第2章 幕間
「ねーセブーンー」
「どうしたんですか?」
ガーデン内にある宿泊所。そこでセブンとフォーの二人は各々の場所でくつろいでいた。フォーはベッド、セブンは本を片手に椅子でと。
「ハヤト、いい人だったねー」
「そうですね」
「でも良かったの?この前セブンが持ってた紙に書かれてたよ、ハヤトの名前」
「いいんですよ、私はあの依頼を受けたわけじゃありませんし」
「ふーん」
どの様な依頼書だったかはフォーには分かってはいないが、セブンには分かっていた。むしろ時の教会にある依頼書のほとんどがそれだ。
「なぜですかね。あの人とはこれから先で助けられる、そんな気がしてましてね」
「ねーねー!それじゃあまたすぐに会えるの!?」
「分かりませんが…ハヤトさんが私たちと頼って頼られる関係性を築けたら、ラッキーですね」
さて、とセブンは言って読んでいた本を閉じると近くにある机へと置く。
「セブン毎日それ読んでる…そんな面白いの?」
以前フォーは気になって読んだことがあったが、一ページともたずに辞めた記憶がある。小難しい単語や文、見ていて楽しくない絵が描かれていてフォーには何が面白いのかが理解できないでいた。
「ええ、面白いですよ。…フォーもいつかは楽しさが分かりますよ、きっと」
他愛のない話を続け、共に食事をとって明日に備えて就寝する。そんな毎日を過ごさせることこそがセブンのかけがえのない願いであり、この願いは目の前でくつろいでいる少女にも向かっている。
そんなささやかな願いを叶えることさえ出来なかったセブンにとって、今の生活は色の無い世界と同等だった。だが、
(ハヤトさんならどうにかしてくれる気がする、そんなこの気持ちが現実になったら…ラッキーですよね)
誰にも聞かせる気のないその思いはセブンの心内でとどまり、いつもと同じようにフォーと寝床を共にする。
「さあ、もう寝ましょうか。明日も早いですよ」
「だったら寝る前にこの絵本を読んでほしい!」
「いいですよ、その本は読み慣れていますから」
フォーが取り出した一冊の絵本を読み聞かせながら、セブンの一日は過ぎていく。
願わくば、フォーが忘れ続けて欲しいという想いを込めて。




