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神すら見通せないこの世界で  作者: 春山
序章
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03話 目覚め

目を覚ますと自分が知らない木々が生い茂った場所に居る事を自覚する。おそらくあの後、この森の中に飛ばされたのだろう。少し場所を移動すると舗装された道があり、先が見えないほど続いていた。

しかしこれでエクシエルが言っていたことは夢ではなかったのだと再度認識させられる。それに初めて自分の足で立つという行為、足の裏から伝わってくる地面の感触。体力に限りがある限り、味わっていたいと思ってしまうが、


「まずは状況をもっと確認しないとな」

そうして、いつの間にか自分が着ていた服装に目を落とす。服装はかなり軽装だ。胸当ては急所を最低限守れるだけの面積しかなく、かなり動きやすい服装となっている。足元にはエクシエルの贈り物なのか、一本の剣が置いてあった。初めて見る刃物だが切れ味は本物なのが分かる。


「体には変化があるのかな?よっ!と」

元の世界と比べて、自分の体がかなり軽くなっているのを感じていた。その場で飛び跳ねたり、丁度近くにあった少し大きな岩を持ち上げたりする。

結果、身体能力が以前より比べるまでもなく上がっていることが分かる。病室に居た頃の情報源がテレビだけだった自分にとって不確定の事だが、そこで見た人たちよりも身体能力が高いとも思ってしまう。


「にしても目を授ける…なんてこと言ってたよな?」

エクシエルは目を授けると言っていた。それを覚えていたのですぐさま試してみる。

しかし何が変わっているのかが分からない。強いて言うなら視力がかなり良くなったことぐらいで他には何もない様な気すらした。


「それにしても、こんなに遠くが見えるのか…、ん?なにか黒いモヤみたいなものが見えるような…」

いや違うと、右目を自らの手で隠す。そうするとはっきり見える様になっていく。遠くの方で、山火事と見間違う様な黒煙が昇っていることを。

しかし、隠す目を左にするとそのモヤ自体が綺麗さっぱり見えなくなってしまう。

「取りあえず、近づいてみるか…」


5分程道なき道を進んでいたが、目に映るモヤは更に濃くなる一方だ。それは、あそこに何かがあると確信させるには十分すぎるものだ。普段なら知らないものは近づかないものだが、異世界に来た高揚からか好奇心が勝ってしまい、更に近づいていく。

そうして近づいていき、モヤは一層濃くなる。そうしてあるものを見つける。

(…!あれは、人?)

モヤの中に人を見つける。それは見方を変えればその人からモヤが出ているとも言えるわけで。

足を動かしその人に近づいていく。しかし、ある地点で足が動かなくなる。

目の前の人から発せられる、今までの人生で感じたことの無い恐怖で足がそれ以上近づくのをやめてしまった。

「なんだこれ。…ッ!」


吐きそうな気持ちを抑えながら、近くの木の陰へと体を隠す。その者と自分の距離は近くはないが遠くもない距離がある。幸い、それはこちらに気づいていない。

見つからない様に息を止めておとなしくする。見るのすら躊躇ってしまうその後ろ姿を木陰から覗き見る。


明らかにモヤの正体は人間の男であった。それに、この目が見せてくれているモヤの色こそ自らに対する警告だと、理解せざるを得ない。

明らかに触れてはいけない者だと、その場を離れようと歩を進めようとすると場に変化が起きた。

今まで体にかかっていた吐き気を催す様な雰囲気が嘘の様に軽くなる。何が起きたのかと、男の方へと視線を戻し、再び視界に入れると


ッスン……


微かな音と共に男が消えた、否跳んだ。一瞬で前かがみになり高速で前に飛んで行ったのがこの目には視えた。

慌てて、男が跳んだ方へと視線を向けると一台の馬車が横転しているのが見えた。それもその倒れた馬車の傍にはあの男が立っている。


「は!?」

男はもがいている馬の息の根を止めると、倒れた馬車の扉を開けて中から一人の少女を放り出す。

そして男は短刀の様なものを片手に持ち、放り出された少女へ近づいてく。その間ほんの数秒。


(まずいまずい!)

焦りと混乱が最高潮へと高まっていく。今すぐに助けたいが、離れているため助けに行こうとも手遅れになってしまう。

(落ち着け。そうだ、あの男は確か…)

男はここから一跳びであそこまでいった。つまり、男と同じことをすれば…。

それに自分には男が跳び出すまでの過程が()()()()()。ぶっつけ本番になってしまうが、あそこにいる少女を助ける為にはやるしかない。


男がやっていたように前かがみになって、足に力を入れる。まだ男は少女の目の前には行っていない。男は油断しているのか、その歩みは緩やかだ。かといって時間があるわけではない。

焦る気持ちを胸にしまい、ふと頭に浮かんだ言葉と共に、地面を蹴る。


「【跳躍】!!!」


その瞬間、爆発的なスピードが生まれると共に、大きな音が辺り一帯に響き渡った。

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