表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/79

反逆と猛襲(2)

 魔獣の大軍に続いて、頭の弱そうな(ワーム)まで繰り出してきた魔人。


 魔獣使いの称号が似合いそうな女だけど、まだ余裕綽々(しゃくしゃく)といった表情がかなり気になる。


 本職は魔導師か肉体派の戦士なのだろうか。


 とにかく油断は出来そうもない。



 裏切り者のセピアは見ているだけで手足を動かさず、魔人もまた手駒をことごとく討たれておいて、冷や汗ひとつかかない。


 敵陣は用意周到な連中だし、ここにきてまだ切り札でも残しているのだろうか。



 これまで感じていた違和感を紡ぎながら、敵が戦況をひっくり返す可能性を模索していると、剣を構えたシアンが魔人の方へと歩み出した。



エアフロー(風属性補助魔法)



 シアンが詠唱を唱えると、携える刃を気流が包み込み、剣先から伸びる風圧だけで芝が刈り取られていく。


 あれは風属性の補助魔法なのか。



 だが不用意に近付くのは危険極まりない。


 俺は怒りに震える男を制止しようとする。


 

「おいシアン、その魔人はお前の手に余るぞ。お前はセピアの尋問でもしていろ」


「君のせいか……君がさっきのワーム(地底龍)みたいに、セピアを操っているのか。今ここで君を討ち果たし、必ず仲間を取り戻す!」


「虎くんはずいぶんとご立腹じゃないか。いいよ、あたしがいい夢見させてあげるよ」


 

 俺の声はシアンの耳にまるで届いていない。

 逆に相手の挑発に憤りを増し、飛びかかれる距離まで詰め寄ってしまっている。



 前後に構える敵を殺すのは簡単だ。


 しかし下手に動いてシャルとミィに被害が出たらどうする? 


 アンバーとオーカーも戦闘態勢だが、むしろこの状況、俺にとっては人質と変わらない。



 悩んでいる間にシアンが魔人に刺突を繰り出し、後方からは聞き慣れない魔法名が響き渡る。



「君は絶対に許さない!」



ランドピラー(中級土属性魔法)

 


 地面の揺れを感じた俺は、シアン達一行を捨てる決断を下す。



 正面の戦闘に気を取られた隙に、背後のセピアが魔法で一網打尽にする策略だろう。


 そう察した瞬間に動き出したこの体は、ミィの付与魔法のおかげでかつてないほどの速度で移動し、肩に掴まるミィごとシャルを抱えてその場から離脱した。

 


「しょっ、ショーマ様!?」


「間一髪だった。しかしあいつらは――」


「え……? あぁっ! シアンさんとアンバーさんが……!?」



 

 空中で振り返ったさっきの戦場は、平原から突き出る無数の土の針山に変化している。


 ひとつひとつのトゲが二メートル以上あり、安全な隙間は極僅か。


 ランドピラー、恐ろしい魔法だ。



 一方、魔人に剣を向けたシアンは力無くぐったり倒れ込んでおり、腹部から出血している。


 想像するに刺突を躱された後、敵の拳で逆に貫かれたのだろう。


 魔人の手が血に染まってるのもそれで説明がつく。



 セピアの土魔法の犠牲になったアンバーは身動き取れずにいるが、オーカーはなんとか攻撃を免れたらしい。


 

「シャル達がああならなくて良かった……」


「ショーマ様、お二人共まだ息があります! 彼らを助け出しましょう!」


「え? あ、うん。わかった」

 


 もっとつらそうな顔をするかと思ったが、案外勇ましいなシャルは。


 どっち道、生きてるなら見殺しにする気もないけど。



 俺は銃弾状にしたエミッションを魔人の女に向けて連発し、距離を取らせたところでセピアにも放った。


 魔人には当たってもいいぐらいに撃ってみたものの、身のこなしが良くて小さい弾ではダメらしい。


 セピアには威嚇射撃で勘弁。


 

「なんだいこのちゃっちい攻撃は。さっきのとんでもないのを撃たないのかい?」


「人を消し飛ばすのは趣味じゃない――」

グローヒール(上級回復魔法)

「――オーカー、アンバーは降ろせそうか?」


「くっ! トゲが深く突き刺さって抜けません!」


「わかった、俺がやる。シャル、シアンが目を覚ますまでここで防御魔法の準備を」


「はい! お任せ下さい!」

 


 魔人とシアンの間に割って入り、シャルを降ろしてシアンの傷は癒した。


 オーカーは下からアンバーを押し上げようとしているが、ドワーフの太い胴体から四肢にかけて、複数の針がブスりといってるから、どうにも助けられないらしい。


 俺はエミッションで長い針を全て土台から薙ぎ払い、落ちてきたアンバーを受け止めると同時に、突き刺さる異物も根こそぎ引っこ抜いた。


 本当にこの魔術は便利だわ。

 


「うっ……ショーマ、助かったわい……」


「黙れアンバー。今回復魔法をかけてる最中だ。オーカー、セピアを拘束できるか?」


「は、はい! ランドピラーの反動がある内なら、自分にもいけます!」


「頼む。俺は魔人の方を――」


「その子に触るんじゃないよ!!!」


 

 オーカーがセピアの方へ走り出した途端、俺とシャルの様子を伺ってた魔人からの咆哮が、大気を鈍く振動させた。


 先程までのすました表情から一転、敵意が剥き出しになっているけど、ようやく手札を出し尽くしたのか?

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ