紐付く魔人達の思惑(1)
「ボルドー、私はまだやれるわ。心配しなくていいから、そっちを片付けちゃって!」
「セピア――…わかった。こっちの少年とエルフは、あたしがこの手で仕留める」
魔人とセピアが俺達を間に挟んで会話し、傷が癒えて体を起こしたシアンも、本当の意味で目を醒ましたらしい。
セピアと魔族のただならぬ関係性に動揺しつつも、さっきまでより落ち着いている。
「一体いつからセピアは――?」
「シアン、考えてもみろ。一ヶ月前の村の事件から、最初の調査で判明した不自然な山の空気。その二週間後に次の調査隊が出向いたタイミングで、お前らへの遠征の依頼。それらはお前達を消耗させつつ、戦力を揃える準備の為の時間稼ぎだ」
「ショーマくんは気付いていたのかい!? 内通者がいる可能性を、話を聞いただけで?」
「バーゲストだって、普段いない所に出没したからお前らが行ったんだろ? どう考えても、この一帯から冒険者を避ける為の根回しがされてる。ギルド内部かパーティに協力者がいるのは想像出来るだろう」
「全然そこまで考えなかった。遠征で必死だったところに、調査隊が帰ってこないとの報告を受け――……。僕はあまりに未熟過ぎたな」
「ショーマ、すごい! かしこい!」
「ショーマ様は私の村を救って下さった時も、聞いた情報から魔人の監視を見破られました。MP以上に頭脳に優れた方なんですよ♪」
ミィとシャルに褒められると、なんか鼻が高い気分だ。
回復したアンバーがオーカーと共にセピアを警戒する中、ボルドーと呼ばれていた魔人はじっと俺達だけに集中している。
一撃喰らえばマズイ事を理解した上で、まだ何かを待っているようにも見える。
こちらからカマをかけて、相手の出方を伺ってみるか。
「おい魔人、今回俺を狙った理由を話そうか?」
「……なにが言いたいのよ」
「お前の仲間に、先日エルフ達を襲った魔人もいるのだろう? あの日圧倒的な力で計画を阻止し、危険認定された俺は、急遽シアン達と共に最大戦力で消すことにした。違うか?」
「それは本当ですかショーマ様!?」
「あの山脈は聖者の森にも繋がってるみたいだし、魔人同士が結託していても違和感無い。セピアが俺を同行させたがったのもその為だろう」
「くっくっく……。いやらしいほど深く弄るのね少年。それを知ってどうなるのかしら?」
「いやなに、その辺に隠れてても無駄だと表明してるんだよ。仲間にシャルを出し抜けるほどの力が無いから、隙を見てお前がシャルを狙い、その後隠れてるあの魔人が俺に仕掛ける算段だ。俺の方が不意討ちが有効だからな」
みるみる曇っていく敵の表情を見ると、中々に爽快である。
完全に図星だったのだろう。
しかし次の敵の行動には意表を突かれた。
前触れもなく飛んできた雷撃に俺は反応が遅れ、魔力の流れを読めるシャルだけが応戦する。
その一連のやり取りまでが敵の布石だった。
【風の加護】
「俺の事はいい、シャル!」
俺の周囲に防御魔法が展開されたと同時に、意識が逸れたシャルを狙ってボルドーが拳を振りかざす。
障壁を間に張るどころか、困った時のエミッションさえ間に合わない。
諦めかけた刹那、太陽光を超える強烈な閃光が辺りを包み、その場の全員が目を塞いだ。
「シャル、逃げてー!」
「ミィ!? 今の光はミィがやったの?」
「フラッシュー! ミィ、フラッシュした!」
「くそっ! 光魔法か! ブラウニーに戦いを邪魔されるなんて、想定外だったよ!」
光属性の低級魔法か。
暗闇を照らしたり目眩しに使う、光に適性がある魔導師が習得するフラッシュ。
ミィを連れて来た事が思わぬ形で実りとなった。
帰ったらご褒美をあげよう。
視界も戻ってきたところで、さっき不意討ちをくれた魔人を睨み付ける。
やはり聖者の森で見た奴と同一人物で、赤っぽい褐色の肌と野性的な面構えが、魔族であると強く印象付ける。
よく見ると胸だけ結構デカいな。
「てめぇ! 変な目でアタシを見んな!」
「はっ、はぁ!? 変な目ってなんだよ!」
「おっぱい見てたのわかってんだよ! 人間の分際でアタシを性的な目で見るとか、マジでふざけてんだろ! 絶対捻り殺す!」
「……ショーマ様ぁ?」
「よ、余裕あるねショーマくん。僕も男だから、気持ちは分からなくもないよ……?」
「いやもう黙れ! お前ら全員黙れ! 俺はあんな獣みたいな女に興味はねぇ!」
【テラボルト】
【バリアウォール】
ワンパターンな奴だ。
あいつの電撃など、俺の分厚い魔力の障壁を突破出来るわけがない。
「姐さん! 早く殺しましょうこの変態!」
「落ち着きなよクラレット。その少年はあなたに興味が無いって言ってるでしょ?」
「ボルドーの姐さんまでぇ……」
「もうハーミットは使わなくていいのか? お前らに勝ち目があるとすれば、姿を隠して騙し討ちするくらいだと身に染みただろ?」
「うるせぇ!! 死ね!! 変態人間!!」




