02話 侵入
「あそこ。朝来た時は人がいたけど…」
「今は居ないな」
「でも本当にあそこに!」
「分かってる」
誰かを誘拐するなら見張りぐらい立てるものを今はたててない。一見すればただの空き家か留守かと見間違う様な静かさだが、分かる。しかも厄介なものと関わっていることも分かってしまう。
ドアの横に取り付けてある窓から見える人形の様なもの、あれが今こっちを見ている。普通なら気のせいだと思っていただろうが、あんな風貌のヤツを以前ディアンナ様の屋敷で見た事がある。確か名前は、
「ノーフェイス…」
どうしてあれがあるのかは分からない。見間違いかもしれないが、確かに今も視線を感じ続けている。
ロンロが此処に来た時に居た奴らは門番ではなく、今あそこにいる化け物こそが門番なら簡単に突破できる。
「フェリス、ロンロここで待っていてくれ。大丈夫、絶対にお前の妹は救ってやる」
我ながら少し無謀な策だと思う。かなり自分に都合が良いように考えている節があるが、気にしないでいこう。
「【鎌鼬】」
【傲慢】の力か風を段々と上手く操れるようになった末の自作スキルだ。そこまで遠い相手には使えないが、近くの相手なら壁越しでも使える。
風が刃と化してノーフェイスの首を飛ばす。無論ここで終わるとは思っていない。アイツは首を飛ばしても動き続ける事が厄介だ。だが一瞬の隙を作ることは出来る。それにわざわざ見えている位置で攻撃してやったのだ、次の相手の行動は読める。
ガシャァン、と窓ガラスが割れる音と共に首を片手にノーフェイスが出てくる。
「【風の大槌】。…【破鎚】!」
少しの隙を使って上に移動し、出てきたところを風の大槌で潰す。いかに耐久力があるとしてもこうまですれば立ち上がりはしない。
「よし、中に入るか」
ノーフェイスが一体だけとも限らないが、今出てきたのは一体だけだ。それに誘い出す際に音を立てたのだ、誰か来てもおかしくない。それが狙いでもあるのだが。
中に入り人気も何もかもが無い建物へと入る。
しばらくすると壁が動く音と共に話し声が聞こえてくる。
「クソッ、何だよまたアイツが暴走でもしたのか!?アイツ気味わりいからきらいなんだよ」
「そうだよなぁ、でも羽振りは良いし、俺たちにとっては最高の職場だからな。不満は言ってらんねえよ」
「でもなあ」
声からして二人の男が近づいてくるのが分かる。
「それにしても朝来たガキをどうする気かねえ。アレも気味悪くて仕方ねえ」
「そうだな、手っ取り早くあの人に渡して終わっちまおうぜ」
ガキという言葉からロンロの妹がまだ此処に居る事が分かった。だったらやるべきことは簡単だ。
「ん?」「お?」
影から飛び出し、鳩尾に一発。それで二人は気絶して、こいつらが来た場所に行けばいい話だ。
「ここがそうか…」
本来は何もない様な所に下へと続く階段があり、その先にはまた別の扉があるのが見える。
「こいつらは…鍵は持ってないか。よし、降りるか」




