24話 祭りを終えて2
「どうしたの?そんな所でボーっとして」
「あ…確かリノゥさんだっけ?」
「そ、リノゥでいいよ。それにしても起きたら色々終わってるし、あのエイって人も居ないし…」
手をわなわなさせて呪詛の様な事を呟くリノゥ。彼女の体には所々に応急処置が施された場所が目立ち、あの試合の凄さを物語っているようだった。
「それで?こんな所で何してたの?一応あんたって優勝者でしょ?優勝者は祝賀会に~、て物語にはよく書いてるけど…行かないの?」
「まあ、此処に来て長くないし、友人と呼べる人が少ししかいないし…」
どうだろうか。友人だと思えたセブンさんは自分が時の教会の一員だと言っていた。今まで会ってきた奴らは全員が命を狙ってくる奴で、疑いたくはないけどセブンさんもそうではないかと思ってしまう。
「へ~、何だか訳アリって感じね。…それにしても暇か、暇そうよね。丁度良かった!」
「え?」
「じゃ、こっち来て」
リノゥに手を引かれるままに廊下を歩いていき、一つの部屋に入る。そこには、
「よぉ、坊主!先に始めてたぜ」
「リオードさん!?」
予選の時に、親切にも忠告してくれたリオードさんがジョッキを片手に飲んでいた。居るのはリオードさんだけではなく、予選に参加していた人たちや実況席にいた者、それこそリュウも居た。きっとギルドのメンバーが勢ぞろいしている。
「ふふ、驚いたでしょ。毎年祭りが終わったら、皆で飲んでるんだって。暇そうな人を連れて来て良い?て聞いたら、いいよ、言うから」
「リノゥも此処のメンバーだったの?」
「いんや、こいつは今日入ったばかりの新人だ」
疑問に答えたのは、他の人たちの例にもれずジョッキを片手に飲んでいるリュウだった。
「さっきぶりだなチャンピオン」
「という訳で、騒ごう!私こういうの初めてなんだ」
リノゥが目をキラキラさせながら言っている手前引き返すわけにもいかず。
「おう、近くで見ると案外ヒョロっちいな」「これでリュウさんを…すげえな!」「でしょ?流石私が見込んだ男よ」
周りの人にもみくちゃにされながらも、人生で初めての宴会というものを経験する。一瞬、背中に嫌な汗が流れた気もするが、気のせいだろう。
少し時が流れても騒がしいのは変わらず。だが、初めてのアルコールというものが体にいきわたりすぎて今にも吐き出しそうだ。気分転換に少し部屋から出ると、そこには先客がいて、
「おう、丁度良かった。話してえ事があったんだ」
「リュウ…」
壁にもたれかかり、腕を組んで待っていただろうリュウの姿がそこにはあった。
「あの時…お前に宣戦布告したのは八つ当たりからだった。こんなに頑張ってるのにどうして?なんて、乙女チックな考えからだった。でもな、」
あの時とは違う。好奇心がそそられる物が目の前にあるような表情で、
「俺はまだ上にいける。なったばかりの新米騎士に負けて、自分に足りないものを感じた。…だからよぉ、また来いや此処に。次は、来年は負けねえからよ」
「ああ、肝に銘じておくよ。」
宣戦布告。前とは一味違う宣戦布告に、自分の心が少し高揚しているのが分かる。
「あとな…もう一つ話があんだよ。俺のじゃねえ、お前のだ」
「?」
予想外の言葉に面食らう。なぜここで自分の話が出てくるのだろうか。
そう思い、リュウへと耳を傾ける。
「何があったんだ、お前に?試合で見た時とは違う、何を迷ってやがる」
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文章力や語彙力がまだまだ貧弱ですが、これからも読んでくださるとありがたいです。




