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初仕事への道すがら(1)

 大人の階段をひとつ上り、その瞬間を子どもに見せ付けてしまったすぐ後、俺はもうひとつの目的を果たす為にその場から離れた。


 シャルとミィを置いていった手前、ウジウジ考えている時間も無い。

 早く済ませなければ。


 すぐに目当ての物が見付かり、購入して二人の下へと戻った。


 

「ショーマ様、どこに行かれてたのですか?」


「あぁ、このアイテムが欲しかったんだよ」


「革製の手袋……ですか?」


「紋章が刻まれた、魔術武具のグローブだ」


 

 リーヴァルの魔術武具店でたまたま見付けた手袋は、握力を強化する紋章付きだった。

 かなり興味が湧いたけど、その店で売られているのは荷物運びに役立つ程度の物で、強化される度合いが弱い。


 もっと戦闘向けの質の高い物は無いかと尋ねると、キサラディのギルド近くの姉妹店には有ると教わった。

 だからこの日に購入すると決めていたのだ。


 色の種類も多くあったものの、俺が選んだのは至極無難に黒と白である。

 派手なのは苦手だし。

 


「こっちの白はシャルの分な。使ってくれ」


「えっ!? いえ、頂けませんよ! 私には高価な魔術武具など買う持ち合わせがありませんから」


「何を言っている、金など不要だ。少しでも戦いに役立つ物を装備してくれた方が、俺にとっても気休めになる。だから活用して欲しい」


「ショーマ様……ありがとうございます。大切に使わせて頂きますね」


「あぁ。――ミィはすまん、サイズが無かった」


「んー? ミィ、手袋してるー!」


 

 思いのほか時間を食ってしまったから、急ぎ足でシアン達を追い掛けた。


 グローブの使い方と効果は歩きながら説明したが、魔力を込めるだけだし、シャルならあっという間に使いこなせるだろう。


 

「その様な効果が……。ですが私が握力を高めて、ショーマ様のお役に立てますかね?」


「握力の強さは腕力全体に影響する。その腰に提げてるナイフでも、いつも以上に思い切り振れるから、魔物討伐が楽になるさ」


「それはすごいですね! しかしショーマ様がお使いになるのは、片方だけなのですか?」


「前に確かめたんだけど、エミッションは手のひらの密着した部分から破壊する。発動すればグローブに穴を開けてしまうんだよ」


 

 悪魔が刻印した右手の術式は確かに便利だ。


 しかしどうせなら利き手じゃない左手にするべきだったと、今更ながら後悔している。


 短剣(ダガー)で戦う時だけ、右手にもグローブを嵌めよう。



 そうこうしている内にシアン一行の背中が見え始め、リーヴァルの大通り手前で追い付いた。


 振り返ったシアンは、待ってましたと言わんばかりの表情だ。


 

「お、用事は済んだのかいショーマくん?」


「遅くなって悪いな。もう万全の状態だ」


「ガッハッハー! ショーマよ、エルフの嬢ちゃんとコソコソするとはやりおるのう!」


「黙れアンバー。そのデカっ鼻をへし折るぞ」


「おー怖い怖い! 怖いのぅオーカー!」


「そうですね……。鼻を折るなんて恐ろしいこと、自分じゃとても考えつきません……」


「なんでオーカーが震えてるのよ。ショーマさんが折りたいのはアンバーの鼻でしょ?」


「だってセピアさん、ショーマさんの()が本気だったんですよ……?」


 

 このパーティ、本当に気持ちの移り変わりが激しいな。


 さっき少しだけキリッとしたかと思えば、もう漫才を再開している。


 これで一流の冒険者達なのだから、もう分からんな。

 


「ごめんねショーマくん。僕達のパーティ、やる時はやるんだけど、普段は割かし緩いんだ」


「戦闘中は真面目にやれるなら構わん」


「それは安心してくれ。これでも三等級と四等級のみで揃った、キサラディギルド所属では最強のパーティだからね」


「そう言やショーマの名前、ショーマ・キサラギだったよな。キサラディと似とるな!」


「アンバーさん。自分、本当にアンバーさんが鼻折られそうな気がして、心配ですよ」


「ガッハッハ! ワシの鼻は硬いぞ!」


 

 話の腰を折りたがるアンバーにもだいぶ慣れた気がする。

 呆れもせず、無心で聞き流せるようになってきた。


 パーティで一番の実力者がシアンだとして、その次に強いのは誰なのだろうか。


 少し後ろに距離を取り、シャルに耳打ちした。


 

「シャル、この中で魔力的に気になる奴はいるか? 俺には実力の違いが読めそうにない」


「ドワーフのアンバーさんはだいぶ魔力が多いですね。ショーマ様以外の人間には到底望めない量です。次に高いセピアさんも、獣人では見たことないくらい強力な魔力を持ってますよ」


「セピアもそんなに常識外れな力か」


「アンバーさんが獣人の二倍程度と想定して、セピアさんはその一回り小さいくらいです。人間でしたら高位の魔導師に匹敵するかと」


 

 シアンは腰に剣、アンバーとオーカーは背中にそれぞれハンマーと弓を備えている。


 その点セピアは短剣を携えているものの、道具が入っているであろう大袋を背負うくらいで、到底近接戦向きな装備ではない。


 むしろ魔術師っぽい装いなのも、魔法メインで戦うからと言われれば納得だ。


 それにしても、アンバーの背負う鉄槌はバカでかくて重そうだな。

 

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