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神すら見通せないこの世界で  作者: 春山
第3章 復讐の王子
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04話 遭遇

「質が悪く、一定基準にも満たしていない。…これでは」

そう言うと目の前の女は改めてこちらを見る。

「それで、お客様方は何をしにこちらへおいでになったのですか?よもやこれの知り合いか何かですか?」

「妹から…足をどけろ!!」

「待てロンロ!」

ロンロは腕を失ってる。が、今は怒りで痛みなど気にしている暇はないのだろう。迷いなく進んでく姿勢にはこの状況では危険が付きまとってしまう。

それにあの女の目、

「こちらにはとても素晴らしいものがありますね」

「…ひぃ」

本当に一瞬、ロンロへと視線を動かした瞬間に女はロンロの前へと移動していた。

「どうですか?私と共に…」

「伏せろロンロ!【竜閃】!!…ッ!?」

すぐさまロンロを連れて距離をあける。

予想はしていたつもりが、今の一撃を女は見ずとも、洗練された動作で避ける。

「荒事は控えていただきますか?私にもこれから仕事があるので」

優雅な、それもディアンナ様の屋敷で見た事のあるお手伝いさんの様に、一つ一つの仕草が完成され、同時にとても戦いを生業とする者とは程遠い動きだ。

「フェリス、ロンロの痛みを和らげることはできる?」

「ええ、できます」

「よかった。それじゃあ此処から逃げてくれ、…カヤは任してくれ」

どうするとは言えない。今もカヤは地べたを獣の様にもがき、明らかに手の打ちようがない。けど、依頼を、お願いを聞いたからには何もしないまま終わるのは自分が許さない。

その障害の際たるものが目の前にいる女だ。今も何を考えているのか、こちらの会話を邪魔せずに静観している。

そして女は話がまとまったのを確認してか、口を開く。

「申し訳ございませんが、此処を見た者は返してはいけないと主人から仰せつかっていまして。それに貴方がどこの王女かは興味ありませんが、その腕につけているブレスレットを置いていってはくれないでしょうか?」

「そんなことさせるか!」

剣を抜き斬りかかる。しかし先ほどと同様に全て避けられる。しかも時折拳を構え、突き出してくる。

正拳突きの様な一撃はかろうじて反応することは出来るが、どうしてもおかしい点を感じてしまう。女はスキルを使っていない、それも戦闘とは程遠い装いで戦っている。だが、繰り出される一撃は素の力では説明がつかないレベルだ。

「素晴らしいです名も知らぬお客様。私の攻撃をことごとく避ける、ぜひお迎えしたいほどの人材ですが…無理でしょうね」

「ああ、生憎それは不可能だな」

息を整え睨み合う。いや、息を荒げているのはこっちだけ、相手は少しも乱れていない。それに、

「格好いいですね。後ろの方々を守りながら戦う、そのおかげで二人は逃げ切り、残すは私だけ、と」

「降参して、カヤを元に戻してくれたら見逃すこともない」

そう言うが女は今まで無機質だった顔に微笑みを携え、

「お客様方はこれを回収しに来た。という事はこれを持っている限り、必ずお客様方は目の前に現れるという認識でよろしいでしょうか?」

「当たり前だ」

「でしたら…」

女はくるりと後ろへと振り返ると無防備な背中を晒す。予想外の行動に戸惑うもチャンスはチャンスだ。取り押さえようとするが、目の前に黒い壁が現れた。

「これは何処かと此処を結ぶもの。例えばこの様に」

女は地べたにいたカヤを掴むと黒い壁へと投げる。

「この様に何処かへと転送されました。これでお客様方は人質を取られたも同然という事です」

「だったらそこに入れば…」

「逆もまた然り、そうは思いませんか?」

「グッ!ノーフェイス!?」

軽率だったと言わざる負えない。黒い壁に突っ込もうとした時に出てきたのは白い手、そしてそこから更に出てきたのは顔が無い化け物。

「よくご存じで。彼らが3体もいればお客様を押さえつけられるでしょう。…さて!ゲートも閉じましたし、私は逃げた二人を追うとします。それではごゆっくりお楽しみを」

「待て…!クソッ!」

どう考えても今すぐにこいつらを倒して、女を追うのは難しい。それが分かっているからこそあの女は目の前をゆっくりと歩いているのだろう。

女が一礼し、扉を開ける。そこには、

「行かせるわけないだろう、どう考えてもな!」

「え?」

見た事もない男が扉を開けると立っており、女へと斬りかかるのだった。

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