17話 本戦8
『おぉっと!いつの間にかフォー選手の手に鎌が握っている!』
立ち上がったフォーはすぐさま距離を詰め、鎌を振るう。突然の事で少し反応が遅れ、完全に回避することが出来なくなる。
「!?」
若干遅れたが、鎌の攻撃を防ぐために剣を合わせるが有り得ない事が起きる。
当たるはずの剣をすり抜け、そのまま鎌が首へと向かってきた。
「ッ!【跳躍】!」
すんでの所でスキルを使って回避するものの、頬に切り傷が出来てしまう。さらに言えば、剣をすり抜けた鎌が殺傷能力を持つことを証明するものでもある。
まずい、心中はその感情一色に染め上げられている。フォーは遠距離でも攻撃手段を持っていることに対して、こちらは持っていない。
それに、さっきの彼女の動きもまずい。まるで体験を振るっていた時とは別人が戦っている様な感覚だ。動きに予備動作がない。
フォーは離れてた僕を一瞥すると、空いている手を地面につけて一気に引っこ抜く。そこには、
「また…武器。それも鎌とは違って…剣?」
今自分が持っている剣より一回り小さいだろう剣を彼女は握り、それを天高く掲げる。
あの剣は何かまずい、そう確信する何かがそれからは不吉なオーラとして感じさせる。
「【歓迎の小剣】…」
フォーが何かを呟くのと同時に、手に持っていた剣を地面へと刺す。
「いつかはたどり着く場所へ歓迎する。行って、彷徨える者たち…」
剣を刺したのと同時に、その周りを黒い何かが動き始める。それらは数舜すると、まるで獲物を見つけたかのように高速で接近してくる。
「…!?マズッ…。クッ…」
幾つかは避けられたが一個だけ腹部へと命中してしまう。まるで鉄の塊がぶつかってきたような衝撃を与えられ、少しふらついて片膝をついてしまう。
フォーを見失わないと彼女の方を見上げるように見ると、嫌なものが目に入る。
「嘘…だろ…」
また剣の周りに黒いものが集まっていき、今にもこちらへ向かって来ようとしている。しかも、その後ろではフォーが鎌を深く構えており、次は彼女も攻撃してくるという事実に他ならない。
「だったらこっちも出し惜しみはなしだ」
スッ、と風が切れる音共にフォーがまたもや突然接近してくる。その後ろからは黒いなにか。
前後左右どちらに回避しようとしてもフォーは追ってくるし、それが上に跳んだとしても変わらないだろう。だったら、
「真正面からぶつかった方が祭りっぽくていい!」
フォーを正面からおさえ、黒いものから守る盾の様な位置取りをして仕掛ける。それでも幾つかはこちらを狙ってくるがそこは【硬化】で多少の軽減は出来る。
『さぁ、ラストスパートと言わんばかりのぶつかり合い…ちょっとそこの人!?』
「ハアアァァ!」
くらいながらも、相手の鎌より早く自分の剣が届くように、気合を込めて叩きつける。
「ッ!?」
あと少し、あと少しで届くはずだった剣が何かによって弾かれる。
ーーなんで、何でフォーの体をすり抜けてあれが来る!?
まるで守るかのように、フォーを盾にして防ぐようにした黒いものは、彼女の体をすり抜けて剣に当たっている。
困惑と衝撃で出来てしまった隙はあまりにも大きく、首を狙っていた鎌はそのまま
「もう帰りましょう、フォー」
鎌は当たらず、目と鼻の先でピタリと止まっていた。なぜ、と思い見上げるとそこには、セブンさんがフォーを後ろから抱きしめる形で攻撃を止めていた。
「貴方は…今の貴方は無垢な者なんですから。少しばかり休みましょうか…。スタッフさん!」
『は、はいぃ』
「この勝負はフォーの負けという事で終わらせてもらいませんか?私はこの子の保護者です、受付の時にもそう言いましたから確認は不要ですね?」
『…えーそれでは!フォー選手の投降という事で…勝者はハヤト選手!…おめでとうございます』
唐突に決まった試合の行く末は不思議な静寂と、倒れたフォーを背負っていったセブンさんの背中をみて決まったのであった。




