勧誘された冒険者(2)
シアンを含め、獣人三人とドワーフから成るこのパーティ。
俺には強さを図る指標が無いけど、シャルの様子を見る限り、魔力的にはそこまで飛び抜けているわけでも無さそう。
皮肉を言って器だけでも見ようとしたが、全員がキョトンとしていて反応が薄い。
ほとんど相手にされていない感じか。
見るからに豪快そうなドワーフだけが、口を大きく開けて笑い出した。
「ガッハッハッ! シアン、面白い奴を連れて来たのう! ワシは気に入ったわい!」
「アンバー、彼らを仲間にしたがったのはセピアだよ。セピアの見込みを評価すべきだ」
「そうだ、そうだったな! セピアもよー見つけたな! こんな面白可笑しい男をな!」
「私が見つけたのは面白そうな人じゃなくて、強そうな人ね。これじゃ褒められた気がしないわ」
「あのー……自分達を見て呆然としてますけど。そこにいる人間さんもエルフさんも……」
ドワーフから始まった雑談は、シアンとモコモコした髪型の女獣人のツッコミで騒がしさを増し、ひょろっと背の高い男のひと言で俺達に視線を集められる。
危険地帯に出向く実力者達とは思えない、なんとも間の抜けた劇団員みたいな連中だ。
緊張感が無い。
あちらと俺の様子を交互に伺っていたシャルが、俺の腕を軽く掴んで宥めるような声を出した。
「ショーマ様、お怒りになられてますか?」
「いや、怒ってはいない。ただ呆れている」
装備はしっかりしている。
メンバー全員、今日このまま戦闘に出ても問題無さそうなくらい、万全の装備だ。
だが一流の戦闘員達が、戦いの前にもバカ騒ぎしているとは思うまい。
ただただ呆れている。
協力の必要性を感じないくらいに。
「今朝、俺の仲間が怪我をしていた。場所はキッサ村で、原因はコボルトの襲撃らしい」
「それは本当かいショーマくん!?」
「シアン、こんな嘘を吐いて俺になんの得がある。俺達はすぐにでも向かいたいのだが」
「そうだったのか。すでに魔族が動き出していたとは……。そうとも知らずに気分を害してしまい、本当に申し訳ない」
シアンの謝罪を筆頭に、その場の全員の表情が一変した。
少しはマシな面になったと安堵していると、可愛らしい声で耳打ちされる。
「ショーマ、レン、ショーマの仲間?」
「当たり前だろミィ。ミィの仲間は俺とシャルの仲間だ」
「ミィ、ショーマ好き!」
「ねぇ、君の肩に誰か乗ってるの?」
見えない何者かと会話する様子を不審に思ったのか、すかさず質問してきたのは女の獣人だ。
幸いこの場所に人は少ないし、本棚に隠れて周りの視線を浴びにくい。
紹介するなら好条件だと思っていた矢先に、ミィが自分で魔法を解いて姿を現した。
「ミィ! ショーマの仲間!」
「驚いたわ。ブラウニーが人前で堂々としているなんて。それに今のは光属性魔法のトランスルースよね? 相当珍しい魔法よ?」
女獣人によると、ミィの魔法は光属性に適性のある魔導師でも、ほんのひと握りしか使えないらしい。
周囲の光線を魔力で改変し、自身の体を透過させて姿を消しているそうだ。
そもそも光属性自体、圧倒的に適性者の少ないものだから、ブラウニーの中で珍しい奴と言われるのも当然だろう。
「俺はショーマ・キサラギ。こっちはシャルトルーズ。そしてミィ。俺達は以上だ」
「あ、ごめん。僕以外は紹介してなかったね」
「ドワーフがアンバー、羊女がセピアだというのは分かった。ひょろ長いのは知らん」
「えっ? ショーマ様、先程の会話だけで把握されたのですか? 本当に驚異的な記憶力ですね」
「僕もびっくりだよ。アンバーとセピアは当たり。セピアが羊型なのも間違い無いよ。もう一人は馬型獣人でオーカーって言うんだ」
「あ、はい。自分がひょろ長のオーカーです。主に弓と足の速さを使って戦います」
全員での軽い挨拶を終え、シアンが受付で今回の調査依頼を受諾しに行った。
もちろんミィには再びトランスルースを使ってもらい、出来る限り騒ぎの種は無くして。
多少時間は掛かったものの、ギルドは俺とシャルの能力を確かめるまでもなく、さらっと同行を許可したらしい。
シアンが認めたからだとしても、色々と緩過ぎないか? このクリミナという亜人国は。
「お待たせ。二人はずいぶんと軽装備だけど、準備する為の時間は必要かな?」
「それなら先にリーヴァルに向かっててくれ。やっておかなきゃならない支度があってな」
「ん? この街のことなら僕達で案内するよ?」
「いやシアン、構わない。すぐに追い付く」
シアンのパーティを先に進ませ、俺はシャルを連れてギルドより街の奥に踏み込んだ。
シャルは不思議そうな顔でついて来ている。
「ショーマ様、どうされたのですか?」
「ここへ来る時、身体強化の魔法を使っただろう? 減ったMP回復させなければな。だがあいつらの前で手首を切るわけにもいかん」




