20話 決勝
『様々な事がありましたが…今年の祭りもこの試合が最後!』
実況の声で観客は最高の盛り上がりを見せる。相手はあのギルドマスター、リュウ。負けるわけにはいかない。
『おぉっと、初めに入場してきたのは!?今回初出場のハヤト選手だ!…そしてそして、今入場してきたのは…我らがギルドマスター!リュウ!』
「「「「ワアアア!!」」」」
お互いが初期位置に歩いていくう。その間武器に手をかけることもなく、ただリュウへと視線を送っていた。
一回戦目で見せた一撃。特に目を奪われたのはあれだけ。他には有り得ない程の耐久力があったが、攻撃に転じたのは一回だけだ。つまり、これまでの試合と違って一撃受けるだけで終わる可能性も出てくる。
「さっきも言ったが俺は負けるつもりはねぇ。それはお前もそうだろうが…俺はそれ以上だ」
そう言葉を投げかけ、あとは無言のまま構えをとる。だったらこちらもそれ以上いう事はあるまい。
『泣いても笑ってもこれが最後!喧嘩祭り最終試合…開始!』
ガンと重い音が響いた瞬間、リュウはすぐそこまで近づいており、すでに拳を振り下ろそうかとしている最中だった。
「!?クソッ!」
「逃がさねえよっ!」
すんでの所で回避は出来たものの、当たる所を無くした拳は地面に刺さり、強固な素材で出来ているはずのステージに穴をあける。
「チッ!次こそは当ててやるよ」
舐めていたかもしれない。いや、警戒していたからこそ今の一撃は避けることが出来た。だが、それすら甘かったように目の前の現実は教えてくれる。
エリーさんと戦った時ですらこんな衝撃は受けなかった。それなのに、
「ハァ!【牙突】!」
「ッ【竜閃】!」
キンッと拳と剣がぶつかるには相応しくない音が聞こえる。リュウが放ったスキルは【竜閃】で何とか防げるというレベル。しかし、と拳がぶつかった刃の部分を見る。そこは若干だが、へこんでいたのだ。今の一撃を何度も防げるものではない事をそれは切に語っていた。
「防いでばっかり。よけてばっかり、ておめぇ勝つ気あんのか?度胸がねえんだ、お前みたいな奴には!」
「うるせぇ、こっちは考えてんだよ!」
なけなしに放った一撃すらも拳で簡単に弾かれる。
剣に【硬化】を使う事も試したが、結果は変わらない。今手持ちのスキルで有効打になりそうなものはない。【傲慢】であっても、今出せるのは少しの風だ。リュウは体重も軽くは無いし、きっと強い風が起こせても耐えられて終わってしまう。
だが、有効打が今はないだけだ。こっちには相手のスキルを習得できる【神の左目】がある。だが、さっきの【牙突】を真似たところでオリジナルに叶うわけでは無い。だったら、一つのスキルで超えないなら、二つ使えばいい。
今まで一度も試したことの無かったスキルの複合。今なら出来る気がする。
「ハン!ようやく腹を括った感じの顔をしてんじゃねえか」
拳をポキポキと鳴らしながら違づいてくるリュウ。
ここからは何処まで視れるかだ。




