22話 朝が来る
「…ダー。リーダー、平気っすか?」
「ジェンゆすりすぎ…。ヨリが辛そう」
「わ、私は大丈夫です。それよりもハヤ、リーダーさんのことの方が心配ですし」
ガヤガヤと少し騒がしいが心地よくもある3人の声が聞こえる。
トゥーを倒して、意識を失って、それで。この感覚からして担がれているのだろうか。だったら少しでも早く起きないともし訳ない。
「ん、大丈夫だ…。歩くぐらいなら出来るから降ろしてもらっても」
「お!リーダーが起きたっす。いやー、大丈夫っていてもまだ言葉がたどたどしいっすよ?」
「…そう。敵の親玉を倒したんだから、今はゆっくり休憩しているべき。背中は…貸す」
「えーとユーちゃん?背負っているの私なんですけど…。え?辛いとかそういうものじゃないんで、全然大丈夫なんで。…あ、着きましたよ」
「そうかありがとう。此処からは自分の足で歩くよ」
この距離なら今の体力で何とかなるだろう。それに一瞬でもはやく屋敷に戻って、まだ居るかもしれない敵を警戒しなければならない。
少し覚束ない足取りで歩いていくと、屋敷の玄関前には知っている顔ぶれがそろっていた。
「よぉハヤト。すげえじゃねえか、大金星だぜ」
「ほら言葉を交わすぐらいでそんな動かないで。比較的軽傷って言ってもケガはケガなんだから」
そこでは、アリエスさんとエリーさんが玄関前で軽い口喧嘩を交わしている。
ここまで此処に揃っているという事は、再度敵の襲撃が行われても必ずと言っていいほど撃退できるほどだ。
「はいはい、ハヤトも傷を見せてね~。遠慮なんて要らないわよ、貴方がここで一番の怪我人だから」
「ハハハ…」
アリエスさんにケガを治してもらっている最中、少し焦っている様に見えたのか、エリーさんは柄にもなく優しく話しかける様な口調で、
「ハヤト、お前が一番貢献していることは俺たちが良く分かってる。それに敵が来たとしても俺とアリエスがいるんだ、今はゆっくり休め。一応お前は客人だからな。これ以上無理されるとお前んところの主様に申し訳ねぇ」
「あら、照れてるの?貴方が人を心配するなんて珍しいじゃない」
「バッカ!ちげぇよ」
「それにしても、エリーの言う通りよ。貴方の治療はそろそろ終わるから、終わったら寝室に行って休んでらっしゃい。昼にはここを発つのでしょう?ここら辺は道が険しいからね、疲れてフェリスを守れなくなるのも嫌でしょう?」
そう言われ、アリエスさんたちに追い出されるように宛がわれた部屋に向かわされた。確かに、帰りに疲れてしまっては元も子もないし、彼女のたちの実力は良く知っている。僕なんかがいなくても此処を守ってくれると信じている。
「少し…眠いや…」
そんな独り言を呟きながら、ベットの中に入り眠りについていった。
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ガタガタと隣の部屋から音が聞こえる。きっと眠りから覚めたのだろう。だったら騎士としてやるべきことは、
「おはよう、ハヤト。今日もいい朝ね」
「ああ、本当にいい朝だよ」




