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神すら見通せないこの世界で  作者: 春山
第2章 進むべき道
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18話 誰かの記憶

私は…私は一体誰だっけ。

そうだ。確か何時もの様に森の中に入って、魔物狩りをしようとして…それで、

いいや違う。俺はそんなことはしていない。

ギルドの依頼を仲間としている最中だった。あいつら誰も斥候の真似事が出来ねぇから、俺がいなくちゃあな。そのうちギルドも認められていって、いつかは受付嬢のあの娘だって、

違う。僕は何を言っているんだ?

お母さんにお使いを頼まれたばかりじゃないか。そう…、確かプレゼントでもと思って花を探しに来たんだ。何処かに咲いていないかな?もう辺りも真っ暗だし…。


幾つもの誰かが出てきては忘れていく。

まるで共に住んでいるかのような心地に、そうだ誰かを…しなきゃ。確かそれが本能に根差すものだから。



「フォーの容態はどうなんですか?」

試合が終わり、多少のケガを負ったものの、フォーの事が心配になってセブンさんについて行っていた。

「先ほどよりは安定してきましたよ」

「よかった」

眠るフォーの顔は何の感情も感じさせない、無の表情だ。セブンさんが言うには、この状態にいるフォーは戦っているという、自分が失われるかもしれない戦いを。

何のことかとピンとこないでいると、セブンさんが優しく悲壮感を伴うように語りだしてくれた。


「フォーの持っていた固有スキルに問題がありまして、【彼方の記憶(フォーゲット)】というスキルを持って産まれたんです。一番古い記憶が、どういう条件かは分かりませんが、忘れてしまうんです」

そのスキルがどう作用しているかは分からない。だが確実に言える事は、彼女を苦しめている原因がそれだという事だ。

「それは…」

言葉に出ない様な気持ちに襲われる。一瞬だが昔の自分に重ね合わせてしまったが、それはフォーへの侮辱というものだ。

僕は生まれつきの病気で苦しんで、毎日を諦めて過ごしていた。しかし彼女は、少しでも何かを残すために行動していたのではないかと、今になって思う。

「ハヤトさん。スキルという力は、私たちが生活していく中で絶対の存在です。ですが、私はスキルというものは呪いだと考えています。固有スキルがその最たる例ではないですか。フォーはこのスキルで幸にも不幸にもさらされてきました。それは私が彼女を保護した時から変わりません」

最後にセブンさんは懇願するように、今まで見せた事のない様な表情で

「フォーは…私やハヤトさんの事をいつかは忘れると思います。それがいつかは分かりませんが、これだけは忘れないでください。フォーが…彼女という者が居たという事を、決して忘れないでください。これは私からのささやかなお願いです」

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