07話 もう一人の義兄
ロックスと名乗った男と共に、その場を後にし共にある場所へと向かっていた。
場所というのはフェリスの下へとだ。逃げろと言ったものの、何処にとは言っていないが見当はつく。普段暮らしている場所に戻るのは危険だから、知人がいる場所へと以前話していたのだ。
「で、何処に向かってるんだ?」
「あそこですよ、あそこ」
指さす先にはあのギルド。以前喧嘩祭りというのに参加してから、個人的つながりを持ったところ。最近ではリュウと模擬戦をして、修行代わりとしている。
ここなら設備も伴っているし、信用できる人たちが多くいる。拠り所が少ない俺たちにとっては、とても安心できる。
ギルドの入り口をくぐると、慌ただしい人たちが右往左往している。その中心にはロンロとフェリス。
「よかった…」
「驚いたぞ、ハヤト。いきなりフェリス嬢が子供を連れて来たんだからな。それも片腕が無くなっているな」
胸をなでおろしていると、横からリュウが話しかけてくる。が、何時ものように気兼ねなく話しかけてくるものの、隣にいる人を見ると目を丸くする。
「おまっ、何でこんなところにロックス様がいるんだよ!ここは王族の集会所じゃねえぞ」
ロックスの驚きようから本当にフェリスの兄らしい。そう思い始めると背中に嫌な汗をかいてしまう。
無礼な点は無かっただろうか。むしろ失礼な事しかしていなかった気もするが。
「別に俺のことは気にするな。それで妹は何処にいる、それに連れて来たという子供は?」
「あ、あっちにいる…います!…ん?なんだおまえその目は」
いきなり言葉遣いを改め、見た事もない様な感じになっているリュウを見て若干ひいていると、その目を見てかイラついた顔をみせて襟をつかんでくる。
「よし、お前はこっちに来い!あっ、ロックス様はお気になさらず」
そうか、とロックス様は言うと人が集まっている場所へと進んでいく。
一方こっちは言うと
「いいか、お前はなフェリス様の騎士だから分かんないだろうがな、ギルドには気を付けないといけない人ってのが居るんだよ。しかも俺のギルドはロックス様の傘下だから尚更だ」
そうなのか。確かにこういう事情とは無縁だ。
「それにロックス様は気難しい人って聞くしな…。お前も気をつけろよ」
★
「フェリス様、そろそろ休憩をとられては…」
「かまいません。止血具合はどうなっていますか」
此処に来てからフェリスはロンロの治療を絶えず行っている。腕を失うというのはそれ程なのだ。それを手伝っているとはいえ、ここまで無理をしている人を見るに堪えないのだろう。
「どけ」
そんな人ごみの中を突っ切るように入って来た男がいた。言わずもがなロックスだ。
「妹、そこをどけ、変わる」
「大丈夫で…お兄様!?」
ギルドの人かと思ったフェリスはロックスの姿を見ると驚く。
驚いたフェリスをよそに、ロックスは気絶しているロンロの下へ行くと、無くなった腕に触れるように手をかざし何かを呟く。
「お呼びですかロックス様」
すると突然長髪の女性が後ろに現れる。女性はロックスに首を垂れると指示を待つように待機する。
「トウ、この子供はお前らと同じだと思うか?」
トウと呼ばれた女性は数舜考えるそぶりを見せ、ロックスと同じように手をかざすと、
「そうですね、方向は違うと思いますが、根本的なものは同じかと」
「そうか、下がれ」
「はい」
姿を消したトウを気にせず、ロックスは懐から一本の注射器を取り出す。それをロンロに打ち込む。
「ロ、ロックス様!?何を」
「見ていろ」
見ていろと命じた様に周りが静観し始めると、ロンロに変化が起こる。
無くなっていたはずの腕が生え、ロンロの呼吸が落ち着き始める。
「お兄様これは…?」
「あとで説明する。おい、はやく毛布かなんかを持って来い。戦える奴は外を見張れ」
ロックスは指示を飛ばすと、フェリスを連れて応接間の方へと歩いていく。
途中、リュウとハヤトを連れて。




