01話 お願い
「妹を…カヤを助けてください!」
目の前にいる自分より幼そうな男の子が地面にぶつかるぐらいの勢いで頭を下げる。
「分かった、いいよねフェリス」
「はい、ハヤトならきっとそう言うだろうと思って連れてきましたから」
話を戻すとフェリスがこの男の子を連れてきたところから始まる。男の子は声を上げながらあるギルドから追い出されていた所をフェリスに保護されたらしい。
事情を聴くと、ギルドに頼みたいことがあるから行ってみれば、依頼するためのお金が無く門前払いされていたようだ。男の子の身なりからかなり貧しい生活を送ってきたことが分かる。
「まずです、ロンロ君がギルドに依頼しようとしていたこと詳細を話してくれませんか?大丈夫ですよ、こう見えてこっちのお兄さんはとても強いですから、どんな依頼でもやってくれますよ。ほら、まずはこれでも飲んで」
そう言ってフェリスは一杯の水を出す。男の子、ロンロは相当喉が渇いていたのかコップを掴むと一気に飲み干し、息を整えてから語りだした。
「妹が変なんだ。ちょっと前までは何時もみたいに元気だったんだけど、最近になって何と言うか気味悪くなって…」
「例えば?」
「何時もなら困っても食べない様な腐った食べ物を美味しそうに食べて…お兄ちゃんこれ美味しいねって言ってきて。それと、夜になったらフラッと何処かに行くようになっちゃって、それで」
それから語られた妹の状態というのはとても異様だった。普通の人なら絶対にやらない、まるで精神に異常をきたした異常者のような行動だった。
「今日の朝になって、朝早く起きてるなと思ってたら、カヤが何処かに向かってて。後ろからこっそりついて行ったら怖い人たちが立ってる所に入って。それで」
「自分一人じゃあ何も出来ないからギルドに助けをと?」
こくんと首を縦に振り答える。
いい判断だ。そのまま無謀にも突撃していたらおそらく殺されていただろう。そうしたらこの事は明るみに出てこなかった。
「何か、そうカヤちゃんが変わった心当たりはある?」
「…そういえば白い服装を着た女の人が、、そうだ!確か偉い人の近くに同じ格好している人がいた!その人がお金になるから、君たちの為にもなるからって僕たちを建物に招待した。…でも僕は何もされてないのに、なんで」
偉い人の近くにいた人と同じ格好。それが本当だとしたらこの国の上の人たちが関わっている可能性もあるけど、それを間違わさせる可能性だって。
そんな感じに考えていると「ハヤト、ハヤト」とフェリスが耳打ちをしてきて、
「多分あの子が言ってるのってメイドさんだと思うんですけど…メイドさんってこの国の文化じゃないですから、この国にそんな格好をしているひとなんていませんよ」
という事はこの国ではない者の仕業である可能性も出てくるわけだが。取りあえず、
「分かった、取りあえずそのカヤちゃんが入っていったていう所に乗り込もう。…そうすると誰か助けに来てくれた方がいいけど」
知り合いといえば祭りを開催していたギルドぐらいしか居ないし、此処からでは少し遠い。だったらバレない様に潜入していくのが無難だ。
「あ、ありがとうございます。お金は何とかします、だからカヤを助けてください」
「大丈夫、お金はいらない。こっちは慈善事業でやってるからね」
「ロンロ君はどうしますか?私とここで待つという事もいいですが」
「いや、僕もいきます」




