23話 帰路
「姉様の騎士たちは、とてもいい人たちでしたねハヤト」
帰りの馬車に揺られている中、フェリスと話をしながら帰路についている。
ディアンナ様の屋敷は昼前にはもう出ていて、見送りや別れの言葉的なものはなかった。それもそのはず、昨夜の様に共闘した間柄だとしても本来の関係性は敵同士、お互いの主を支えるためにいる者同士としてあまりなれなれしくするものではない。
けど別れの言葉なのか、アリエスさんは『私たちは騎士同士なんだから、敬語なんて使わなくていいのよ。あまりへりくだり過ぎると舐められちゃうから』と注意をもらった。
そのこと以外は特に何もなかったが。
それと昨夜の襲撃の件は、後々屋敷の周辺を調査するそうだ。トゥーの本体と思われるものは倒したものの、もしかしたらまだしぶとく生き残っているかもしれないとのこと。
だが、もうそこからはこちらの領分ではないため協力は出来ないし、こっちもこっちでやらなければいけない事が山積みだ。取りあえずは、
「それでハヤト、ギルドの名前はどうしましょう?ん~、思いつきません」
「そうだな。フェリスはどんな所にしたいっていうのはある?」
「あるにはあるんですけど…。まだまとまりきっていないというか、何というか」
継承戦に参加する以上は、一つでもギルドを創っておかなければ格好がつかない。そのためフェリスと共にギルド名を決めようとしているのだけれども、お互いネーミングセンスがないので難航していた。
「まあ、ゆくっり考えていこう。時間はまだあるだろうから」
「いえ、王の投票が行われる『天勝祭』まではひと月もありませんよ?」
「天勝祭?」
「ああ、ハヤトは知りませんでしたね。投票が行われる日は決められたんですよ。私たちが今いるサンドレア王国とエルフの国との戦争に勝った日を天勝祭と言って、その日に次代の王が決められるんです。まあ、私の代からなんですけどね」
「じゃあギルドをなるべく早く創らなきゃいけない?」
「強制ではないですけど、創っておきたいですよね」
「もしかして既にかなり出遅れてる?」
「確かにそうとも言います」
うんうんと頷くフェリスを見てこんなキャラだったか、という思いが湧き上がってくる。彼女の性格からして、何事も余裕を持って対処する方だと思っていたが認識を改めなければいけないかもしれない。
「何ですかその目は?呆れですか?やめてください、その目で見ないでください…」
どちらにしろ、もう既に自分の運命は彼女の為に捧げたのだ。今更間に合わないかもしれないからと言って見捨てる選択肢など存在しない。
それに出来ると信じる事が重要だとあの能力から学んだ。
「大丈夫です、ハヤト。私たちになら不可能はありません」
これは帰ったら、本格的にミカヅチさんの指導を受けて一日でも早く強くならなければいけない。




