14話 幸運な男
「にゃははは!自分でww掘った穴にはまるなんてw。こいつ馬鹿だにゃww」
そう言うのは、変な場所から入って来てリュウにしぼられたエイ。
あの後セブンさんを連れてギルドへと来ていた。敵がいるだろう場所の地図を持っているのはロックス様だからだ。セブンさんが言うには、何もないところからの特定は流石にできないとの事。
「それで?そのセブンとやらは何をしてるんだ、あれは」
ロックス様が座りながらセブンさんの方へと見る。
セブンさんは渡された地図をフォーと共に壁へと張っていた。
「ロックス王子はご存じありませんか?私の故郷に広く伝わっていたダーツという遊びなのですが」
「遊び?おい、エイ!あいつらの場所が特定が出来るというから信用してあれを貸しているんだぞ!」
「心配は無用ですよロックス王子。特定とまではいきませんが…まあ、大まかな場所が分かったらラッキー程度で考えてください」
「私は確かに言ったにゃ!どうせ運が絡むならこいつがいいって!」
そう言われ、渋々とロックス様が焦る気持ちを抑える。
どうせ運で左右されている作戦だ。その不確定要素を出来るだけ少なくするための今。
「私が生まれ持ったスキル【幸運】。これで何処に刺さるかは神のみぞ知るという事で」
そしてセブンさんは手に持った小さな棒を地図へ向けて放つ…、
「リュウさん、言われてたものが出来ましたけど…あれ?私お邪魔でしたか?」
セブンさんが放った小さな棒は、いきなり扉が開けられた衝撃で何処かに行ってしまい、壁に張っていた地図すらもそこから落ちていく。
扉を開けた本人は何が起きたか分かるはずもなく、顔を真っ赤にしたリュウを戸惑いの目で見ている。
「扉を開けるんだったらまずノックだろうが!」
そのままの勢いで入って来た受付嬢に詰め寄っていこうとするが、
「少し…待ってください」
凛としたフェリスの声に静止する。フェリスは落ちてしまった地図を広げるとある場所を指す。
「ここ、何かが刺さった跡があります」
そこはロックス様が目星をつけていた場所のどこでもない、ただ住宅があるだろう場所。
「フェリス様、お言葉ですがあのセブンって野郎が示した場所は何もない。失敗ですよ、結局これも運任せだったんだ、仕方ありませんよ」
「いや…可能性はある」
とロックス様が口を開く。椅子から静かに立ち上がり、刺さった場所と目星をつけていた場所とで線を結んでいく。
確かにリュウが言った通り失敗だったかもしれない。だが、失敗だとも言い切れない答えがそこにあった。
「こりゃあ、綺麗に全部の所から同じ距離ですね」
描かれた線は全て同じような長さを持っている。これならロックス様が何年もかけて調べ上げても、3か所から目標を絞れなかったのにも納得がいく。つまるところ、奴らは全てに繋がっている場所を拠点としていたのだ。
あのメイド服の女と出会った場所は地下、だったら3か所が地下で繋がっている可能性もある。でも、
「どうやって気づかれずに侵入するんですか、そこに?地下にあるとするなら、分散して逃げられたら結局必要な労力は同じですよね」
しかも地上にある建物と地価は無関係の可能性もある。その場合、地下への侵入が物理的に不可能だ。
「それは私がいるにゃ!」
その疑問に答えたのは意外にもエイ。自信満々に胸を張って、渾身のドヤ顔を見せる。
「私がいれば百人力という事を見せてやるにゃ!ということで王子君、報酬追加でよろしく!」
「分かったお前に任せる。だが、この場所も可能性があるというだけの話だ。それを確信に変えるだけのものはあるのか?」
「それも…う~ん、これぐらいならたぶんいけるにゃ!」
「それなら信じよう、報酬は元の2倍でいいか?」
「にゃ!」




