08話 本戦
「そういえばそろそろですよ」
「え?何がですか?」
セブンさんと昼食を共にしている時、唐突に口を開く。
「本戦の対戦表が貼りだされるのがそろそろ、てことですよ。それによって控室に行く時間も違いますし…フォーも呼び戻さなければいけませんからね」
フォーは今ここには居ない。昼ごはんの支度をセブンさんがしていると、『ちょっとあっち見てくる』と言って何処かに行ってしまったのだ。せっかくの昼食時なのに何も食べずにいていいのかとセブンさんに聞いたところ、彼曰く問題ないとのことらしい。まだ幼そうなのに本当に食べなくていいのだろうか。
それにしても、
「最初に当たらなければいいですね、フォーと僕で」
「全くですよ。ですが、いつかは当たるでしょうし、その時はフォーを応援しますよ私は」
それはそうだ、とお互いに笑いあう。
そんな話をしていると、突然中央の舞台の上にビジョンの様なものが投影される。
「おや、そうこうしているうちに来ましたね。あれが対戦表ですよ。毎年【投影】のスキル持ちの職員がここぞとばかりに頑張るんです。適材適所ってやつですね」
投影されたものは大きく、客席に居ながらもはっきりと見える。そこには、
「一回戦目の相手は…ナオヤ」
自分の次の予選で戦っていた奴だ。期待のルーキーとセブンさんは言っていたけれどどんな戦いをするのだろうか。
「ハヤトさんは初めの方ですね。それに…あー、意外と早かったですね。二回戦目にはフォーと当たると。てっきり決勝戦であたる胸アツ展開かと思いましたよ」
「大丈夫、フォーは何時当たっても絶対勝つから」
もはや慣れてきた突然のフォーの登場に驚きもなく、
「そうだね。でもその前に一回戦のこと、忘れちゃだめだからね」
「うん!」
こう見ると父と娘の雰囲気がするが、本人たちが否定していたのでどういう関係性かますますわからない。
『それでは最初の対戦カードである、ハヤトさんとナオヤさんは控室にお願いしまーす』
呼び出しのアナウンスが入り、控室に向かうためにその場から立ち上がる。
「それでは頑張ってきてください。栄光を祈っています」
「えいこー」
「栄光って。そんな大げさですよ」
若干の名残惜しさを胸に客席から離れ控室へと向かった。
「それではハヤト様、武器をお選びください」
控室に着くと開口一番、受付に居た人から質問を受ける。予選の時は箱に置いてあったり、そこら辺に転がっているものが多数だったが本戦では違う様だ。
「それじゃあ剣で」
「畏まりました。当ギルドでご用意できるのはこちらの三種類となります。ご自分に合ったものをお選びくださいませ」
「え?でもこれ刃が」
予選の際には刃が潰れたものしかなかったが、ここには多少のすり減りはあるものの予選の武器よりは殺傷能力がある。
「本戦では予選と違って一対一なので、危なくなったら止めに入りやすいんですよ。予選はあの形式になっているので、もしもの事が起きるのを危惧してですね」
つまり、より実戦に近い試合となるという事なのか。予選では一滴の血も流れない様な作りになっていたが、血が流れてこその喧嘩ということなのだろう。物騒なことこの上ないけど。
「…これに、これにします」
取ったのは何の変哲もない一本の剣。重さは丁度いいし、強度はスキルの方で何とかなる。
「それではその剣を貸出しいたします。破壊しても予備がございますので、どうぞお気になさらず。それではご検討を」
受付の人は一礼すると部屋から退出する。
『さあ開始時刻となりました!喧嘩祭りの本戦開始です!一回戦目初戦は…』
外から実況の声が聞こえるのと共に部屋の中へとスタッフが入ってくる。
「時間です。舞台の方へとお願いします」
「はい」
通路をくぐり、抜けた先には
ワアアアア!!
予選とは比べ物にならない景色がそこにはあった。対戦相手であるナオヤは既に舞台へと上がっている。
これを見てしまえば嫌でも気分が高まってしまうというものだ。
『それでは両者準備はいいですか!?…初戦、ハヤト選手vsナオヤ選手開始です!』




