11話 友人
「凄いですね、フォーは…」
「ええ。ですが対戦相手のゼンという人も中々でしたね」
自分の試合が終わり、客席へと戻ってセブンさんとフォーの試合を観戦していた。この試合で勝ったものが次に自分と戦う、という事なので情報収集的な側面もあったが。
どちらが勝ってもおかしくない戦いであった。ゼンの誘導からの応用力、それを上回ったフォーの突破力。最終的には、ゼンの一矢報いる攻撃が惜しくも外れてしまいフォーの勝ちとなったが、自分では未だたどり着けない場所を見ると、何と言うか心がワクワクする。
「フフフ」
「どうしたんですか?」
「いや、楽しそうだと思いまして」
確かに楽しい事は否定できない。だが、そんなに顔に出てたのだろうか。
「そんなに顔に出てましたか?」
恥ずかしそうに尋ねた事に対してセブンさんは微笑みながら
「最初に出会った時とは違う顔付でしたよ。あんなに不安そうで、まるで迷子かと思うほど困った顔をしていましたから」
「それは…」
否定できない。あの時はミカヅチさんやらフェリスの事やらで、いっぱいいっぱいになっていた感じはある。
そう思うと、もしかしてこの人はだから無理矢理にでもここに連れてきたのではないか。少しでも元気づけるために。きっと本人は否定するだろうが、今思えばそうとしか思えない。
「今のその楽しいという気持ちは一過性のものです。ただの紛らわしにすぎません。ですから今だけは楽しんで、また悩み始めたら私に相談してください。これでも私は教会の神父をしていた時があったんですよ、小さい町のですけどね」
「…その時はお願いします」
「気にしなくていいんですよ。私たちはよき隣人、よき友人なんですから」




