12話 心当たり
「スリーとシックス?関係ないにゃ、あんな陰気な奴らの事なんて」
エイは体中に縄を巻かれ、身動きが取れなくなっている。トウは未だに刃物を向けているが、ロックス様が手で制している。
「だったらそいつらの居場所ぐらい知ってるんじゃないか?同じギルドのメンバーだろ」
「そんなん知らないにゃ!元々時の教会だって、個人主義のギルドだからそいつらとの関わり合いなんてないのにゃ」
「ロックス様、こいつはもう安全ですぜ。元々そんな奴じゃねえですから」
「…チッ。分かってる…トウ放してやれ。それから絞り出される事はねえ」
そう言うとトウはエイに撒かれていた縄をほどく。
エイには害意が無い。それは縄からほどかれている今を視ても、それが分かる。けど、
「本当に分からないんですか、エイさん。これらの場所に心当たりは」
そう言って広げられていたあの地図を見せる。
「ここまでわかってるのにゃら、総当たりでやっていけば当たるんじゃないかにゃ?」
「そうすると逃げられる可能性、こっちの消耗が考えられるからだ。外した瞬間、面倒くさいことになるのは避けたい」
「そうにゃね~」
そうやって少し考えた後に何かを思いついたのか、こちらを見て指す。
「そうにゃ!お前がいるにゃ!」
「え?」
いきなりそんな事を言われても困る。いくら適当な事を言われたって、流石にこれは当てられる自信はない。それにこの人とはあまり繋がりが無いはずだ。心当たりなんてないとは思うけど。
「違う違うにゃ。奴らはくさっても時の教会だから尻尾なんて簡単には出さない。だったら結局は運だと割り切って動くしか無くなるにゃ」
簡単に時の教会のメンバーだと分かられてしまった人が言うのは何処か説得力がないが、少しは納得してしまう。だが、運で選ぶのならなんでこちらを期待した目で見てくる?
「お前には期待していないにゃ、ハヤト。お前の知り合いに適任な奴がいる。…あいつのことだから正体を言ってると思うけど…セブン、面白い固有スキル【幸運】を持ってるにゃ!今回はアイツが適任だにゃ」
セブンさん、時の教会の一員。それもミカヅチさんが誰に殺されたかを知っている人…。
「それで?そいつは何処にいるハヤト?」
「それは…分かりません」
残念だと言わんばかりの表情をされる。
本当だ。セブンさんに渡された紙には、確かに場所が書かれていた。けど、その場所にあるのはただの空き地だ。
この前気になって一人で行ったことがあったんだ。記されていた場所に行っても、何もなかった。まるでそこだけが避けられているかのように。もちろん、そこにはセブンさんは居なかった。
「にゃ!?アイツは自分の場所を教えていないにゃ?」
「いや、そういうわけでも…」
「兎に角だ、そいつは望み薄だな。本当ならもう少し情報を知りたいところだけどな…フェリス、明日ここにまた来てくれないか?ロンロとかいう小僧は俺が面倒を看る。リュウ、今日はここに泊まらせてもらう」
「ええ、いいですけど…」
「大層なもてなしは望んでない。用意もしなくていい。それとエイト!」
「エイにゃ!」
「エイ、お前も此処に残れ。協力してもらう」
そう言うとロックス様は立ち上がり、部屋から出ていこうとする。扉を開けようとした時、後ろ姿からだったが決意に満ちた声で言う。
「明日だ。アイツらに時間を与えるわけにはいかない。長くなればなるほど、害される者たちは増えていく」
「それならカイン兄様にも協力を」
「兄さんは駄目だ。あの人が動けば目立ちすぎる、それに…兄さんと姉さんには迷惑をかけすぎた、あの二人には心配をかけたくない。もちろんお前もだフェリス、明日はここにいてくれ…必ず守る」
バタンと扉が閉まる音と共に、今日のこの集まりは終わりとなった。
「どうしますかフェリス様?それとハヤト、ここに泊まってくことも…」
「ハヤト、貴方は…」
「少し行きたいところがあるから、フェリスだけでもここで」
「…だったら私も行きます、貴方の、ハヤトの主ですから」
行きたいところ。居るかどうかは分からない。けど、
『会えたらそれはラッキーですね』
一度しか行っていないのだ。セブンさんが現れないとは決まっていない。




