15話 眠れる夜3
「センちゃんが戸惑ってたのも無理もないっすね」
目の前に突然現れた敵に対して全員が臨戦態勢をとる。屍鬼だと思ったものの、その風貌そして感覚で分かる嫌な予感、全てがあの時と異なっている。
だからと言ってにらみ合っているだけでは埒が明かない。もしアイツが恐ろしい何かを持っているなら、それを使わせる前に叩くのみだ。
「ユー、距離をとってこいつに攻撃を頼む。出来るだけ毒とかが効くかどうかを調べていく方向で。ジェン、ユーのフォローを頼む。ヨリは僕と一緒に仕掛けるぞ!」
全員が指示を了解し、各々行動に移る。もしアイツに行動を阻害する、もしくは毒矢を放って効果がない時は屍鬼の可能性が高くなる。屍鬼は元々死体から生まれる存在なので、毒などの生物に効くものには効果が無い。
「ヨリ、僕が注意を引き付ける。君はそのすきに全力の一撃をアイツに叩き込め」
作戦とも言えないお粗末なものだが、ヨリの事を考えるとこれでいい。彼女は一撃に秀でてるが当てる自信が少しない、と言っていた。だったら彼女には一撃入れる準備を入念にしてもらい、その為の準備を僕がすればいい。
「【天歩】!……っ!?」
【天歩】を使って頭に蹴りを入れた瞬間に不思議なことがおきる。
蹴りをくらった頭は90度にまがって取れてしまう。しかもその落ちていく頭を奴の手がキャッチした。
「コイツ、元々頭が本体じゃないのか!?それに!」
敵は頭を手に掴みながら何か、言葉になっていない何かを呟き始めると、体が機械仕掛けの様にカクカクと動き始める。
「やあ!【破鎚】!」
その場から動かなくなったのを好機とみてヨリが鎚を振りかざして敵にぶつける。ゴン、という鈍い音と共に翼の生えた敵は吹き飛び、近くにあった気へと衝突する。が、
「これは…頭だけ残ってたんです?…キャ!」
ヨリはそう言って残った頭を拾い上げると何かの異変に気付いたように頭を放り投げた。
「いったいどうし…」
その先を言わずとも頭に何が起きたのかを知る。彼女が放り投げた頭がコロコロとこちらに近づいく時にそれは見えた。
「これは…口?しかも何か…」
初めてアイツを見た時の顔は確かにのっぺらぼうの様に、目も鼻も口すらなかった。しかし今は顔が切り裂けそうな大きい口がある。
何かあると思った瞬間に口がニィッと笑う形をした後に、
「キャァキャキャキャァ」
赤子の様な純真無垢と表現するのに相応しい笑い声をあげ、光始める。
「ヨリ!ソレから離れろ!」
必死に上げた声も空しく、ヨリと共に白い光に呑まれて、
…。
……。
ーー何も起きてない?
周りを確認し、手をグーパーしながら体に異常がない事を感じる。いや感じただけだった。
ーーそうだ、ヨリは?
そう思い目の前にいた筈の彼女を見ると、
「な、なんで…。どうして…」
ボロボロと目から涙を流す彼女の姿がそこにはあった。




