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神すら見通せないこの世界で  作者: 春山
第2章 進むべき道
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幕間2

今よりはるかに昔、まだ人と神と呼ばれる存在とが近しかったころ。人と神に選ばれたエルフは争う事はせず、もちろん人同士の争いも無かった。

そんな世の中に存在したごくごくありふれた村。そこは貧しいわけでもなく豊かでも無かったが、人々は幸せそうに暮らしていた。

そんな村に生を受けたある男も、他の者と比べるもなく幸せ者であった。ただ一つ違う点を挙げるとするならば、その男は何も欲しがらなかった。更に豊かな環境で暮らしたいという欲や、当時の人男性たちなら誰でも持っていただろう強い人に成りたいなんて願望すらない。

ただ朝起きて畑を耕し、家族と食卓を共にした後に明日に備えて寝る。そんな一日を長く続けていた。そんな男の生活がある出来事で変わる。

村一番の美形の持ち主であった女性が特異な力を発現し、丁度付近を通りかかったエルフの男性に見初められたのだ。男の幼馴染であり、誓い合ってはないものの周囲からはいずれは結婚するだろうと言われていた者が村を発つことになったのだ。周囲からは何処か憐れむ感情を向けられていた男は、その時すらもその女性に対する欲求すら湧かないでいた。しかし、何故かその夜はよく眠れないと口にしていた。


時は流れ冬の季節が過ぎ、春になる。見初められた女性は突然村に帰ってきて、自らの妊娠と夫となった人物を村の人たちへ紹介していった。周囲が賛辞の言葉を言う中で、男はある感情に襲われていた。

別にその女性が欲しくなったわけでは無い、ただ少し女性が手に入れた力というモノがどれ程のものかが気になっただけ。使う事が出来れば面白いだろうという感情からの欲求だ。

村で宴会を開いていた傍らで、男は使ってみようとする。女性が、エルフの男が使っていた時の格好、仕草を真似しながら。

出来た。出来てしまった。男の手からは風が吹き荒れ、水が溢れ、雷が迸る。それをひけらかすわけでもなく、男は満足して宴会場へと帰ろうとする。が、その場面を一人の村人に見られていた。驚きと喜びが混ぜった表情で近づいてくる村人を見ると男は別の感情に、欲求に襲われる。

「人に使ってみたらどうなるだろうか」。近づいてくる村人の頭を両手で掴むとさっきの要領で力を行使する。

風は村人の鼓膜を破り、水は気道の場所へと入り込み溺れさせ、最後に雷が全身を迸り止めをさす。後世の殺人を生業とする者が見ても鮮やかな手口だと絶賛するだろう。それほど鮮やかな、あっけない初めての殺人だった。

男はピクリとも動かない村人を見ても何も感じない。だが、今まで抑えてきた欲求があふれ出るかのように体を動かす。

「次は村に放ったらどうなるか?」「尊い者だと言われているエルフは?」「もしかしたら神様だって…」。抑える事の出来ない欲求に襲われながらも、男は宴会が開かれていた中央へと向かっていく。初めは覚束ない足取りだったとしても、近づくにつれて何時もの様に歩けるようになっていき…



「レジャの一生譚、いつ見ても飽きないよ」

誰も居ない空間でエクシエルは誰に話しかけるわけでもなく、一人で読書をしていた。傍には大量の書物が積み上げられていて、どれも誰かの名前が入れられている書物であった。

エクシエルは慣れた手つきでパラパラとページをめくり、あるページでめくっていた指を止める。そのページは明らかに他とは違く、誰かが走り書きした字で様々な事が書かれていた。

「『我々はこの男が手に入れたものを【強欲】と呼ばれるものだと認識し、この力を世界の意志によるものだとする。これと同等の力を持つものはあと最低で6つあるだろうと予測され、どれもが我々に届きうる。この力が現れる瞬間を転換期と呼び、我々は転換期が全て終わるまで雲隠れしようと思う』か…」

エクシエルはそのページを掴むと、破り捨てる。

「こんな事があったから僕が造られて、神様は隠れて。そんな悠長なことしてたら引きずり下ろされるかもしんないのに…」

破り捨てたページはいつの間にか何処かへと消え、エクシエルの片手には違う書物が握られていた。タイトルには『エクシエルの一生譚』と書かれ、厚さは他のものと比べてとても薄い。

「そろそろ出番かな。だったら右目を回収しないとだな…」

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