終わりは静かに手を振って、そして一緒に休みましょう
はい、連続投稿最終日です、楽しんでいただけたら嬉しいです
byエル
「アレックス、これからお前は余の息子ではない、お前の猶予は三年しかない、励め
三年でダメなら、断頭台がお前を待つ、お前が、余の息子であることを願う」
ざわざわと辺りがざわめきます、ハードルが、ものすごく高いです。
賭けるものは、己の命です
そこで声がかかります、メルさんです。
「お待ちください国王様」
「ふむ、何かな、キャプテン・メル」
「はい、ユウナ嬢の事です、王はお許しになりましたが、あれは紛れもなく
不敬罪に当たるでしょう、それを此の儘にして置くのはよろしくありません」
「ホォ、ではどのようにする?」
「はい、いかに罪とは言え、彼女は巻き込まれただけです、あまりキツイ
罰はよろしくありません、ゆえに私の故郷で労働を課したいと思います」
そう言ってブライアン先生の方を見て、ニヤリと笑いました。
それを聞いたブライアン先生は、ショックで固まっています。
流石です、流石すぎます、彼女の故郷にも年頃の娘さんはいます。
きっと大いに、その恋愛話は語られることでしょう。
ユウナさんは、え、え、え、といった感じでびっくりしています。
ユウナさん自身も王都に残ってなどと考えていたようですから。
軍の方達と訓練などしていたようです。
ですからこっそりと、教えてあげました。
そう、ブライアン先生は本日をもって魔法学校を退職、メルさんの
故郷であるプレストライト領で教鞭をとってもらうのです。
少しずつ発展してきたプレストライト領、子供もちろんいますので
教育は大事です、次世代を担う子達ですから。
本人も話を聞いたときは、かなり乗り気になってくれました。
もっとも、もう逃げられません、さてさて面白くなりました。
国王様は「さし許す」そう言って、ユウナさんを見て大笑いしました。
ユウナさんは、ニコニコです、そして何度もメルさんに頭を下げました。
そんなことをやってるうちに国王様は王妃様を伴って去って行かれました。
兵士たちが殿下を、いえもう殿下ではありません、アレックスを連れて行きました。
他の子たちも親御さんに連れて行かれました、もちろん私の弟も母様に連れて行かれました。
そしてユウナさんですが先生と少し話した後、自分の胸に、先生の顔を押しあてて
さらに頬にキスをされました。
なんという大胆さでしょうか、ちょっと見習いたいものです。
その後、軍の三人に連れて行かれました。
徐々に徐々に静かになってゆく学校のパーティー会場。
私の横に、いつの間にか、お父様が立っておられました。
そして、静かに言いました「すまなかった、エル」
エルとは、私の愛称です、父様と母様と、そしてメルしか呼べません
知らない間に私は涙を流していました。
そんな私を父様は黙って頭を撫でてくださいました。
暫くして落ち着いた頃、メルが、側にいてくれたことに気がつきました。
慌てて聞きます「メル、伯爵ってどういうこと?」聞いてみたのですが
メルは、ニコニコと笑うだけで何も言いませんでした。
あと黙って、お腹をぽんぽこと叩きます、何のことかわかりません。
そして私と手をつなぎます。
もう片方の手は父様に握られました。
そして二人に連れられて、パーティー会場を後にします。
他のみなさん方も、三々五々に帰っていきます。
顔色を真っ青にしている貴族たちは、どうやら殿下に肩入れしていたようです。
何人かの女の子達が手を振ってくれました。
勿論、お返しをします、また一週間後に会いましょう、そんなふうに言って別れます。
一週間後にお城でパーティーがあります、今日のやり直しです
費用は王家が持ってくれるそうです。
その中で貴族の女の子に手をつながれている男の子
例の土下座をした平民の子です。
どうやら、副委員長の貴族の女の子に捕まってしまったようです。
ご愁傷様、お幸せに、そういって分かれます。
「ご愁傷様は、ひどいと思いますけど」などと女の子が言っています。
クスクス笑いながら、そしてお互い手を振って別れました
今日は本当にいろいろありました、正直疲れています、早く帰って
休みたいのですが一つだけ気になることがありました。
ひどいことにはならないと思いますがユウナさんのことです、大丈夫でしょうか。
それが口に出てしまったようです、お父様が全く心配ないと笑いました。
「まぁさすがに戦争はおこさせませんが、大丈夫ですよ」そう言って私の頭を
ポンポンと叩きます。
「彼女の父と私と国王と商人そしてメルセラ嬢の父親とは同級生でね、
彼女に何かあったら彼女の父が飛んできますよ、文字通り戦争になるでしょう」
「今頃ユウナ男爵令嬢は王城で昔話を交えて国王と話をしている頃でしょう」
そんなふうにお父様が話してくれました。
それを聞いて安心しました、ところでメルさんはなぜ同じ馬車に?
ちょっとわかってて意地悪に聞いてみました。
「ええーひどい、私、裏方で結構頑張ったんだよ
そんなわけで一番の癒しを所望する」
「公爵家でお泊まり、これは決定です、そして妹ちゃんと弟ちゃんと
遊ぶんです、そしてエルと一緒に寝ます、エルは私を癒す義務があるのです」
それを聞いてクスクスと笑ってしまいます、返事はもちろんokです
馬車はガラガラと私のうちに進んでゆきます、学校には宿舎があるので
しばらくそこで過ごしていたのですが、今日はゆっくりと休めそうです。
メルが私を癒やしと言ってくれたように、私にとってもメルは癒しです。
そんなことを思いながら、彼女の肩に頭を置いて目を閉じます。
こうして怒涛の一ヶ月と、惨劇の卒業パーティーと呼ばれる日は
幕を閉じたのです。
byメル
「ふぅ、こんな事エルに聞かせられません、国外追放を装って
王都から着の身着のまま出した後、救出を装って監禁するつもりだったとは」
それを教えてくれた、公爵家の長であるマークス卿に話す。
公爵家に帰ってきたエルは、軽い食事をとった後、バタンキュー
遊びたがっていた弟と妹を抑えて、なんとか部屋に戻した。
後ほど代わりに私と遊ぶと約束させられた、もちろん弟である
彼エリオも一緒だ、彼は母親に、泣きながら怒られて相当こたえたらしい
すぐに反省の意を見せ、父につき従うことを約束し、今は部屋にいる。
その時にマークス卿に書斎に来てくれと言われ、今話している最中だ。
「監禁など、ていの良い言い訳に過ぎぬ、簡単に言えば男たちの
欲望のためにいる存在にされるところだった」
怒りを抑えた声が部屋に響く、当たり前だろう大切な娘を!
話を聞いたときは私も、嬲り殺しにしてやりたいと思ったところだ。
今でもそう思っているけれど、さすがにそれはできない。
「この国は周りの国から孤立しているから、あまりそう言った事は
無かったのだ、だが今回のことでゼロではないということが分かった」
「いろいろ調べた結果、何十人かの人間が奴隷として売り出されている」
「君の知ってるとおり、この国は魔物が多い、だから奴隷になっているなど
誰も思わなかったのだが・・・既に用意をしている、後は摘発するだけだ」
「国も完全に本気になってますね、潰れる貴族もいるかな? 」
「一週間だ、正直に言えば、多少の咎めで済む」
「一週間て、パーティーが行われる日、それに合わせたわけですか」
「そうだ、この国は独立を保って500年以上だ、どっかの国が
ちょっかいかけてこないとも言えない、港は一つだけだから
そこを押さえれば、色々解かることもあるだろう」
「とりあえずアレックスたちは、どうなります? 」
「アレックスは王宮の地下にいる、ここだけの話だ、それ以上は聞くな」
「了解です、では他の者は、どうなります」
「マイヤスは学校の地下、魔術師たちの集まりに入っている」
「魔術師たちの集まり?」
「あの魔術学校の中でも指折りの変人たちがマイヤスを囲んでいる
変人と言うより変態だな」
「うわーあんまり愉快じゃなさそうですね」
「ゴルナは、家から脱走した、どうやらあの男爵令嬢を探しているらしい
東の森のほうに向かっていった」
「バカか、あいつは、あのクズ、計画立てた主犯ですよね確か」
「その通りだ、父親は泣き叫んで、国王にすべてを投げ渡して
自害しようとしたらしい、親の心子知らずとはこのことか!」
「計画を立てたんでしょうけど、それをバックアップした貴族もいる? 」
「たしかにいたが・・・・・・」
ちょっと考え込む私、「もしかして、もう捕まえて・・・・・・」
「・・・・・・笑」
「あの、黙り込まないでください、そこで、にこっと笑わないでください、怖いです」
「バカの事はもういいや、もう一人ブランディ君はどうなりました」
「ブランディか!ふふふ、ははははは」
「聞くなって事ですか、本当にもう!」
「いやいや違う、すまんな、あまりにも愉快で笑ってしまったよ、
国王に許可を取ってな、父親と一緒に、アルザス山に山籠もりだ」
「アルザス山って、王都から出て、すぐにある、あの魔物
ワンサカの山ですよね」
「その通りだ、笑えるだろう」
思ってた通りとちょっと違うけど、まあこんなものか、てゆうか
「エリオ君はどうしますか?」
そう思って聞いてみたところ
「あいつ本人が嫌がったから婚約者を用意しなかったのだが
とりあえず、ちょっと厳しめの女の子を用意しようと思っている
まぁ私の前にいる子が奴の婚約者になってくれると嬉しいんだが」
「遠慮します、エリオ君にはちょっと嫌われてるみたいだし
大好きなお姉ちゃんとった女ですからね」
「貴族とはそういうものなんだから、と言っておいたが
とりあえずは私の後を継ぐために頑張ると約束したからな
父親としてはまぁ上出来か、あと少し色々経験を積ませようと思っている
あんな簡単に騙されたんでは、公爵家は、受け継げん」
そんなことやってたら、ノックが三回、公爵家夫人の登場
パーティーの時はエリオ君をバシバシ叩いていた人、エルの友人である
身分が違う私でも、優しくしてくれる人だ
どうやらタイムオーバーらしい、さて行きますか公爵に挨拶をして
部屋を出る、さぁ、かわいい子供たちと遊んでエルのベッドで一緒に寝ようかな
はい、読んでいただきありがとうございます。
byタケゾウ