21話 決勝2
「オラァ!」
「ハァ!」
一撃と一撃がぶつかり合い、剣と拳なのにも関わらず火花が散る。
リュウは連続で拳を放ってこないものの、一撃が重い。これなら視るのも容易だと思っていたが、視るのに集中してしまうといつかは捌ききれなく予感があった。
「【牙突】!」
「【竜閃】!」
ガンと何度目か分からない音が響く。
リュウはさっきからスキルをあの一つしか先ほどから使っていない。しかも、そろそろ【牙突】は視きれる。だが、試しに使ってみようとしても、リュウと同じ威力を出せる未来が見えない。
自分のスキルがただの真似だという事は分かっている。それにしても、一撃の威力がおかしい。
「なんだぁ?威勢いい事言ってから考え事か!?随分余裕じゃねぇか!」
また一撃、今度はスキルを使っていない一撃。やはりおかしい。通常の一撃が自分の真似た【牙突】の威力だ。ならばこそ考えられるのは一つ。
「…強化系のスキル…」
【硬化】と同じような、体を強化するために使うスキルを使っている。それに【硬化】を習得した時は、エリーさんが使ったり使っていなかったりを分けていたので違いが分かった。けど今は違う。
「ずっとスキルを使ってるのか…」
「おお?よくわかったじゃねえか。俺の固有スキル【一発屋】、これを見破るってこたぁやるな。だがよ!」
「クッ!」
「分かったところでどうだってんだ、ああ?【牙突】!」
「【竜閃】!」
ガンという音がまた響く。
「防げるのはすげえけどよ、もうその剣、寿命じゃねえか?」
刀身が全体的にへこみ、さっきから無理矢理【硬化】で何とかしているのは自分でもわかっている。
早急に何か打開策を考えなければまずい。だが、相手から習得できたのは【牙突】のみ。これと何かを合わせて打開策を練るのは厳しいものがある。持っている攻撃系のスキルは【破鎚】そして【竜閃】、どちらもつく技である【牙突】は相性が悪い気がする。
ーー落ち着け…。ようは想像力だ。出来ると思いさえすれば出来る!
自分がリュウを倒せないとは一つも思っていない。だが、それに必要な一撃が無いだけなんだ。
「オラァ!」
「クソッ…!?【跳躍】!」
「なんだ、遂に剣が壊れちまって逃げたのか?さっき居た奴とは思えない程のびびりだな」
剣がなくなる。これ自体は大きな問題ではない。問題なのは、もう多少の時間稼ぎすら命がけになる事だ。何か…何かないだろうか…、!
そうだ、なぜ思いつかなかったのだろうか。【牙突】が攻撃系だという事に気を取られ過ぎていた。やっていたじゃないか、本来の使い方ではないが攻撃方法として【跳躍】を。今までは相手に少しの衝撃を与えてのけぞらすか吹っ飛ばすことしか出来なかった。だがそこに【牙突】の様な突きの一撃が加われば、
「【跳躍】!」
「ん?いきなり近づいてきてど…」
狙いが分かった様にリュウは体を庇うが、もう遅い。敵の中心に向かって、【跳躍】+【牙突】、二つを組み合わせた一撃必殺の蹴り。
「【兎の…」
あっちの世界で見た事のある兎の様な跳び方で
「一蹴】!」
体という地面を跳び、本来なら地面から返ってくるはずの力は返ってこないで、ただ蹴っ飛ばすだけの力になる。それに加わる突きの一撃。
「ウッ…!??」
あの巨体を場外ぎりぎりの場所まで飛ばす威力は語る程もない。
「出来た…ッ!」
口からは安堵の声が出、少しすると脚に痛みがはしる。かなりの力に脚が耐えられておらず、初めて【跳躍】を使った時の気持ちだ。だが、
「いける。スキルの複合も出来た、あとは体に合うか合わないかだけだ…」
今のまま押せば、目の前のリュウでさえ。




