16話 本戦7
『さぁ!やってまいりました第二回戦!一回戦では不幸にも引き分けが出てしまいましたが、仕方ない。ハヤト選手、フォー選手の二人で最後の枠を争っていただきましょう』
一回戦とは比べ物にならない程の歓声の中、フォーと向かい合う。実況の人も盛り上がっているのか、声が少し高くなっている気もするが今はそんな所ではない。
こっちは剣を使っての近接、彼女は大剣を使っての近接。同じ近接だがリーチには開きがある。それに爆発をおこすスキルをも彼女は持っている。
『お互い準備はよろしいですか!?』
実況に対して頷くことで反応し、フォーは親指を立てて反応する。
『それでは!第二回戦…開始です!』
聞きなれたゴングと共にフォーとの距離をつめる。
先の試合でゼンがやっていた戦法だ。近くにいれば爆発をおこしにくい。しかも彼とは違い、近接系の武器を今は使っている。
「ハァ!」
「の!」
お互いの武器がぶつかり合う。当たり前だが、剣と大剣が押し合えばどちらが勝つかなど決まっている。だからこそ、力比べに付き合ってやれるほどの余裕はない。
「…!?おっとと」
大剣を剣を斜めにすることで受け流し、フォーの体勢を崩す。彼女の様に力任せに振るってくる相手はとてもやりやすい。
「ハァ!」
剣をフォーの腹部へとめがけて振り上げる。流石に少女を斬ることはためらわれたので、今使っている剣は予選で使っていた刃が潰れているモノを使っている。それでも、相手を場外に飛ばすことや戦闘不能にすることは容易い。
「【死霊爆発】!」
「なっ!?」
天才的な身体能力に驚かされる。スキルを使ってダメージが発生しないぐらいの小規模爆発をおこし、体を少し動かすことで無理矢理攻撃を避けた。
「あ、危なかったの。やっぱりハヤトは面白いの!」
爆発で少し飛んだフォーは、綺麗に着地すると間髪入れず距離を詰めてくる。
彼女から繰り出される横なぎを先ほどの様に流そうとするが、
「それはさっき見たの!」
受け流そうとした剣もろとも、有り得ない程の力で押され、剣が少し弾かれてしまう。
「隙!…あり」
「クッ…」
生じた防御の隙間を狙われ、蹴りをくらう。左手に剣を持ち替え、かろうじて右腕で防御することができたが、
「…今のでこの威力って。嘘だろ」
放たれた蹴りは腕を痛めさせ、少しのしびれを感じさせる。
「すごい、すごい!まだ壊れないの!…もう終わらないよね?」
「ああ、終わらないよ。こんなので終わったら申し訳ないじゃないか」
寂しそうに問いかけるフォーに対して、笑顔で答える。
実際の所、どう倒せばいいのか分からない。今まで戦ってきた人に、こんな戦闘スタイルは存在しなかった。経験不足だと言われるかもしれないが、そこは仕方がない。
スキルは極力使わない。あとの試合で情報となってしまうからと思っていた時もあったが、そんなことを言えるような相手ではない。
「ここからさ!」
「うん!」
今度はお互いに距離を詰めて武器を振るう。
「もうあの手は通じないの!」
そう、受け流そうとするとさっきの二の舞になる。だったらここで使うのは、お互いの剣が合わさる前に
「【竜閃】!」
ガン、と鈍い音が響き、フォーの大剣が後ろへと弾かれる。普通に張り合えば負けてしまうが、スキルを使っての張り合いなら負ける道理はない。
「【死霊…」
またスキルを使っての回避を図ろうとするが、その方法は先ほど見た。一回見たものに対応できるのは、彼女だけの専売特許ではない。
「【引き寄せ】」
【傲慢】の応用だ。トゥーと戦っている時、敵を吹き飛ばすなどの行為が出来た。ならば引き寄せることもできるのではないかと思って試してみたら出来たものだ。実際にさっきまでの日常生活で使ってたりする。まだ軽いものを少し引き寄せることしか出来ないが、今の状況ならぴったりだ。
「爆発】!」
遅れてフォーがスキルを発動させ、爆発を起こしたがその小規模では逃げられない。
「終わりだフォー!ハァア【竜閃・昇】!」
彼女を場外まで飛ばすように剣を振り上げた。
その剣に対して彼女は自分の大剣を合わせるが勝てる道理はない。それに万一の事を考えて剣に【硬化】も施してある。
ガギン。とおよそ剣ではなりそうもない音が響き渡り、数舜してフォーの大剣がこちらの威力を殺せず粉々に砕け散ってしまう。ギリギリ彼女には直撃しない様に攻撃したため無傷だが、大剣の方は使い物にならなくなってしまい、こちらの勝ちは明らかだ。
「フォー、終わろう。これ以上やっても…!?」
大剣を失い、なにも掴んでいる筈がない彼女の右手に紫色のモヤが集まっていく。
「ハヤト…は強いヨ?だからフォーもこのぐらいの気持ちでやんなきゃ」
立ち上がったフォーの右手には大きな、それも先ほどの大剣より大きく、刃が赤く塗れている大鎌が握られていた。
「【送り人の大鎌】…。やろう…はヤと」




