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不吉な予兆とブラウニー(2)

 シャルが指差す狭い路地には、薄暗い中に三人の小さな人影が見えた。


 大きさは二リットルのペットボトルより少し大きいくらいだろうか。


 三人の内の一人は俯いてぐったりしており、他の二人が倒れそうな体を支えている。

 


「あの子達がブラウニー族でしょうか?」


「たぶんな。顔も幼い子どもみたいだが、体が他の人類種より遥かに小さい」


「ひとりの子が怪我をしているみたいです」


「そう見えるな。ちょっと近付いてみよう」

 


 驚かさない様にゆっくりと路地に入ると、ショートカットの茶髪を(ひるがえ)したブラウニーの少女が、こちらを見ながら黄色い声を上げた。

 


「アンリノット!」

 


 聞き覚えのあるその単語に、俺は思わずシャルと顔を見合わせる。

 


「先にシャルが話し掛けてみてくれ。俺では怖がらせてしまう可能性があるから」


「わかりました」


 

 慎重に距離を詰めたシャルはその場にしゃがみ込み、目線の高さを近付けているみたいだ。

 


「あなたはアンリノットを知っているんですか?」


「ミィ、アンリノット、お手伝いしてる!」


「そうだったのですね。部屋にあったお手紙も、あなたが書いてくれたのですか?」


「ミィ、お手紙置いた! 危ないの、ここ!」


 

 思わぬタイミングで有力な情報源と出会えたな。


 だがそれよりも先に、怪我をしている少年の容態が心配だ。

 呼吸が荒いし、足元には血が垂れている。


 ここからじゃ背中しか見えないけど、どうやら腹部の傷を手で抑えているみたいだ。

 


「後ろを向いたままでいい。回復させるからちょっと失礼するぞ」

グローヒール(上級回復魔法)

 


 患部の度合いを見れない分、ありったけの魔力を回復魔法に注ぎ込む。


 ぼんやりと光った少年の体が周囲を暖かに照らし、集束していくと同時に頭を上げた。


 傷は無事に治ったようで、すぐに出血が無い事を自分の目で確認し、両脇にいるブラウニー達と飛び跳ねている。

 


「アンリノットの人、ありがとう! レン、お腹治った! 血、もう出てない!」


「よかったな。それよりよく俺達に気が付いたな。そんなにあの店で見てたのか?」


「ミィ、外からも見てた! 中からも見た! 昨日、今日、お姉ちゃんとお兄ちゃん、アンリノットで一緒に寝てた! ミィ、見た!」


 

 そのままブラウニー達の話を聞いてみると、アンリノットの掃除を終えたミィは、明け方に街を歩いていた。

 そこに怪我をしたレンと、レンを支えるランがやって来て、故郷の危険を知らせたという。


 ミィはレンとランを路地の奥に隠れさせ、アンリノットの一室に手紙を残し、薬草や回復薬を探しに行くところだった。

 ちょうどその時にシャルに発見されたのだった。


 レンが怪我をした理由はやはり魔物。


 何かから逃げていたコボルトとキッサ村で出くわして攻撃され、村には良い薬が無いからリーヴァルまで来たそうだ。



 エルフ以上のMP(マジックポイント)を持ちながら、コボルトに重傷を負わされるのか……


 

「話は分かったけど、なぜ応戦しない?」


「ラン、コボルトやっつけた。コボルト、ビックリして走ってて、レン、コボルトのこと気付かなかった。ラン、レン助けにいった」


「出会い頭にレンが襲われた感じか。その窮地のレンをしっかり助けて、ランは逞しいな」


「ラン、強い。でもミィ、もっと強い」


「ミィ、強くない! ミィ、お掃除好き!」


「ミィはこれから予定はありますか? 私達はギルドに行った後、山脈に赴いて脅威の元凶を絶つつもりです。もしミィが仲間の下に案内してくれれば、私達で助けに行けるのですが」


「ミィ、いつも朝寝てる! でもミィ、一緒に行く! 故郷、みんな、助けに行く!」


 

 機転を利かせたシャルが良い提案をしてくれたおかげで、心強い案内役まで仲間にできた。


 ブラウニー族は臆病らしいけど、あのアンリノットに入り浸ってるだけあって、ミィは好奇心が強そうに思える。



 そろそろ再出発しようかとしていた時、ミィが呪文を唱えた。


 

トランスルース(光透過)


「おぉ、すごいな。完全に透明人間だ」


「本当ですね! ショーマ様のハーミット(隠遁)とは違い、魔力や気配はすぐ側に感じますが、視覚的にはどこにも姿が映りません」


「ミィ、珍しい。ランとレン、トランスルース使えない。透明人間、なれない」


「ミィ、これで行く! こっそり行く!」

 


 何も無い所から声が聞こえ、俺のズボンを引っ張っている。


 肩に乗せろと言うので乗せてみると、見た目通り軽かった。

 三キロくらいかな。



 ランとレンに別れを告げると、振り落とさない程度に駆け出し、ギルドがある街を目指した。


 魔物が今朝も村に入ってるという事は、もう一刻の猶予も残されてない。

 


「ここが街の境目か。向こうは簡素な柵に囲まれた住宅街っぽく見えるな」


「そうですね。急ぎましょうショーマ様」

 

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