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他に方法は……

「待って下さいショーマ様! 私のMP(マジックポイント)ならまだ十分にあります。心配要りませんから」


「いや万全を期しておくべきだ。エルフは休んでも微々たる量しか回復しないし、この先いつ戦闘に入るかも分からないのだから」


「……ショーマ様は些か過保護が過ぎます」


「大事な仲間を気遣うのが過保護と言うのなら、俺は過保護で構わない」


「大事な仲間……。念の為伺いますが、MPを回復するにはショーマ様の()()を飲む必要があるんですよね? 別の方法などは……」


「いや? 俺の体液ならなんでも回ふ――」

 


 待て待て待て。

 俺は今なにを口走ろうとしている?


 血ですら限界ギリギリの許容範囲なのに、他の体液なんて飲ませられるわけないだろうが。



 この事実は極秘案件だ。

 シャルにだって言えない。

 


「ショーマ様、他にも手があるのですね?」


「……なんでもない。俺の勘違いだ」


「ショーマ、俺の体液? なーに?」


「ミィ! だまらっしゃい!」


「体液、だまらっしゃい? それなーに?」


 

 うわぁ……。

 ミィが漏らしてしまったせいで、シャルがものすごいジト目でこっちを見てるよ。


 まぁ俺が口を滑らせたのが悪いんだけどさ。

 


「体液であれば、MPを回復出来るのですね?」


「……一応そのはずだな。体内でMPポーションが生成されてるらしいから……」


「別の体液ですか……。そうなると――」


 

 何か考え込んでいたシャルが、急に顔を真っ赤に染めてモジモジし始めた。


 一体どんな想像を膨らませてるんだこのエルフは。

 


「た、例えばなんですけど、その――…口付けなんかでも回復は可能でしょうか?」


「口付け!? そりゃたぶん効果はあるけど、キスしてMPを回復させると言うのか??」


「そ、そうですよね! 私がショーマ様とキ、キスするなんて、恐れ多過ぎますよね!」


「えっと、そうではなくて、俺なんかとキスするとか、さすがにシャルだって嫌だろ?」


「い、いえ……嫌だなんてそんな……」


 

 恋愛経験の無い俺でも、シャルの満更でもなさそうな様子にはすぐに気付いた。


 俺だって男だから、(ファースト)キスの相手が美少女エルフだなんて、誇らしく思ってしまえるレベル。


 しかしお互い好き合ってるわけでもないのに、MPを回復する為だけにできる行為ではないだろ。



 そんな困り果てた俺を見兼ねたのか、シャルが少し落ち着いて自分の主張を始めた。


 

「私はただ、ショーマ様が痛い思いをされるのが嫌なだけなんです。緊急事態でもないのにそこまでして頂くなんて、あまりに申し訳なくて……」


「悲しい顔をしないでくれ。俺だってシャルの安全を第一に考えた選択をしている。それがシャルを苦しめるのなら意味がない」


「ショーマ様、私はどうすれば……?」


「じゃあこうしよう。血を飲むのとキスをするのとで、シャルが負い目に感じない方を選んでくれ。俺はどちらでも構わないから」


 

 自分で言っててバカかと思った。


 さっきからシャルが拒んでいるのは俺が傷を負う事だけで、キスを拒否する内容はひと言も発していない。


 選択権を彼女に委ねる事によって、俺自身の責任を放棄しようとしているだけなのか。


 とことん意気地のない男だ。



 案の定、シャルは頬を紅潮させながらも、真っ直ぐな目で即答した。

 


「それならキスがいいです。ショーマ様となら……本当に、嫌な気持ちはありません」


「――じゃあ目を瞑ってくれ」


 

 ここまで女性に言わせれば、俺だってもう腹を括るしかない。



 シャルの両肩に手を乗せ、若干開いた口を見つめると、心臓が飛び出しそうになった。


 そこで閉じていた瞼がゆっくりと上がり、潤んだ瞳で何かを訴えてくる。

 


「ショーマ様、私、初めてなんです」


「そうか。俺も初めてだからよくわからん」


「そうなんですね。私は幸せ者です♪」


 

 綺麗に微笑んだシャルを見て、自分の中の何かが弾けた。


 そのまま唇を重ね、入ってくる舌に自分の舌を絡ませる。


 シャルの感触がすごくくすぐったくて、言い様のない快感を覚えていた。



 これがキスなのか。

 恋愛感情などまるで無かったのに、急に彼女が愛おしく思えてくる。

 


「あー、ちゅーしてる! ショーマ、シャルとちゅーしてる! なんでー?」


 

 身体強化使ったままだから、ミィの重さを忘れていた。


 と言うか途中から存在そのものを忘れていた。


 かつてない緊張だったからな。

 


「ミィ、なんかすまん。これは大切な儀式みたいなものだから、絶対に黙っていてくれ」


「んー? んー、ミィ、わかったー!」


「シャル、どうだ? もう回復したよな?」


「………え? は、はっ、はい!! も、もう今ならいくらでも魔法が使えそうです!」


「落ち着けシャル。使わなくていいから」

 

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