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初仕事への道すがら(2)

「ショーマくんとシャルさんは、馬には乗れるかい? あそこの厩舎(きゅうしゃ)ユニコーン(一角獣)を借りて、ここから先はそれに乗っていくんだけど」


 

 大通りを北に進んだ奥に、大きな厩舎が見えてきた。


 ユニコーンはバイコーン(二角獣)と違い魔獣ではなく魔物に属される獣で、瘴気の無い所で飼い慣らせば、角が生えてる以外は馬と変わらない。


 元々気性が穏やかで、体格や魔力もそれほど大きくないからこそ、人の暮らしに馴染んだのだろう。



 魔術師でもユニコーンに乗ってる人を何度か目撃していたけど、俺は乗った事がない。


 移動手段くらい事前に説明して欲しかった。

 


「俺に乗馬スキルは皆無だぞ。シャルは?」


「私もありません。ユニコーンは草原を好み、森の中には棲息していませんでしたので……」


「了解したよ。では馬車も一台借りようか。馭者(ぎょしゃ)はアンバーに務めてもらうから安心して」


「ハッハー! シアン、ワシが乗馬が下手だからって、都合良くあしらうではないか!」


「最初からそのつもりだっただろう? 僕はアンバーの馭者としての腕を買ってるんだよ」


「なるほどなるほど! なるほどな!」


 

 本当にこいつが操縦する馬車に乗って大丈夫かよ。

 安心どころか、むしろ不安しかないぞ。



 この国では冒険者の移動用に街の端々に厩舎を設営しているらしく、今回もギルドからの指示書を持ったシアンが、あっさりとユニコーン四頭と馬車一台を借りてきた。



 リーヴァルの街を北に抜けると、草原を挟んでキッサ村がある。


 更にその村と平地を越えた先に、目的地である山脈が見えてくるそうだ。


 その距離およそ三十キロメートル。

 徒歩で行くには確かに遠い。

 


「よし、みんな、馬には乗れたかい?」


「なぁシアン。もう一頭借りれば済むのに、なんでセピアを後ろに乗せてるんだ?」


「僕は接近戦しか出来ないから、敵が現れたらすぐに降りてしまうんだよ。その時セピアに手網を任せられれば安全だろう?」


「それならシアンが後ろに乗った方が効率良くないか? 入れ替わる手間も無いし」


「いちいちうるさいですよショーマさん。こういうのは男性の顔を立てるべきでしょ?」

 


 なんでセピアが怒ってるのか知らないけど、要するにシアンに格好つけさせてるって事か。



 出発した馬車は中々に疾走感があり、同じくらいの速度で自分の足を動かすよりも余程気分が良い。


 ガタガタして多少乗り心地が悪いが、車みたいな感覚だ。



 シアンとオーカーは乗馬を得意としているのか、前を走りながら上手く先導している。


 アンバーもまぁ……割かし普通に馭者をこなせてるな。

 


「なんか良い雰囲気ですね、あの二人」


「ん? シアンとセピアか?」


「はい。シアンさんがセピアさんを大切にしていて、セピアさんも嬉しそうに見えます」


「ガッハッハ! ああ見えてセピアは一番新しいメンバーなんだぞ! もう二年も前だがな!」


「二年か。一番古株はお前かアンバー?」


「あぁ、ワシとシアンは駆け出しの頃から組んでて、もう七年になる。 オーカーも五年前からやっとるから、どいつも長いよな!」


 

 そうなるとこいつら、年齢的にも結構上か。


 下手すればシャルくらいの可能性もあるけど、ドワーフなんて見た目全員ジジババだからな。

 


「ショーマ、シャル、仲良し! もっと仲良し! だからへーき!」


「ありがとうミィ。あなたからそう見えているのなら、私はすごく嬉しいですよ♪」


「ガーハッハッハッ! お前さんらは誰から見ても、そーんな風にしか見えんわ!」


「老け顔をこちらに向けろアンバー。約束通りデカい鷲鼻を粉々に砕いてやる」


「あーん? ワシが振り向いたら馬がすっ転んで、大切な嬢ちゃんが怪我をすんぞ?」


「……ちっ。あとで覚えておけよ貴様」


「ショーマ様、落ち着いて下さい。もしご不快でしたら、私もそう見せないよう努力をしますから。どうか怒らないで下さい」


「馬鹿言え、シャルは何も悪くない。冷やかすジジイに腹が立つだけだ。このままでいい」


 

 ふざけている間にキッサ村に到着し、見渡す限りの広大な土地に感心した。


 ただ広さはあっても農地や牧場ばかりで、人も家も数える程しか見えない。


 だから魔物の群れが降りてきても、人的被害がなかったのだろう。

 


「ここで少し馬を休ませるよ。みんなも今のうちに気を引き締めておいてくれ」


「シアン、あれが例の山脈だな?」


「そうだよショーマくん。ここからなら残り十キロくらいだから、走っても行けるね」


「それなら一足先に走って見てくる」


「ちょっと待ってくれ! 独りで行くのは危険だ。焦る気持ちもわかるけど、ここは全員で行って全員で戻ってこよう」


「偵察だけだ。俺のクレアボヤンス(千里眼)でも、せいぜい五キロ先しか見えない。届く位置まで行ったら、そこで待ってるから」


「クレアボヤンス? あの千里眼系の魔法か。なるほど、それがあればこの時間も有効に使えるな……。わかった、歩いて行こうか」


 

 最終的に馬を置いて全員で向かう事になった。


 俺一人で走って往復した方が早いのに。

 

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