19話 決勝前
フォーとセブンさんを後ろに、医療室の扉から出た。セブンさんはフォーを看ておくと言って、決勝は見れないとも言っていた。
仕方ない。僕がフェリスを守るように、セブンさんにとってその相手がフォーなのだろう。
そう思いながら通路を進んでいると引き留める男の影が現れる。
「よぉ、少し話でもしていこうや、騎士」
「たしか…リュウさん…でしたっけ?」
一回戦の試合で、道具を多用していたゼロゼレを一撃で屠った人だ。それに、たしかこの祭りの主催者とも言われていた。
「ああそうだ、あとリュウでいい。まぁなんだ、話っていう話じゃねぇんだ。ただ…似た者同士の奴に挨拶を、と思ってな」
「似た者同士?」
「そうじゃねえか。俺は引き分けなんて試合が出ちまったからそのまま決勝へ、お前はこれからだって時に邪魔が入って試合が中断、そのまま決勝へ。お互い状況が違えど不完全燃焼ってわけだ」
「あの試合は…」
「自分は負けていた、てか?そんな事はねぇ。あんな得体のしれない奴の攻撃に耐えたんだ、誇ってもいい。悔しいが俺でもあの相手は厳しいだろうな…。可能性があるとすれば…居なくなっちまったエイとかだろうな」
自嘲するかのような声に予選で見せていた姿と違うものを見る。
「俺はこの祭りに全てを賭けて生きてきたんだ。アイツ、エイに勝つためにな。…でもアイツは負けちまった。あの時の奴は明らかに冷静じゃなかったし、本来の姿とはかけ離れていた。…けどな見たんだ、アイツの嬉しそうな、楽しそうな顔は」
「リュウは違うのか?」
「ああ違う。王女様付きの騎士様には分からねえと思うが、俺たちは外で暮らしてきた。いつかは中に入ってやろうと思ってギルドを作っても何も得ない。唯一あるのが、ストレス発散のためにあるこの喧嘩祭りだ。俺たちのギルドが特別努力していたとは言わねえ、だがなあの城壁は都市を割いちまってる。今じゃあ外のことすら碌に知らねぇガキどもいやがる」
事実だ。ガーデンが三層から成り立っているという事実、エルフとの戦争が終わっても残り続けているという事実がこの国の問題となっているのは確かだ。平たく言うと等級社会の実現。中に住んでいれば偉く、外に住んでいる者ほどこの都市では身分が低く見られがちだ。
「話が脱線しちまった。あんまり長く話すのは好きじゃねえからな。単刀直入に言う、俺と全力で戦いやがれ。騎士であるお前を倒してこそ、俺たちの今までが無駄じゃなかったことを証明して、中に入っていってやる」
「…分かった。だけどそれはこっちも同じだ。リュウというギルドマスターを簡単に打ち負かせてこそ、僕が騎士としてフェリスを完全に守れるという自信にさせてもらう」
静かな、お互いの宣戦布告を交わしあう。




