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紐付く魔人達の思惑(2)

 二人目の魔人が現れてから、場の緊迫感が急降下した。


 口が悪い奴だとは知ってたけど、ぴーぴー喚くか電撃しか能が無いのかこいつは。


 ボルドーの方は(あね)さんと呼ばれ、ずいぶん敬われているみたいだけど、この魔人達とセピアはどういう関係なのだろうか。

 


「少年、ひとつ言っておくよ。ハーミット(隠遁)は意識に干渉する魔法だ。しっかり見据えられた状態で使っても効果は無いからね」


「あぁ、知ってるよ。俺も使えるからな。あんたを意識から外すつもりはないが、そっちのガサツな方はどうでもいいから、いつでも使えるぞ」


「アンタ……どこまでアタシをバカにしてんだぁ? マジでそのエルフぶっ殺すぞ!」


「シャルはお前より強い。死ぬのはお前だ」


「おーい、そっちはまーだ終わらんのかぁ!? いい加減ワシらも飽きてきたぞ!」

 


 アホな魔人との駄弁に時間を費やしていると、後方からアンバーの大声が聞こえてきた。


 そう言えばオーカーと二人でセピアと交戦中だったよな。


 距離を取って戦ってくれてたけど、あの感じだと結構余裕で片付いたらしい。

 


「あーあ。セピア捕まってんじゃん」


「ほう、クラレットの方は余裕あるんだな。ボルドーは焦りが表立ってるが」


「はぁ!? なんでアンタがアタシの名前知ってんだよ! 変態のストーカーか!?」


「いやバカかお前は? さっきボルドーがお前の名前呼んでただろ。考えて口を動かせ」


「ホントにイラつくなてめぇ」


「あのー、ショーマ様、口喧嘩はやめませんか? ミィも見ていることですし……」


「すまんなシャル。あいつとは犬猿の仲らしい。なんかいちいち(かん)に障るんだ」

 


 話していて分かったが、あれだけの魔獣まで用意していた割に、あまり戦争をしようという意志が感じられない。


 セピアからは何か憎悪みたいなものが垣間見えたけど、ボルドーはそのセピアへの想いが気迫になり、彼女に応えようと必死になってる様子。


 クラレットに至っては、本当に手伝いに来ただけの部外者って雰囲気だ。



 何かおかしい。

 魔人は魔族特有の魔力を持つから、魔獣を従わせたりもすると聞くけど、あの規模の軍勢を単独で集めたとは思えない。


 かと言ってセピアやあのアホ(クラレット)がそれに助勢出来るだろうか。


 脅迫してでも、騒動の動機を吐かせる必要がありそうだ。

 


「ショーマくん。僕はセピアを問いただしに行ってもいいかい?」


「ちょうど頼もうと思っていた。こっちが戦闘になっても加勢は要らないから、セピアから全力で聞き出してこいシアン」


「君には任せてばかりですまないね」


 

 タイミング良くシアンが動いた事で、この場に残ったのはシャルとミィと魔人二人。


 特にボルドーは冒険者など比じゃない実力者だし、半殺しにしてしまった方が早いかな。



 降伏させる手を思案していた俺とは裏腹に、突然ボルドーが潔く両手を上げた。

 


「これはどう考えても、あたしらに分が悪いわね。もうあなたの仲間に危害は加えないから、セピアを解放してくれない?」


「キャラ作りも込みで、ここまでする理由があったわけだな。ボルドー、あんたの行動原理と、協力者を全て吐けば解放してやる」


「あなた達を襲ったのは純粋に敵だからよ。自分達にとっての脅威なら、消してしまいたいと思うのも当然のことでしょ?」


「それはエルフもですか? 私達エルフは攻撃されない限り、魔人と戦ったりしません」


「そ、それでもアタシらの脅威なんだよ! エルフと冒険者が手を組んだりしたら、さすがの姐さんだって手を焼くからな!」


 

 クラレットが喋ると嘘がバレバレだな。

 エルフはやはり無関係で、ボルドーとセピアの狙いは冒険者か。


 ならアホはなんで手伝う?

 


「シャルの質問にも答えてもらえるか?」


「アタシが答えてんだろうが!」


「お前には聞いてない。仮にクラレットが身内だから助力してたとして、それでもエルフを助けただけの俺が、ここまで巻き込まれる理由には足りない。他に指導者がいるな?」


「……実力も探り合いでも勝てないなんて、手を出す相手を間違えたわね」


 

 諦めたボルドーが口を割ろうとした瞬間、手を縄で縛られたセピアが叫び声を上げた。


 

「もうやめて!! ボルドー姉さんもクラレットも悪くないの!! 全部私が悪いの!」


「ボルドー姉さん? なるほど、お前らは予想通り、利害関係で協力してただけではないらしいな。悪事を白状してみろセピア」


「くっ……! 私にとってボルドーは実の姉も同然の人。この山脈で暮らす魔人達は私の仲間で、冒険者共は全員私の敵よ!」


「セピア、ちゃんと説明してほしい。敵ならなぜ僕達と一緒に冒険者をやってたんだ?」


「いいわシアン、全部教えてあげる。だからボルドー姉さんとクラレットを見逃して」

 


 こうしてセピアは自身の過去、そして魔人達との関係を語り始めた。


 悔しさを滲ませながらもどこか肩の荷が降りた表情は、彼女を縛る因果の重さを強く訴え掛けるようだった。


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