛かりはないのか。

 もし同じ様な状況に陥った時に、有効な魔術や魔法は存在しないのか。


 いくつか気になったものを自分用に書き写し、二時間くらいはその場所にこもっていた。

 


「ねぇショーマくん。シャルさんの所に戻らないのかい? 早く謝りに行った方が……」


「今になって罪悪感に(さいな)まれていてな。シアンこそ大事なセピアを救う方法とか、魔王軍の詳細については見つけたのか?」


「簡単に見つかれば苦労しないよ」

 


 早くも解決策に行き詰まり、肩を落とすシアンを眺めていると、下の階から何やら騒々しい声が聞こえてくる。


 すぐに階段を降りて受付の方に目をやると、長い銀髪の獣人らしき少女が、必死な形相で手当り次第に冒険者に詰め寄っていた。

 


「大変なの! このままじゃみんな死んじゃうの! 一緒に助けにきてよー!」


 

 バニーガール――…いや、うさぎ型の獣人か。


 なにか問題に直面しているみたいだが、みんな死んじゃうとは物騒な。



 シアンはそのうさ耳少女と知り合いらしく、すぐに歩み寄って優しく声を掛けた。

 


「どうしたんだいエクル? まずは落ち着いて、なにが起きたのか話してくれないか?」


「あ、シアンさん! ちょうど良かった! スマルト達を助けに行くの手伝って!」


「スマルトが危険なのかい!? またべレンズの方で異常事態でも発生したの!?」


「バーゲストが出たの! しかも今度は三体もいる! 街に踏み込ませないようにみんなで抑えてるけど、今度はかなり近くなの!」


「バーゲスト!? この前は街から数十キロ南の草原を、僕達で一週間かけて探して、ようやく見つけた元凶の奴を倒したんだよ? それが街の近くに三体も出現するなんて……」


 

 二人の会話から察するに、シアン達が凱旋した際の獲物だった強力な魔獣が、べレンズという街の付近にいるらしい。


 その地域で活動しているうさ耳少女は、パーティメンバーが食い止めている間に、支援要請を出そうと独りでここへ来た。


 そのテンパりようからも、事態が深刻であるのは間違いない。



 しかしこの街最強のパーティでなんとか一体仕留めた相手に、ギルドもそう易々と援軍を派遣出来ないだろう。


 ここは出しゃばるのも悪くないか。

 


「シアン、俺が助太刀に行こう。念の為お前はアンバー達と合流して、戦いに備えておけ」


「任せてもいいのかい? 君なら遅れは取らないと思うけど、敵は上位の魔獣だよ?」


「破壊力には自信ある。反撃を喰らわない内にサクッと仕留めるさ。それに昨日の軍勢やワーム(地底龍)は成果になってないから、俺は未だに末端の九等級(駆け出し)のまま。これはある意味昇級のチャンスだ」


「あのー、誰? この人間の人?」


 

 横で聞いていたうさ耳は、不審げに問い掛ける。


 人間というだけでここでは珍しいのに、一流冒険者の代わりに出向くと抜かすのだから、怪しく見えるのも仕方がない。


 

「エクルは僕達と入れ違いでキサラディを出たから、知らなくても無理ないね。彼はショーマくん。僕より強い冒険者で魔術師だよ」


「シアンさんより!? にわかには信じ難いけどまぁいっか! とにかくすぐに来て!」


「ちょっと待てうさぎ。目的地までの距離と、向こうの状況を詳しく教えろ」


「うさぎじゃない! 雪うさぎ族のエクル!」


 

 苛立ちながら語るエクルによると、人里から南に五キロほど進んだ未開拓地(ダンジョン)でバーゲストを発見し、離脱した彼女だけが街から馬に乗って来たと言う。


 そのべレンズと呼ばれる街もここから約四十キロ先。


 ユニコーンが長距離を走る速度はせいぜい五、六十キロだから、到着まで一時間足らず。


 着く頃には発見から二時間は経っているだろう。


 更に残った冒険者は計七人。

 五等級と六等級ばかりだから、長くは持ち堪えられない。


 折れた短剣(ダガー)の代わりを取りに行く時間は無さそうだな。

 


「エクル、担がれるのと抱えられるのとどっちにするか選べ。俺の足で行く」


「エクルを抱きながら走るって言うの!? 乗馬出来ないならエクルの後ろ乗れば!?」


「選ばないなら肩に担いで行くから。自分で走った方がユニコーンの二倍は速い」


「じゃ、じゃあ抱っこで!」

 

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