25話 祭りを終えて3
「師が何者かに殺されて、師の代わりに自分がなれるかどうか心配だったと…で、本当は何なんだ?」
「え?」
「あのなぁ、こっちだってだてにギルドマスターやってるわけじゃねえんだよ。確かにそれは悲しむべきことだ、不安にも駆られるだろう。だがな、お前の中で少なくとも答えは出ているんだろう?」
「それは…」
否定は出来ない。決勝でリュウと戦った時に決意は固めた筈だった。代わりになるならないではなく、なるしかないこの状況。それに、どんな相手でも時間稼ぎぐらいは出来るはずだ。だけど、
「敵に…なんか問題があるのか?」
「それは…はい。友人と呼べる奴が入っているギルドと関係が…」
セブンさんは本当に身を案じているのかもしれない。けど、心のどこかで疑ってしまう気持ちがあるのも確かだ。こんな状況なんて考えもしなかった。
「その友人とやらの場所は分かってるのか?」
「それは…まあ」
「だったら最初から一択しかねぇだろうが。そいつに会いに行け、そして見極めろ。話はそれからだ」
リュウは叱責するように続け、
「本当はな、見極めるなんていらねえんだよ。自分が友人だと言えるような奴なら信じろ。疑いから裏切りが出て、信頼から肩を並べる戦友が出来るこの世の中だ。そんな下らない事をもし疑って、答えが出ねえんなら会いに行け、それだけだ」
「信じる…」
セブンさんのことは今でもよく知らない。だけど、フォーを想っていたあの心は本物だと確信できる。悩みを聞くと言ってくれた心も本物だ。今まで会ってきたあいつらとは違う。直感だけどそんな気がする。
「答えは出た…てところか」
「はい」
「信じた奴が馬鹿をみるんじゃなくて、信頼を裏切った奴が馬鹿をみるんだ。これだけは覚えておけ」
「…何と言うかギルドマスターっぽいですね、今の言葉」
「っぽいじゃねえ!俺はここのギルマスだ、全員分の命を背負う覚悟はとうの昔に出来てる」
これで名前が格好良かったら入っていたかもしれない程の器の大きさを感じる。ただの年数ではない、場数からも来るものを。
「あ!こんな所に居ましたね、ハヤト選手」
記憶が確かなら、実況席に居た女性が串を片手に歩み寄ってくる。
「おう、どうした?」
「あ、リュウさん。大したことじゃないんですけど、ハヤト選手を探してるっていう人が来てて。もうすぐそこにいるんですけど…」
女性の影。暗がりから現れたその姿は、
「フェ、フェリス!?」
意外にも彼女の姿であった。




