プロローグ 失った時は戻らない
ガーデンのどこか、おそらく普通では行きつかない場所にそこはあった。
その場所には12個の仕切りがある円卓だけがあり、席に幾らか空白がみられる。
その中でも特に目を向けてしまうのは、円卓の中心に立っている少年だろう。少年は片腕が無くなっており、これから起きることに恐怖しているのか少し震えながら下を向いていた。
「それで?依頼は完了せずに帰ってきたと」
ある男の声が室内に重く響き渡る。声を発した男の顔は暗がりで分からなく、少年以外の者達も何かの力によって顔がはっきりと見えない。
「そ、それは…予想していなかったんだ!あんな奴がいるって知っていたら僕は失敗していなかった!」
トゥーの脳裏にはワンを倒した者の姿が焼き付いていた。トゥーはいくら人の事を信用していないとはいえ、同僚であるものたちの実力は疑っていない。それも自分自身のスキルで強化していたのなら尚更だ。
「奴はいずれ僕たちの邪魔になる存在かもしれない!僕たちの行動を阻害するものとして警戒を…」
「クスクス。えー、何それー?『依頼失敗したんで反省します、だから僕を責めないでください』なんてことを聞かされるために、ウチここに呼ばれたのww?あー萎えた、ソッコーで帰らしてもらうわ」
誰かの立ち上がる音と共に、バイバーイと陽気な声が聞こえて人の気配が一つ減ったのが分かる。
「本当です。その様な事の為に私を呼ばないでください。…全く時間を無駄にしました(ボソッ」
「セーブンー、お腹空いたー」
「そうですか、フォー。少し早いですが夕食に出かけましょうか」
一人が帰ると、ガラガラと様々な所から立ち去っていく音が聞こえる。
トゥーは此処に来るとき、始末されるかもしれないという覚悟の元に来た。信用商売でやっているギルドで失敗をしたのだ、事実を無くすために消されてもおかしくない。
しかし、起きた事は自分が情けない声を上げただけ。結局の所、このギルドには仲間意識というものは存在せず、同じことをやっているだけの何かとしか見られてないのだろう。
命は繋いだ。だがこれは今だけの話だ。もし、これからギルドの誰かに邪魔だと思われた日には消されてしまうのだろう。そんな予感がトゥーにはあった。
(一刻も早くここから立ち去りたい…)
そんな思いを胸に足早にで口に向かう。向かうが、足を止めなければならない状態に陥る。
「トゥーさん。少しよろしいですか?」
そこには優し気な声色の中に有無を言わせない圧力を放つ女性がいた。
女性は修道女の様な装いに胸に11と書かれた数字、何より背中から白い翼が生えた奇妙な存在であった。