02話 屋敷へ
「「「ようこそおいでくださいましたフェリスお嬢様」」」
僕たちを乗せた馬車から降りると多くの使用人からの歓迎を受ける。
しかし話に聞いていたけども、ここまでとは思わなかった。第一王女であるディアンナ様は周囲の人たちを女性だけで固めている、とはフェリスからそれとなく聞いていたが本当に女性しかいない。
少しは男性がいると思っていたがここまでだと、何と言うか
ーーき、気まずい…
「長旅でのお疲れもあるでしょうし、すぐお部屋にご案内させていただきます。どうぞこちらへ」
そう言われ、いや言われているのはフェリスか。目の前にいる人もそうだけど、先ほどから受ける眼差しが何故かとてもむずがゆい。
いつものようにスキルを使って色を視ても、悪意や何やらは視えなくどれも感じたことのない色だ。
「それではフェリス様、こちらのお部屋などはいかがでしょう?何分、ディアンナ様の妹君をお招きするのは初めてでして、どの様な嗜好をしていらっしゃるか存しておりません。お気に召さないようでしたら違う部屋もございますが…」
「いえ、ここで大丈夫です。ありがとうございます」
「それは良かったです。では、騎士の貴方は隣の部屋でよろしいですか?主を護衛するのにも不自由はないと思いますが」
「あ、はい。ご丁寧にありがとうございます」
急に話を振られ、少し動揺する。こういう時フェリスは王族であるからこそ慣れた対応をできるが、僕はまだまだだと実感する。
つい最近までしがない一般人だからといって、騎士になったからにはそうも言ってられない。人前に出ても恥ずかしくならないようにしなくては。
「では、少しの間ですがごゆっくりと。ディアンナ様の準備が整い次第お知らせいたします」
そう言うと、案内をしてくれた人は頭を軽く下げた後に立ち去って行った。
「それではハヤト、荷解きを手伝ってくれますか?」
「承知いたしました、フェリス様」
「うわっ、なんか違和感がありますねハヤトにそう言われるのは」
「仕方ないだろう、さすがにこういう場でいつもの言葉遣いで話したら」
「私は別に気にしませんけど…」
「こっちが気にするんだよ」
他愛もない話をしながら準備が終わるのを待つこと数十分。
「お待たせいたしました。ディアンナ様の準備が整いましたので、そのお知らせを」
「さ、ハヤト行きましょうか」
騎士になってから初めての場だ。緊張するなという方が無理なものだが
「大丈夫ですよ、お姉様は無礼に対して即処断なんてしませんから。するのは…、とにかく大丈夫です」
少しの間が怖い気もするが気にしないでおこう。
兎に角、これからはこの様な事がたくさんあるかもしれない。気を引き締めていこう。




