06話 模擬戦
「ほう言うじゃねえかハヤト」
「って、エリーさん!?…いつの間に」
突然、後ろに立っていたエリーさんに声をかけられ、驚いてしまう。
それに、
「もしかして、今の聞いてました?」
「ああ、ばっちりとな」
グッと親指を立てるエリーさんだが、こっちはそれどころではない。恥ずかしくて死にそうだ。
「それにしてもなあ?」
「ええ、そうね」
恥ずかしがっているのを横目に、アリエスさんはゆっくりと立ち上がってエリーさんの傍によった。
「これは俺たちへの挑戦状と受け取っていいんだな?そうだよな、アリエス」
「そうですね、あんなに真剣な顔で私に言ったんです。嘘でした、なんてことはないですよね?」
「も、もちろんです」
恥ずかしい言い回しをしてしまった感じがあるが、思っていることは事実だ。フェリスが王になるのだったら付いていく決心は出来てる。
「なあに、責めはしねぇさ。どこでもそんな事を思ってるもんさ、騎士ってのは」
ただし、と
「少し俺とやりあわねえか?もちろん、真剣勝負じゃねぇ、模擬戦だ」
「それは良い事ですね、ウチの兵士たちにもいい経験になるでしょうし」
確かに模擬戦ならケガの心配はあるものの、命の危険はない。
それに、今の自分がどれほどこの人たちに通用するかも知っておきたい気もする。
それなら、
「こちらこそよろしくお願いします」
ーー模擬戦だからといって負ける気はない。




